劇場公開日 2022年6月17日

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「ちょっと頭でっかちの部分はあるかな」PLAN 75 ONIさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ちょっと頭でっかちの部分はあるかな

2022年6月19日
iPhoneアプリから投稿

なかなかこうまでディストピアを描き出した邦画はないかもしれない。設定的には『楢山節考』な感じもするけど、絵的には『ノマドランド』をもイメージさせる現代映画。と、言っても今の日本はどこを切り取ってもそのままノマドランドなので大きな美術を投入しなくてもいい。『愚行録』が雰囲気としては近いのかな。

個人的にはもうちょっと『ソイレントグリーン』的になってくれないとあまり面白くはならないな、と思った。伝え聞く近未来の設定を決して世にも奇妙な物語風ではなく、映画的に捉えようとしてはいるのだけど、もう死の影しかなく、それはネタがそうだからかもしれないけど長々と生気を失った人と風景を見るのはつらい。せっかくの倍賞千恵子のキャリアも活かしきれていないのでは、と。それは楢山節考が一方で生きとし生けるものの生命力をぶっ込んでいるからその終焉の死にのたうちまわることもできるのであって、こうまで一方向にプランに乗っかった人、乗っかってく人、それを仕事にしてる人が静かにクロスしてもエモーションはかかってこない。ラストのほうにこのシステムのほころびともいえる人間性が発動するけど、個人的に映画はエモーションの見せ物としてお金を払っているのでどうもあんまり感心しない。
偶然同じ日にみた『メタモルフォーゼの縁側』は、逆にほぼ死のイメージが何も影を残さずそれはそれで物足りないものだったけど、まとめて考えると『おらおらでひとりいぐも』は素晴らしい出来の映画だったと思う。

ONI