「幸せの町ヴィクトリー。誰にとっての"勝利"?」ドント・ウォーリー・ダーリン tabotyokoさんの映画レビュー(感想・評価)
幸せの町ヴィクトリー。誰にとっての"勝利"?
この作品は、とある夫婦がメインに動き回る。
夫がジャック、妻がアリスでこちらが主人公。
(名前だけを見ると、豆の木の主人公と
不思議の国に迷い込む女の子といった感じ?)
時代が現代じゃなく、'50年代のアメリカ。
(男らしさと女らしさを明確に分けていた
ファッションや髪型や靴。
あとはカッコいい車がズラリ。)
ヴィクトリーという町で専業主婦をこなすアリス。
ジャックとアリスの間にはまだ子どもはいない。
ジャックを送り出した後。
家事をきっちりこなし、
友人でお隣さんの、バニーと一緒に
バレエ教室に通い、
夕方スクールバスでバニーのお子さんが
戻ってくるまで
お庭でマティーニ片手に日光浴など、
実に優雅な暮らしを送っていた。
仲良しの2人組。
しかし、本来は仲良し3人組だった。
その1人が、マーガレット、という友人だ。
しかし彼女は、この町のたった一つの掟、
"砂漠に行ってはならない" を破ってしまっていた。
マーガレットは、自分の子どもと共に砂漠に行ってしまい、子どもは二度と戻らなかったのだ。
そんな事件があったため、
マーガレットはおかしな言動をするように。
掟を破ることに激しい嫌悪と厳しい姿勢を見せる
バニーに倣うように、
アリスもマーガレットとの交流を
あまり持たないようにしていた。
マーガレットのおかしな言動も、
全てスルーしていた。
幸せな町。全てがうまくいっている世界。
ある日、アリスは気晴らしに町の巡回バスで遠くまで来ていた。そこで、たまたま空を見上げると、黒い煙を吐き出しながらフラフラ空を飛ぶ飛行機を見かける。
あっ、と思った時、それは墜落してしまった。
慌ててバスの運転手に、現場までバスで行ってほしいと頼む。しかし、運転手は掟を破りたくないからと断った。
そんな運転手にドン引きしつつ、
はやく助けたい一心のアリスは、
たった1人で禁じられた区域の砂漠に足を踏み入れる。
そこは、以前マーガレットが子どもを連れて
足を踏み入れ、子どもが二度と戻らなかった場所だ。
…確か、落ちたのは山の上だったか?
車が一台通れるだけの道があり、そこを'50年代のドレス姿でトボトボと登っていくアリス。
カッと照りつける太陽は、アリスの体力を容赦なく奪っていく。それでも、なんとか頂上に着いた。
そこでアリスは奇妙なものを目にする。
アリスは引き寄せられるように、建物にはめ込まれた、窓のような3枚のガラスの1枚に両手で触れた。
すると、ガラスに触れた手のひらが真っ赤に光り、体に電気が走ったような衝撃が起き、頭の中を不可解なビジョンが写った……
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他の方にもありますが、ネタバレするとマトリックスでした苦笑
つまり、このビクトリーという町、彼らが住む家、子どもたち(⁉︎)、すべてが仮想空間の出来事で、本来の肉体は未だ現実の世界のベッドの上に横たわっている、という事でした。
そして最も怖かったのが、夫が妻になんの相談もなく勝手にこの仮想空間に連れてきちゃっている事です。
例外としてアリスの友人のバニーは、志願者でした。(理由は現実世界でお子さんを亡くされたため。バニーのセリフから推測)
アリスの夫ジャックは、現実世界ではなかなか職につけない人で、外科のお医者さんであるアリスに、経済だけでなく精神も依存しきっている状態でした。
そんな中、ネットでビクトリーの話を知り、アリスに相談もせず応募したら受かってしまい…あとはお察しです…。
相談もなしに勝手に人の時間を奪っちゃダメですよね…真相が全部わかったアリスは、ジャックにすごく怒ってました。アリスは仕事が楽しかったのです。
なのに、勝手に家に押し込めて、夫が喜ぶ良い奥さんの見本のような女性に仕立て上げていたのです。
でもラストは、アリスだけは仮想空間(絵本ふうに書くなら不思議の国)から脱出に成功するので、そこは良かったと思います。