「人災と言うならば、その原因と教訓をしっかりと描くべき」チェルノブイリ1986 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
人災と言うならば、その原因と教訓をしっかりと描くべき
一人の消防士の視点に絞って、チェルノブイリ原発事故の消火活動と排水バブルの閉鎖作業の様子が描かれる。もっと全体的な視点から、事故の原因や教訓が描かれるのかと期待していたが、完全に肩透かし。
自らの命をなげうって危険な作業に身を投じた英雄的な行為を讃えたかったのかもしれないが、そのような自己犠牲は、どのような事故現場でも、あるいは戦場でも存在し得る。これでは、何のためにチェルノブイリを題材として取り上げたのかが分からない。
ただ、主人公が決死隊に志願する理由が、特権的な優遇措置を手に入れたいがためというのは、いかにもソ連での話らしいという感じがする。この映画が、変な国威発揚モノになっていないのは、まさにこうしたエピソードを描いているからで、ある意味で、それが、この映画の良心なのかもしれない。
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