「1950年代のアメリカをユートピアとしたディストピアもの。」ドント・ウォーリー・ダーリン レントさんの映画レビュー(感想・評価)
1950年代のアメリカをユートピアとしたディストピアもの。
プロパガンダとして利用された「バックトゥザフューチャー」でもお馴染み、アメリカが最も栄光ある時代が本作の舞台。しかし本作はかの作品とは異なりかなり皮肉がきいた作品となっている。
ここで描かれるのは張りぼてのような偽りのユートピア。第二次大戦後アメリカが最も栄華を極めた時代。だがそれは裏を返せば男社会の栄華でもあった。
男は外でバリバリ仕事、女は家で家事と育児。外で働く夫を貞淑な妻が陰で支えることが当時のアメリカ社会では美徳とされた。だが、家電や自動車などアメリカが誇る基幹産業が安くて質の良いアジア製品に取って代わられ、アメリカの衰退とともに、家庭に押さえつけられてきた女性の社会進出も活発に。いまやかつて栄華を誇った男社会は見る影もない。
本作でも主人公アリスの夫ジャックは無職で、優秀な医師である妻に頭が上がらない。そんな彼が飛びついたのがビクトリー計画だった。
男が颯爽と生きる順風満帆な世界、それを貞淑な妻が陰で支える。時には夫の性欲を都合よく満たしてくれる妻の存在。まさにかつての男社会の復活を切望する男たちにとってはユートピアである。しかし、かつての男社会同様自分たちの自由意思を封じられるこの世界は女性にとってはディストピアでしかなかった。それに気づいたアリスはこの偽りの世界から脱出を試みるのだった。
男たちの愚かな願望が結局女性によって打ち砕かれてゆく様を描いた女性監督らしい皮肉がきいた作品となっている。ただ、本作のテーマ自体は面白いがサスペンスとしてはやや冗長。ディストピアものとして落ちは端から予想できるのでもう少しテンポよく見せて欲しかった。
皮肉が効いてましたね。アメリカの衰退の描き方がユニークでした。アメリカ中間選挙で共和党圧勝だと言われてましたが、人口中絶に反対する共和党に、特に若年層の女性は投票しなかったみたいですね。至極当たり前のことですが。日本も女性が動けば、かなり変わると思うんです。杉並区長選の時みたいに。