「【”水泳は心のリハビリ。そして、認識と記憶。逃げてはイケナイ。”ある出来事により、心に深いトラウマを負った男の人生再生物語。前半はコミカル要素強めに、後半はややシリアスに物語は進みます・・。】」はい、泳げません NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”水泳は心のリハビリ。そして、認識と記憶。逃げてはイケナイ。”ある出来事により、心に深いトラウマを負った男の人生再生物語。前半はコミカル要素強めに、後半はややシリアスに物語は進みます・・。】
ー 大学教授で哲学を教える小鳥遊(長谷川博己)は、水が怖くて泳げない。だが、それには理由があった。
そんな彼が、一念発起し、スイミングスクールに通う事に・・。
コーチの静香(綾瀬遥)や、一緒に受講するオバサン4人に叱咤激励されながら、小鳥遊は自分のトラウマを、徐々に克服していく・・。-
◆感想
・冒頭の美弥子(麻生久美子)と小鳥遊が喫茶店で話をしているシーンでの”納豆ぶっかけシーン”から、少し嫌な予感がする。
・で、イキナリ5年後に時間は飛び、小鳥遊は一人で暮らしているようだ。
ー ここら辺で、その後のストーリー展開が読めてしまったのだなあ・・。一人で暮らすには広すぎるマンション。人気のない子供部屋。-
・前半は、小鳥遊のスイミングスクールでの、オバサン達に弄られながらも、奮闘する様が面白く描かれる。
■そして、ここで実は静香もあるトラウマを抱えている事が描かれるが、深くは描かれない。
作品構成が、中途半端なのである。少し残念。
・後半は、小鳥遊が水を怖がる理由が徐々に明かされていく。だが、その展開が予想通りだったので、余り響かない。
・更に美容院を経営するシングルマザーの恋人(阿部純子:おめでとうございます。)との関係性もキチンと描かれていない。
■が、小鳥遊はスイミングスクールで徐々に泳ぎを上達させつつ、”過去のトラウマから逃げていた自分に向き合い”、”止まってしまっていた自分の未来”に向き合う決意をしていくのである。
”前に進めなければ、上でしょ!”という静香の言葉。
この辺りは、個人的に心に響いてしまった。
<小鳥遊を筆頭とした、登場人物たちが抱えるトラウマに藻搔きながらも徐々に向き合っていく姿が印象的。今作は、トラウマを抱えた人たちの、人生をゆっくりと再生していく姿を描いた物語である。>
■追記
・私事で恐縮であるが、この作品を鑑賞中、常に頭を過っていたのは、毎年夏に家族でキャンプ場に行っていた際に一度だけ起きた出来事である。
キャンプ場の傍には、穏やかな清流があり、子供たちの良い遊び場になっていた。
だが、幼き息子を遊ばせている時、一瞬目を離した瞬間に息子は浮き輪に乗ったまま川下に流されていった。慌てて追いかけたが、川の流れは思った以上に早く、追いつけなかった。
家人が、キチンとライフジャケットを付けさせていた事と、下流に多数の家族がいたお陰で、息子は途中で助けられた。
だが、私にとっては今でも時折思い出す、苦い苦いトラウマである。
”何故、私は下流側で息子の乗った浮き輪をキチンと支えていなかったのか・・。私は父親として失格だ・・。”
今作でも描かれた、小鳥遊が必死に川に入り、流された息子を助けようとするシーンの彼の姿は、正に当時の私であった。
真に、トラウマを克服する事は、実に難しいと思う。
私が、この作品に3.0点ではなく、3.5点を付けたのは、小鳥遊の辛い辛い気持ちを封印していた理由が、とても良く分かったからである。