「乗れず、浸れず、楽しめず」BLOODY ESCAPE 地獄の逃走劇 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
乗れず、浸れず、楽しめず
アニメ作品は昔から好きで、中でもSFは大好物なので、本作には予告から興味をもち、公開初日に鑑賞してきました。
ストーリーは、魔改造された実験都市・東京を舞台に、人体実験により改造人間にされたキサラギが、東京制覇をもくろむ不死身の吸血鬼集団「不滅騎士団」や、殺された親分の復讐を誓うヤクザに追われる中で、さまざまな秘密が明らかになっていくというもの。
ポリゴン・ピクチュアズらしい映像は、劇場クオリティとして申し分なく、未来の東京を舞台とする世界観によくマッチしています。滑らかな動きと巧みなカメラワークを駆使したハイスピードアクションも、終始暗めの絵づくりなのがもったいなかったですが、とても見応えがあります。キャスティングについても、劇場版アニメにありがちな人気タレント起用をすることなく、実力のある声優をずらりと並べており、演技の点でも何の不満もありません。
それなのに!なぜか乗れず、浸れず、楽しめず。その原因は、設定や世界観のわかりにくさです。冒頭ではわからなくても、話の展開に合わせて理解が進み、しだいに惹きつけられていく作品が多いと思いますが、本作ではそれがちょっと遅く、なかなか没入しづらかったです。終盤になってやっと話がつながり始めておもしろくなるのですが、時すでに遅し。この日4本目の鑑賞で集中力の落ちていた自分にも責任はありますが、序盤でもう少しやさしく作品世界に誘ってくれるとありがたかったです。
また、ヴァンパイアだけでも成立するストーリーのようにも思えますが、多様な種族が存在していることが物語にどのような効果をもたらしているのかもよくわかりませんでした。多様な価値観や外の世界への憧れ等を描きたかったのでしょうか。本作がテレビアニメ「エスタブライフ」と世界観を共有していることを鑑賞後に知ったのですが、先に視聴していればもっと楽しめたのでしょうか。時間があればそちらも観てみようと思います。
キャストは、小野友樹さん、上田麗奈さん、斉藤壮馬さん、内田雄馬さん、山寺宏一さんら、そうそうたる顔ぶれです。中でも、山寺宏一さんの演技はすばらしいの一言です。