劇場公開日 2022年6月10日

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「「シリアス」と「滑稽さ」のバランスがとれている。」はい、泳げません ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「シリアス」と「滑稽さ」のバランスがとれている。

2022年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

体に余計な力が入っていると泳げない。リラックスして水に身を任せなければいけない。人生も同じようなものだと教えてくれる。辛い「過去」にはどうしても執着して余計な力が入ってしまう。明るい「未来」に進むためにはつらい「過去」を清算して自由な身にならなければならない。泳げない雄司が泳げるようになる過程は、雄司が「過去」に折り合いをつけて「未来」へ進む過程と重なる演出になっている。目新しいテーマではないが、真剣味とユーモアが混ざり合ってとても楽しく見る事ができる。
雄司と静香は水泳の生徒とコーチであるが、泳げるようになる過程で段々お互いの人生を共有するような関係になっていくのが面白い。芝居じみてはいるが、夜のプールで雄司の苦しみを静香が優しく包み込むシーンは一つのクライマックスになっている。静香コーチは本当に泳ぐことが好きで、自身も泳ぐことで救われたからこそこのシーンが成立している。「八重の桜」で共演している二人だから息はぴったりだが、せっかくならもう少し濃密な絡みのシーンがあってもいいかなと思う。
水泳教室のおばちゃんたちはいい味を出している。雄司と静香の二人だけではシリアスになり過ぎる所を、カジュアルに滑稽さも出ていてとても良かったのではないかと思う。
「シリアス」と「滑稽さ」がうまくバランスがとれた作品でした。

ガバチョ