「テーマは興味深い」PLAN 75 Kazuki Miyajiさんの映画レビュー(感想・評価)
テーマは興味深い
クリックして本文を読む
テーマは尊厳死。
尊厳死といえば、選択の自由や、生き方の選択といった個人の意思に注目が集まりがちであるが、実際の人間は様々な社会的関係や制度のなかで生きており、そのなかで死を選択するということが必ずしも自身の意思を反映しているわけではないことが分かる映画。
このテーマを日本の少子高齢化の問題と抱き合わせにすることで、より現実味が増してくると思われた。
ただし、そうであるがゆえに、主人公やそれを取り巻く人々の関係性をもっと丁寧に描いてほしかった。とくに、プラン75を推奨する立場の岡部と成宮の行動にいまいち必然性がないように感じた。
例えば岡部は、親戚とはいえまったく連絡を取らなかった叔父のために、なぜ制度に反抗するような態度をとったのだろうか。これまでプラン75を推奨し、実際の申請者の手続きも行っていたにもかかわらず、叔父というだけでそこまでの行動に出られるのだろうか。
成宮にしても、コールセンターの規約などを破ってミチに会いに行ったのはなぜか、たった1度会っただけでそこまで親しみを持つのだろうか。
個人的には2人とも具体的な行動に移すことなく、もやもやした状態で終わったほうがよかったのではないかと思ってしまった。
その意味では、なぜやや薄い関係の人同士で話を展開したのかと思う。
例えば、ミチに配偶者や子ども、孫、義理の息子/娘など濃い関係の人々がいたとして、そのなかで尊厳死を選択できるかといった話の展開のほうが楽だったのでは。
あえて長年会っていない叔父ー甥、プラン75の申請者ーコールセンターの職員としたのには何か理由があったのか聞いてみたい気がする。
コメントする