「【人口妊娠中絶が違法だった1960年代米国で、様々な事情で中絶を望んだ多くの女性に手を差し伸べた団体の活動を、自身も中絶した女性を軸に彼女が葛藤しつつも成長する姿と共に描いた作品。】」コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【人口妊娠中絶が違法だった1960年代米国で、様々な事情で中絶を望んだ多くの女性に手を差し伸べた団体の活動を、自身も中絶した女性を軸に彼女が葛藤しつつも成長する姿と共に描いた作品。】
■1968年。シカゴ。弁護士夫人のジョイ(エリザベス・バンクス)は夫ウィル(クリス・メッシーナ)との間に二人目の子供を授かる。
喜ぶ二人だが、ジョイは妊娠した事により心臓の病気が悪化し、担当医から”唯一の治療は妊娠を止める事。”と告げられてしまう。
しかし、妊娠中絶が違法だったために、病院は、中絶手術を拒否する。困り果てたジョイは張り紙を見て、違法だが安全な手術を提供する女性団体『ジェーン』の存在を知り、電話で助けを求める。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・正直に書くが、私はある時期まで妊娠中絶には反対の思想を持っていた。理由は単純で、部下に子供が出来なくて、大変な思いをしながら奥さんと共に病院へ頻繁に通っていた男が居たからである。
・だが、考えが変わったのは映画で元米国最高裁判事だった故RBG(ルース・ベイダー・キングバーグ)さんをモデルとした映画と、彼女自身のドキュメンタリー映画を観てからである。
ご存じの方も多いと思うが、故RBGさんの当時の言葉の概略を記す。
”子供を産むか産まないかは、女性の生き方や幸福、尊厳を保つために必要な決断です。更に言えばその決断はその女性自身が決めるべき事であり、政府が決める事ではありません。”
当時最高裁判事の中で中道左派だった女性であった故RBGさんの言葉は、正に衝撃であった。そして、遅まきながら”世の中には、望まない妊娠をした女性が多数居るのだ”という事を知ったのである。
・今作では、ジョイは正に予想外の妊娠をした訳で(長女のシャーロットは初潮を迎えた年頃である。)それは『ジェーン』助けを求めるよな、と素直に思ったのである。
■この作品が、リアリティを持って描かれているのは、ジョイが怯えながら男性医師デューンの手術を受けるシーンから、彼女自身が高額な中絶費用が払えない女性達のために、自らがバージニア(シガニー・ウィーバー)の後押しもあり、葛藤を抱えながらも『ジェーン』の医師になって行く様であろう。
夫の心配する姿もキチンと描かれる中、ジョイは貧しき女性達を救う活動に参加して行く様は、それまで夫ウィルの庇護の元生きて来た彼女が、女性として自立していく姿としても観れるのである。
<そして、『ジェーン』たちは、違法行為により立件されるが最高裁判事7名の指示により(2名は反対)その地位回復を得て、中心人物バージニアの言葉により解散するのである。
今作は、人口妊娠中絶が違法だった1960年代米国で、様々な事情で中絶を望んだ多くの女性に手を差し伸べた団体の活動を、自身も中絶した女性を軸に彼女が葛藤しつつも成長する姿と共に描いた作品なのである。>
■だが、現在の大統領は中絶反対の立場を取っている。故に、妊娠中絶問題は今でも米国の分断の一つの要素である事を、忘れてはいけないのである。
普通の、どちらかというと裕福な専業主婦の奥様が、かわいく権謀術数を駆使して大胆に意志を貫いていくところが痛快でした。中絶の問題は、一方的に負荷がかかる本人である女性の声は無視して直接わが身に降りかかってこない男性が決定していい話ではないはずといつも思っています。
宗教的倫理的理由で中絶禁止するなら妊娠させたほうにも金銭的社会的肉体的精神的代償を払わせ責任をとらせることを考えるのが理にかなっているのにそれはあまり考えないんですよね。今の技術をもってすればやろうと思えばできるのにしない感じもします。