劇場公開日 2024年5月3日

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「暗闇があって初めて光は意味を持つ」ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0暗闇があって初めて光は意味を持つ

2024年5月4日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

難しい

グアンタナモに5年間勾留され拷問されたムラート。どんなに辛くて苦しくて孤独だったろう。イギリス映画「モーリタニアン 黒塗りの記録」(2021年公開)を見てなければグアンタナモがどれだけ酷い所か想像つかない。その映画も実話に基づいていて無実で勾留されたモハメドゥの解放まで本当に時間がかかった。人権派弁護士(ジョディ・フォスター)と共に戦い、米軍所属の弁護士(ベネディクト・カンバーバッチ)の協力も得た。モハメドゥは優秀で若い時にドイツ政府から奨学金を得てドイツに留学していた。アフリカから出てヨーロッパに暮らし勉強した経験は彼の強さの基盤になったろう、もともと前向きで明るいメンタリティが自分と周りの人間を助けた。

この映画ではママだ。上述の映画「モーリタニアン」でこれでもかと映される収容所内部。一方で息子がどうなっているのか全く知らされず安否もわからない家族の思いを映し出したのが本作だ。泣いて辛くもなるが息子ムラートへの思いと明るさと強さがあったからこそ周りはだんだんと喜んで彼女にムラートに手を差し伸べる。彼女も弁護士ベルンハルトも本物とよく似たキャスティングで素晴らしく演じていた。

メルケルが首相になった際の宣誓シーンのテレビ映像は光輝いて見えた。メルケルほど、支持政党に関係なく長年ドイツで頼りにされ支持された首相は居ないだろう。そのメルケル内閣でさえできないこと、しないことがエンドロールで流れた。グアンタナモはまだある。アメリカ合衆国は不正の象徴であるこの収容所を一日も早く撤去すべきだ。

おまけ
1)トルコはどうか知らないけれど、ドイツ人のアイロン愛と情熱はすごい。下着もTシャツもデニムもソックスもベッドリネンも何にでもアイロンする。イタリア人にとってもアイロンがけは主婦に求められる欠かせない仕事だ!
2)北ドイツの方言あいさつ「モイン」が可愛い。ケーキのBienenstich(ビーネン・シュティッヒ)が出てきて嬉しかった。ドイツのケーキはシンプルな外見で甘すぎずとても美味しい!
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『イタリアのシェフ』(2017)101分
"The Space Between" Amazon Prime Video
鑑賞日:2024/5/7
「イームズの椅子が好きなオリビアと料理が上手なマルコ」
イタリア的でイタリア的でない映画でした。静かでうるさくなくてゆっくりしゃべってセリフが少なくてお料理大事。パパとママと親友大切。いつもサングラス。美しい緑溢れる自然と石の街。20~30分遅れは遅刻にならない。リルケの『ドゥイノの悲歌』の道があるから街はトリエステだろう。山が背景によく見える。主人公のマルコはニューヨークのレストランで料理長として働いていたが、ママの危篤でイタリアへ戻りパパの面倒を見ながら工場勤務。オーストラリアから来た銀行員のオリビアは本当はデザインの仕事がしたい。マルコの親友のクラウディオはセンス抜群のお店を持っていて(パパは著名な建築家)、LPレコード、紙の本、デザイン写真集を売っている。その店で偶然出会ったマルコとオリビア。クラウディオが交通事故で突然死んだ後で。タイトルのThe Spaceはクラウディオの店「CODO」かな、それとも色々な文化が交差する街トリエステのことかな?

風邪ひいて喉がとても痛くて咳して喋ることが殆どできない今の自分にちょうどいい優しい映画でした。

talisman