「土とともに暮らす人々の素朴な人生を描いたドラマと見るか、現代中国の社会問題を描いた作品と見るか、様々な捉え方ができそうな一作」小さき麦の花 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
土とともに暮らす人々の素朴な人生を描いたドラマと見るか、現代中国の社会問題を描いた作品と見るか、様々な捉え方ができそうな一作
主人公ヨウティエ(ウー・レンリン)とクイイン(ハイ・チン)は、せっせと農作物作りに励む朴訥な夫婦。どうやらクイインには何らかの障害があり、そのために親戚にはやや疎んじられているようだけど、ヨウティエの彼女に対する愛情は確固としている様子。
そんな二人の姿を見て、土とともに生きる生活も素朴でいいかも、と思いそうになるんですが、一方で自宅を建てる際に必要なレンガも自分で作る、雨が降ればずぶ濡れになってそのレンガを守る、そして農作業は家畜を使役することはあっても基本的には手作業のため、種付けも収穫も自ら行わなければならない、と、常に埃まみれで肉体労働に従事している、という過酷な日常であることも痛感します。しかも本作の時代設定は、工業化前どころか、急速な経済発展の只中にある現代中国です。そのため彼らの親族はビジネスに勤しみ、高級外車を乗り回す一方、ヨウティエからは文字通り血液まで搾り取ろうとします。それでも自らの人生にも周囲にも異議を唱えないヨウティエを幸せと捉えるかどうか、ちょっと考えてしまうものがあります。
結末の展開も、一体ヨウティエがどう判断してここに至ったのか、解釈のしようで見方が変わる内容になっています。主演俳優たちはそれほど知名度があるとはいえず、題材も派手なものではありませんが、中国ではSNSを通じて若年世代の人々を惹きつけ、興行的には予想外の好成績だったとのこと。観客たちが本作に何を見出したのか、その点も興味があるところです。
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