「POST SNS、と言うか、Anti SNS、って言うか。」カモン カモン bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
POST SNS、と言うか、Anti SNS、って言うか。
ウッディ・ノーマン君、すご過ぎです。えぇぇ?君は何者?って問い詰めたくなるくらいの名優です。イヤ、マジで、アカデミー賞の助演男優賞をあげたくなるくらいの芝居ですもん。と、まずは、ほとんどの方が、この少年の演技に息をのむんじゃないかと思うのと。ホアキン・フェニックスのお腹が、元に戻ってるw
これは期待通りの文学作品でした。もしかして、またネトフリ?って思ったら、違ってたw
◆移民の子供たちへのインタビュー。
誤解を恐れずに言うならば、それは、満たされない境遇にあるであろう子供たちの目に映る世界が、シンプルな言葉と、物怖じしない表現によって陰影をつけられたレリーフ(版画)の様なもの。モノクロームの映像は、最低限度の情報=言葉だけしか与えません。
◆各章に与えられたタイトル。
AND BUT でも、AND SOでも無い。起承転結のあるDoramatic Structureな物語りでは無いのだと言う、製作者の意思表示。
◆非日常を印象づける家族の不穏
決して仲が良いとは思えないインテリ兄妹。おそらく社会的なヒエラルキーは、妹が勝ると思われ。妹の夫は精神を病み。甥っ子の耳年増はインテリジェンスな言葉を無邪気に吐き出させる。このちょっと変わった・珍しい・身近にはいなさそうな家族・親族の設定で、特殊性を印象付けます。
◆広大なアメリカ大陸の季節感
凍える都会。温暖な南部。広大なアメリカを意識させる冬と夏の同居。このアメリカの季節感は、NYのストリートの風景や子供たちのインタビューにも見られる、人種の多様化ともつながっている様に見え。
◆孤独と繋がり。拒否と求める心。YESとNO。NOとYES。
繰り返される対比は、哲学者の様に言葉を発する少年と、自我を持たないかの如く描かれる男の絶叫の後、C'monの繰り返しで締められます。大丈夫。私は大丈夫。君は大丈夫。大丈夫、大丈夫。
と言うだけのモノクロ108分。最近、モノクロ映画が多い気がするのは気のせいですか?目的は違うんでしょうけど。この、情報量を削ぎ落とすためのモノクロ表現は好きです。情報で溢れ返っているSNS社会。昨今、POST SNSが始まっている!的な流れを感じたりするんですが。ドライブマイカーしかり。ありゃモノクロじゃないけど。
情報量が少ない物語の流れと、登場人物が交わす言葉をじっくりと噛みしめる、思考時間を与えてくれる映画。
良かった。とっても。