「哲学....」この子は邪悪 バタケダブラっさんの映画レビュー(感想・評価)
哲学....
個人的解釈としては、魂を入れ替えるというのは司朗さんの独自解釈での話かと思います。
本質としては「魂を入れ替える」ではなく「生まれる前、胎児の頃から己は○○本人なのであるという刷り込みを行い、本人だと認識させれば、それはもう○○本人になる」という哲学的思想かと思います。
言語化が難しいですが、胎児レベルまで遡り刷り込みを行えば、それは本来の人格を他の人格と入れ替えと何ら変わらないのではないか?という哲学的ロジックから成る合理的かつ現実的な手法かと。
これは、作中のルナとマユコが未だ催眠に掛かっている演出 (目がグルグル回っている) から見て導き出せる考察です。
つまり、客観的に見るとルナ本人と思い込んでいる少女、ジュン本人と思い込んでいるウサギ、ウサギと思い込んでいる人間達という理解をしています。
この考察では一つだけ問題が起きます。
司朗さんとハナは「人格さえ入れ替わればそれは本人である」=「魂を入れ替える」という認知をしている恐怖が襲ってくることです。
余計に司朗さんへのおぞましさ、サイコパスである恐怖を覚えます。
そして花自身もこれをすんなりと本人と認めている辺り、血筋を感じます。
作中で説明はありませんでしたが、花本人が自分自身を攻めトラウマとなっているはずなのにたった5年で忘れている、ルナが死亡したことを認知していない、父親へのプレゼント刺繍の存在を忘れていたこと等、明かされていない伏線も残されています。
明らかに花の記憶にも司朗さんが介入している、もしくは花すらも本人であるか疑わしい演出です。
深読みを出来る余地を残しつつ、司朗さんへの感情移入を可能とし「正義と悪」についても考えさせられる演出、深層心理の人格と魂の解釈など、個人的には邦ミステリー史に残る名作かと思います。
陳腐な解釈ばかりされる現代では本当に勿体ない作品でした。