「原作に対する冒涜」君は放課後インソムニア ムメタルトさんの映画レビュー(感想・評価)
原作に対する冒涜
私は原作の大ファンで連載当初からずっとこの漫画を愛読しています。独特な世界観の原作は傑作だと思っています。現在、単行本は13巻まで出ていてまだ完結はしていません。
そんな原作をどう映画化するのか期待と不安が半々の状態で鑑賞しました。で、結論から言うと駄作です。どうしようもないです。
単行本で言うと6巻辺りまでを映画化してますが、わずか120分に6巻分の内容を落とし込めるわけがありません。結果的にポンポンと話が飛び内容が薄く散漫になっています。
臨海学校、花火大会など重要なシーンが軒並みカットされてしまい原作ファンとしては残念。それでいてどうでもいいようなシーンに時間を割いたりするのも理解出来ない。またキスシーンも何故かカットされています。森サイドからNGでも出たのでしょうか?
そして何よりも残念なのはクライマックスの真脇遺跡のシーン。満天の星空の下での告白シーンは原作でも屈指の名シーンですが、映画では何故か白昼に告白。それも唐突に。感動もへったくれもありません。また何故かこの真脇遺跡のシーンは星空が合成。極めて安っぽいシーンになっています。
総括すると、この映画はタイトルの通り原作に対する冒涜です。少なくとも映画製作者に原作に対するリスペクトは感じられません。そもそもまだ完結していない漫画を映画化する時点で無理があったのではないでしょうか。
原作ファンは不満だし、原作を読んでない人はおそらく説明不足と話のテンポが早すぎて意味不明になると思います。大好きな漫画だけに本当に残念。
ちなみに私が鑑賞時、映画館はガラガラ。鼻をすする音など全く聞かれませんでした。それどころか終了時にはしらけきった空気が館内を包んでいました。
最後にもう一度言います。傑作漫画をこんな風に映画化されて本当に残念だ!
おそらくアニメとの相乗効果を狙ってこの時期の公開となったのでしょうが完全に裏目に出ましたね。アニメが原作にほぼ忠実に作られているのでかえって実写の粗さが目立ちます。アニメでオミットされているのは同じ病院にいた子の元を伊咲が訪れるところくらいでしょうか。逆に映画ではこのシーンが唐突に入る感じがして興ざめになってると思います。私も完結していない漫画を実写化する意味はあるのだろうかと思います。少し前の作品になりますが「3月のライオン」がまさにそれでした。あれは前後編に分けて公開されましたが、やはり肝心なところは省かれた原作とは似ても似つかない散散な内容でした。私は公開初日に初回上映で見ましたが館内には5人くらいしかいませんでした。平日とはいえこれはどうなのか、と思いました。おそらく短い期間で上映終了になるのではないか、と思います。