劇場公開日 2022年11月11日

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「日本にも根付く男性社会」ドント・ウォーリー・ダーリン Minaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0日本にも根付く男性社会

2023年5月28日
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俳優としても活躍するオリヴィア・ワイルド監督作品。かなり不穏な作品だが、女性と男性とでは鑑賞後の思いがそれぞれ異なるかもしれない。本作は主婦である主人公の目線を基本としているが、旦那を愛し、豪華な食事と豊かな愛情表現で日々を過ごす、何とも幸せそうな夫婦像である。だが、その中にちらほら見え隠れする異変。それは近隣住民の不可解な行動にも現れ、次第に主人公にも襲い来るのであった。サランラップで顔をぐるぐる巻きにし、芸人顔負けの潰れ顔を披露したりなど、奇行を全力で演じるフローレンス・ピューの演技に圧倒されつつ、幸せすぎるその生活が不自然に思えてくる展開は中々怖い。本作、説明しようにもネタバレ部分を通過してしまうため、文章が非常に難しいのだが、ジョーダン・ピール監督作品よろしく事前知識等は無いままで鑑賞するのがベストだろう。
視覚的な暴力表現等は無く、不気味すぎる幸せという背筋が寒くなる不穏さが最大の売りの本作だが、どんなに長くても3時間程度という映画作品で描くにはやや説明不足な作品な気がする。豪華なキャストなのもそれを物語っており、どうせなら全員の物語も見せて欲しいとさえ思ってしまった。ここで描かれるのは日本人を含む社会が「当たり前」だと思っていた事に対する風刺だ。そこには人間のエゴからくる希望的観測だったり、支配欲だったりなど、人間の怖い部分が後半で怒涛の如く明かされる作品である。鑑賞後、「ドント・ウォーリー・ダーリン」というタイトルに込められた皮肉っぽいメッセージを感じ取れるか否かで、全体の感想や評価も変わってくるだろう。

Mina