「人生の本質は数奇(きっかけ)」はい、泳げません おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)
人生の本質は数奇(きっかけ)
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講義中、そして飲み会の時もほぼ寝ている学生が、生きる意味を問う。
「それを君の課題にしよう」と言って、学生はサルトルを紐解き、現時点での解答を見いだす。
偶然知り合った男女が結婚を決意し、子供を得る。
その報告を受けた雄司が二人を祝福し、婚姻の証人となる。
不幸な過去と幸福を約束された未来とが、束の間共存する。
人生は、不意打ちがもたらすきっかけで、変化してゆく。
学生はそれを「新たな発見」と言った。
やたらと押し付けがましい水泳教室のコーチが抱える過去が、雄司を過去の桎梏から解放するきっかけとなる。
変化はさらなる変化をもたらす。また、それは昨日までの変化の積み重ねの上に成り立つものでもある。
変化することは、これまでの自己を否定することと同義ではない。
もっとも自分らしく行動できるのは自分であると恩師は言う。
人の本質は容易には変わらない。わたしたちはもっと自分を信頼すべきだ。
雄司が水泳教室に通う決意をしたのは、新たな出会いがきっかけだった。
そして、その出会いが新たな家庭に結実したのは、偶然にも水泳の特徴が人生のそれと重なることを実感させる優秀なコーチのおかげだった。
わたしたちは劇的な人生の数奇を求めてやまない。
映画を観る動機はここに尽きると言っていい。
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