「「哀愁しんでれら」枠と身構えていたら、アリ・アスター、ジョーダン・ピール枠だった!!」この子は邪悪 わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)
「哀愁しんでれら」枠と身構えていたら、アリ・アスター、ジョーダン・ピール枠だった!!
この映画むっちゃ面白いです!!!ただ敬意と絶賛の意を込めてあえて言わせて頂くと大嫌いです!!!!(笑)
「あのこは貴族」「わたしは最悪。」に名前が似てるなーと思って知った作品。とはいえ公開の経緯と予告の雰囲気から「哀愁しんでれら」級の作品が来るか…と身構えていったら、ネタバレではないと思うのですが、これ「ヘレディタリー/継承」「ミッドサマー」のアリ・アスター監督がやってきたことにかなり近いなあと思って、とにかく身震いしましたよ。
ファーストカットからずっと不穏なんですけど。音楽のメリハリがしっかり効いているし、演出の引きと寄りも洗練されている。ええここでピアノ…ここでクラシック…ここで重ねてくる!?!?っていう驚きを楽しめます。ずっと不穏。
小道具も自分が気付いてないところがたくさんあるんだろうなーと思わされる仕掛けがたくさん。たとえば、妹のお面に何故か一つうさぎの形をしたものがある…これそういうことですよね…不穏!!
ホラーシーンは分かりやすくベロベロバーしてくれたので、耐性のない自分でも身構えることができました。
南沙良ちゃんは、やっぱこういうどこかしら影がある儚げな役が非常に合っている。大西流星さんもよく頑張ってましたよ。初単独映画出演とは思えません。
とはいえ、この映画のMVPは玉木宏の胡散臭さになるわけなんですが…(笑)
まだサブスク配信されてないのでしっかりと聴き直すことができないのですが、主題歌のゲスの極み乙女「悪夢のおまけ」の歌詞を否応なしに反芻したくなる。しびれる余韻を残すラストカットと主題歌。
とにもかくにもネタバレをできるだけ踏まず観に行ってほしいタイプの映画ですね!!
ネタバレというかちょっと踏み込んだことを書くと、これ「疑似家族」ものと分かった時の恐ろしさなんですよね。何が正義なのかわからなくなる。
ここまで胡散臭い退行催眠ってあるのかなあと思ったりもするのですが、児童虐待や家族を守るという本人の中では善が先行しているキャラクターを上手く玉木宏は演じきってると思います。催眠ってある意味では洗脳だけど、そこで救われている人も実際にいるもので。宗教もそうですけど。
気になるところは、オープニングカットになぜプールを選んだのかとか、玉木宏演じる父親はあの足の状態で車を運転して大丈夫なのかとか、お友達になる関係の南沙良側の動機づけが弱いかなとか、妊娠したタイミング(最終的に父親が入り込んだのだろうという解釈は済んでいる)的には前の旦那との子なのか?とか。占いで男って分かってるところから考えると…とか思ったり。伏線のための伏線になってない。
ウサギの使い方は、ある意味ジョーダン・ピールの「アス」に近かったですね。
いやーあの家族で幸せになれるわけないだろーと思いながら…見せるところは見せて見せすぎない塩梅もこの監督はよく分かってるなと思いました。