「残念ながら、映画化は失敗だ。原作を読んだほうがいい。」帰らない日曜日 いなかびとさんの映画レビュー(感想・評価)
残念ながら、映画化は失敗だ。原作を読んだほうがいい。
朝日新聞夕刊の映画欄に、この作品が取り上げられ、観る気になった。原作はイギリスで有名な文学賞を取った小説だ。地元の公立図書館に翻訳本があったので、先ず読んでみた。
陰影に富み、繊細で良い小説だった。中篇小説なので集中すれば、半日で読めるだろう。純文学好きかつ小説家志望者なら、気に入るだろう。
映画化して成功した小説はそれほど多くない。6月から教育テレビの「100分で名著」で取り上げられる安部公房の「砂の女」は、勅使河原監督による成功例だ。原作も映画も面白い。
脚色で変更された箇所もあるが、原作の文章だと含蓄豊かな場面が映像化に失敗している。22歳と23歳の若者なのに、男性役は額のシワが目立ち、ちょっと歳を取りすぎている。それと、主人公が結婚する哲学者を黒人が演じている。今なら普通だけど、1940年代にはあり得ないと思う。
1920年代の英国上流階級が暮らす家や家具調度品、服装等を、私は具体的に想像できない。途中から、そちらの方に注目していた。原作では主人公がある事故を経て、創作活動に目覚める話だった。原作では作家のコンラッドが肝なのに、∨・ウルフに変えていた。おいおい。違うだろ!!
翻訳ではオランダ帽子を「子宮栓」と訳していた。たぶん、ペッサリーだろうなと勘ぐっていた。映像を見て確認した。
いきなり映画を見ても、この原作の良さは理解できません。是非、原作を読んでください。映画を鑑賞するか、どうかはあなたにお任せします。
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