劇場公開日 2023年6月23日

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「高校生男女の恋と成長譚」君は放課後インソムニア おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5高校生男女の恋と成長譚

2023年6月24日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

萌える

原作未読ですが、たまたまテレビアニメでその魅力に触れ、実写化と主演の二人に興味を惹かれて鑑賞してきました。青春のきらめき、恋の甘酸っぱさ、生きる喜びを感じる、なかなかよい作品でした。

ストーリーは、不眠症に悩み、誰にも打ち明けられずにいた高校生の中見丸太と曲伊咲が、校内にある使われていない天文台で偶然出会い、互いに同じ悩みをもつことを知り、二人にとっての安息の地である天文台を守るため、天文部を発足して活動する中で、二人の距離がしだいに縮まっていくというもの。

不眠症の経験がないのでわかりませんが、中見のそれは深刻です。来る日も来る日も眠れず、毎朝絶望を味わいながら学校に向かいます。それを相談できる相手もなく、逆に昼間襲ってくる強烈な眠気のせいで不機嫌そうな態度に見られ、友達から距離を置かれてしまいます。そんな孤独な悩みだからこそ、それを共有できる相手の存在が本当に大きく、中見にとっての曲は、初めて心を許せる特別な存在だったのだと思います。曲にとっても中見は、穏やかに心が落ち着ける特別な存在だったのだと思います。二人の不眠症は、眠っている間に何かを失う恐怖に根ざしているようですが、二人でいれば安心して眠ることができます。それは、互いが相手に安心感を与えていることに他なりません。隣にいる相手の温もりや心臓の音を感じ、安らぎや生きている実感を得ていたのかもしれません。

そんな二人が、悩みを共有できる同志のような関係から、しだいに互いを異性として意識し始め、距離が縮まっていくのは自然なことのように思います。舞台となる石川県七尾市の自然とあいまって、ほのぼのと描かれている感じがとてもいいです。そこに、それぞれの成長譚としての要素も盛り込んでいることが、本作の後味をさらによいものにしています。毎朝、一人絶望を味わっていた中見が、周囲に心を開き、曲と手を取り、仲間に支えられて、やりたいことに溢れた今日へ明るく力強く踏み出す姿が、本当に眩しかったです。曲も、中見の胸に飛び込んでいくことで、死に襲われる恐怖より、誰かの心の中でずっと生き続けることの喜びや安寧を得られるようになったのだと思います。

ただ、尺の関係でしかたないし、そこまで性急だったとは思いませんが、できれば夜空の星のようにもっとゆっくり二人の関係の変化を描いてほしかったです。あと、真脇遺跡のシーンでのメルヘンチックな演出はちょっと興醒めでした。それと、曲の姉!妹のことを理解しているようだったのに、やらかしたままフェードアウトはないんじゃないかなと思いました。

とはいえ、全体的にはすっきりとまとまっていてよかったです。なんだか私も星景写真を撮りたくなりましたし、ロケ地巡りをしたくなりました。8月に金沢出張があるので、時間をやりくりして行ってみたいですね。

主演は森七菜さんと奥平大兼くんで、このキャスティングが絶妙です。まるでアニメから抜け出したような二人が、作品の雰囲気をみごとに作り上げています。脇を固めるのは、桜井ユキさん、萩原みのりさん、MEGUMIさん、萩原聖人さん、でんでんさん、田畑智子さんら。中でも、でんでんさんが、わずかな出番ながらも印象的でした。若手主演作品では、こういうベテランの下支えのおかげで作品の奥行きが増します。

おじゃる
ブレミンさんのコメント
2023年6月28日

コメントありがとうございます。わざわざこのタイミングで映画にしなくても…というのがどうしても引っかかってしまいましたね。とても純で真っ直ぐな恋愛劇なのでもっと丁寧に描いて欲しかったですね。

ブレミン
おじゃるさんのコメント
2023年6月26日

iwaozさん、共感&コメントありがとうございます。レビューを上げておられないようなので、こちらに返信いたします。
本当に主役の二人をはじめ、若手俳優陣がキラキラしてて、素敵な青春ドラマを堪能できました。レビューでは触れませんでしたが、私も安斉星来さんの凛とした感じに目を引かれました。

おじゃる
iwaozさんのコメント
2023年6月25日

なるほど!しかしその点以外はほぼ問題ないとしたら、かなりの良作であったと言えるようですよね。^ ^
ほんま恥ずかしいぐらい純な青春ドラマで清々しかったですね。
お姉ちゃんの工藤遥も良かったし、同級生3人組女子も良かった。特にスポーツ女子の安斉さんも存在感があって、今後に期待です。
主役の二人は超ハマり役でしたね。
二人とも今までで1番良かった気がします。ブラボー!監督に感謝!

iwaoz