「静かにたどる時間」帰らない日曜日 グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
静かにたどる時間
1924年といえば、ジュネーヴ宣言(児童の権利に関する宣言)が国際連盟で採択された年。
第一次世界大戦で多くの若者が亡くなったと同時に、多くの民間人も犠牲になり、戦争孤児が増えたことが背景のひとつでもあります。
この映画は、子どもを亡くした親たちの喪失感と、寄る辺のない孤児が見出した光が一瞬で喪失に変わった一日とが、まったりとした時間の中で交錯して描かれます。
原作を読んでないのであくまでも推測ですが、このまったり感が、章と章を跨ぎながら、あれこれと想像しつつ味わう読書体験のように、うまく再現されていたのだと思います。
誰もいない静謐の中、ジェーンは本革製の背表紙を人肌をなぞるように優しく…
文章センスが無くて恥ずかしいのですが、そうやって実際に本を読んでいるような感覚で映画の中に入り込むことができました。
帰る場所は用意してあるのに、帰ってくる人がいない。
何かにすがれる場所を探しているのに、いつも失ってばかり。
結論めいたものを示さず、それぞれの人が抱える満たされない心を淡々と描く。まさに文学。
そんな静かな作品です。
グレシャム様コメントありがとうございます。
知性の塊のグレシャム様のお言葉は慈雨のようでございます。
この映画はジェーンの心象風景にあえて踏み込まないのが良かった。
あの日が彼女が産まれた日なんですね。イギリスの田舎の風景も良かったです。
帰る家のないジェーン、帰ることのない息子達を亡くしたNiven夫婦。お金持ちで立派な家、富はあるけど悲しみでギクシャクした夫婦、一方孤児だった彼女が小説家として成功しており、賞や記念品には目もくれず。なかなか深いです◎
今晩は
今週はハリウッド大作に総て持っていかれた感がありますが、今作を含め佳品が多かったと思います。
特に今作は、私が好きな英国映画の雰囲気が横溢していて、好みでしたね。原作は読んだ事がないので、イロイロと勝手に推測しながら観ましたが矢張り、コリン・ファース(「アナザー・カントリー」で嵌りました。)と、「女王陛下のお気に入り」で、一気にブレイクしたオリヴィア・コールマン(不機嫌な顔を演じたら、天下一品女優。)の夫婦の姿に嵌りましたね。
では。返信は不要ですよ。