劇場公開日 2024年12月13日

太陽と桃の歌のレビュー・感想・評価

全44件中、41~44件目を表示

3.5忍耐力が問われます

2024年12月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

さて今回も鑑賞前の(本作の)前情報はほぼゼロ。もしかしたら劇場でトレーラーは流れていたかもしれませんが全く覚えがありませんし、映画.comのあらすじも読まずにサムネイルだけ見て「キッズ(がメインの)映画?」と想像しつつ、ベルリン金熊賞の受賞歴とIMDb評やRottenTomatoesの点数が高いという理由で劇場鑑賞を決めました。公開初日のシャンテ10時50分からの回、二日前にオンラインで予約しようとしたら、いつも自分が選ぶ席が早々に買われおり「これはひょっとして混むのかな?」と思っていましたが、結局は空いていました。。
で観終わり、映画.comのあらすじを確認したところ、がっつり説明してますね。とは言え、ネタバレってことはなくそもそもシンプルなストーリー。ところが、いろいろな観点でストレスを感じる121分の上映時間はなかなかしんどく、観続けるのにはそこそこの忍耐力が問われます。
ちなみにキッズ映画ではなく(w)、ある家族のそれぞれの目線で語られる群像劇。どの目線からも感じる「家族という呪縛」にわかりみが強いだけに本当にイタい。特に、長男で一家の家長であるキメットが兎に角頑固。主に外的な要因とは言え、時間的余裕なく追い詰められて相当なプレッシャーがあることは理解できるのですが、合理と割り切って逃げに出ること良しとせず、また兄弟たちの気遣いから出る意見や、更には助け舟にさえ抵抗して孤立していきます。そして、キメットの長男ロジェーと長女マリオナが、未熟な面はありつつも家族想いであり、本質的にはいい子なだけに更にイライラ。ところがようやくの終盤、溜まりに溜まった妻・ドロルスのある行動が目覚ましく、ここまで耐えてきたことが報われます。そして、そこから間もなくのシュールな終わり方に鑑賞後の余韻が深く残ります。
いやはや、劇場鑑賞でなければ最後まで集中力が保てなかったんじゃないかな。。また別の観点にはなりますが、カタルーニャの桃農園には当然外灯なんてないため暗いシーンは本当に暗い。と言うことで、(配信を)液晶画面で観るのは辛いかもしれません。決して「楽しい映画」ではありませんが、もし興味があれば是非劇場鑑賞をお勧めしたい一本でした。

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TWDera

3.5悲喜こもごも、家族や親族で農業を営むところを見事に表現していた気がします

2024年12月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

題材になっている事柄は、現代においては至るとこで目にするわけで、そしてそれは必ずと言っていいほど新しくなっていくことへの拒絶とか否定の気持ちが色濃く主張されている場合のほうが多い気がする。新しい未来、バンザーイ!これでみんな幸せで、しかもお金持ち、っていう場面なんて見たことがあるだろうか。しかも、太陽光発電そのものまでもが否定されかかっている現状、色んなフィルターがあっての観賞でしたが、果たして・・・
よくある家族の絆や亀裂を描きつつ、やっぱ別物・余所者への嫌悪感といったものが表現されていました。非常に丁寧で、かなり引き込まれて見入りましたが、もはやこういった表現こそがステレオタイプに見えて、もういいからそれでどうなったのかを見たいんだよ、と思ってしまいました。
人との関係性や繋がりなんかを眺めている分には最高の作品です。

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SH

4.0太陽が生む食とエネルギー

2024年12月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

スペインはカタルーニャ地方の桃農家のお話でした。親子3代に渡って桃を作り続ける一家でしたが、この土地にソーラーパネルを設置して収益性を高めたいらしい地主から土地の返還を迫られる中、一家に生まれた不協和音に焦点を当てていました。遠いヨーロッパの農村のお話ではあるものの、ソーラーパネルが国土を”破壊”しつつある事情は日本と同様で、その点が非常に興味深いお話でした。

ただ農業従事者の平均年齢が68歳と高齢化社会の最先端を行く日本の農村部の風景と異なり、本作の主人公一家は孫世代まで子だくさんで、その点は”明るい農村”の風景で、ある意味羨ましく感じたところでした。

本作を観て思ったのは、まずは邦題の秀逸さ。原題の「Alcarras」は、本作の舞台となった街の名前のようですが、邦題の「太陽と桃の歌」というのはまさに言い得て妙。本作の主題は”太陽の力”であり、従来は桃の生産を支えていた訳ですが、今後はソーラーパネルによる発電を支えることになる訳です。この大転換に際して、人々はどう対応すればいいのかがテーマの作品でした。

初代である祖父・キメットはギャンブルで土地を得ようとし、その息子・ロヘリオをその状況を受け入れられず、孫・ロジェーは大麻栽培を始めるなど、人それぞれ。太陽光発電の管理人として雇うという地主の申し出を受け入れるべきだという考えもあり、結局その不協和音がまとまらないままに桃の木は切り取られてエンディングを迎えるこのモヤモヤ感は、まさに現実世界とリンクするものでした。

因みにスペインの食料自給率は90%以上だそうで、40%を切る日本と比べると比較的高い数値になっています。スペインのエネルギー自給率は20%程度と、10%程度しかない日本同様低いため、農地を削ってエネルギーを得るという政策は、マクロ的には一定の説明がつくように思います。ただ日本の場合、食料自給率もエネルギー自給率も非常に低いため、双方の水準を引き上げて行かなければいけない状況であり、問題はスペイン以上に深刻なんだなあと、本作を観て改めて愕然としたところでした。

最後は映画と関係のない話になってしまいましたが、急速な環境変化が人間社会に不協和音を生むことを再認識させてくれた本作の評価は★4.2とします。

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鶏

4.0終わっても、終わらない家族。

2024年11月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

ドキュメンタリーのように自然な桃農家の日常と、カットアウトされる生活の終了間際の日々が瑞々しい。家族の世代ごとにある、さまざまな『終わり』へのカウントダウンが、静かに、残酷に、暖かく描かれてゆく。そして、その農家を追いやる理由が、あまりに現実的で、切ない。

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t2law