劇場公開日 2022年5月6日

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「【世界中から愛された稀代の大女優は、後年、多くの人にそれ以上の愛を注いだ・・。”幼き日の哀しみをバネにして、利他的で人道的な姿勢を貫いた姿が人として素晴らしいと思ったドキュメンタリー作品である。】」オードリー・ヘプバーン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【世界中から愛された稀代の大女優は、後年、多くの人にそれ以上の愛を注いだ・・。”幼き日の哀しみをバネにして、利他的で人道的な姿勢を貫いた姿が人として素晴らしいと思ったドキュメンタリー作品である。】

2022年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

ー 最近、ラジオでオードリー・ヘプバーンさんが「ティファニーで朝食を」の中で歌う”ムーンリバー”を聞いた。
  儚げな歌声に魅了され、その晩映画館へ足を運んだ。
  (今作でも窓際でアコギを弾きながら歌うシーンと、実はカット寸前だったのを、オードリーさんが怒って上映にこぎつけ名シーンになった事が描かれていた。)ー

◆感想

 ・オードリー・ヘプバーンさんの出演映画は、メジャーな作品は大体観ている。(但し、年齢的にTVである。)
 そして、当然の如く若いころは、その世界中が魅了されたと言われる美しさにヤラレテいた。

 ・今作が秀逸なのは、オードリー・ヘプバーンさんが幼き時、父親がナチス思想に走って”黒シャツ党”に入党した後、家族を捨て出奔した彼女にとっては、終生トラウマになった事柄から、きちんと一人の女性の人生を多くの人のインタビューを織り交ぜながら、裏表なく描いている点である。
 ー そして、彼女に対してのコメントが皆、好意的であるのだ。皆、彼女が好きだった事が良く分かる。(二人の旦那さんに対するコメントは当然、辛辣・・。)前半はやや懐疑的に観ていたのだが、本当に善人だったのだな・・、と彼女の後半生を知るに至り、思った。-

 ・バレーダンサーだったことを始めて知ったし、第二次世界大戦中、酷い餓えを経験していたり、両親の離婚を目にしたり・・。
 - 幼年期の彼女は、厳しい経験を数々している事も、様々な人物のインタビューを交えて描き出している。けれど、彼女は悩み苦しみながらもその数々のつらい経験を、後年、昇華させている。立派であるなあ。-

 ・最初の旦那さんと、2番目の旦那さんと、夫々子を作りながらも関係性が破綻して行き、ギリギリまで子供の事を考え、我慢しながらも最後には離婚した事実も隠さずに描かれている。
 - オードリー・ヘプバーンさん自身が、幼年期持てなかった温かい家庭を築きたいという思いからであろう、相手の素性(特に2番目のお医者さん・・。)の奥まで確かめずに結婚したのは・・。
   救いは、三番目の男性と結婚はしていないが、良好な関係性を持てた事であろう。
   ある方が”彼女は男運が悪かったのよ”と言うシーンがあるが、幼き時のトラウマも関係してしまったのかなあ、と少し思った。-

 ・そして、映画界のオファーを10年近く断り、子育てに専念した事もナカナカ出来る事ではない。大スターの地位よりも、家庭を大切にする姿。

 ■齢を重ねてからのオードリー・ヘプバーンさんがユニセフの広告塔として、自らソマリアなどに赴き、人道支援活動を世界に呼びかける姿は、尊崇ですらある。
 且つての自分の飢餓の経験及び、子供を大切に思う気持ちが、あの行動に繋がった事は、容易に想像が付く。

 何となく、不幸な結婚生活をしていた、故ダイアナ妃が地雷撤去の活動に積極的に取り組んでいた事を思い出した。

<オードリー・ヘプバーンさんは誰もが知る、今でも世界から愛されている大女優さんであるが、私生活では華美に走らず、子供を大切にする心優しき一人の女性だったのだ。
 そして、後年は飢餓の子供たちを救うために、自らの病に気付きつつも、利他的で人道支援に注力した年を重ねたオードリー・ヘプバーンさんの表情は、若き日の銀幕の姿にも増して美しい、と私は思った。
 世界から愛された大女優は、様々な過去の哀しき経験をバネにして、多くの人に愛を注いだ人間として素晴らしい女性であった事を、このドキュメンタリー作品から学んだ。
 今作は、今後、少しづつ彼女の未だ観ていない作品を見て行こうという気持ちにさせてくれた貴重な稀有な女性の一生を追ったドキュメンタリー作品である。>

NOBU