私はヴァレンティナのレビュー・感想・評価
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ラスト5分で踏み締める一歩がとても力強い
世界中でLGBTQの権利保障をテーマにした映画が生まれる昨今。ブラジルから届いた本作は、一人の少女が家族と親友に支えられながら、いかにアイデンティティを確立していくのかを丁寧に描いた作品である。冒頭から何気ない描写を通じて、彼女の置かれた状況が提示されていく。すなわち、すでに親は子のジェンダーについて深く理解しており、彼女がありのままで生きられるよう最善を尽くしたいと願っている。それからブラジルではLGBTQの権利が保証されているという。ならば彼女は胸を張ってヴァレンティナという名前を主張して良いはず。しかし現実的には様々な経緯があって親子は小さな街へと移住せざるをえず、学校でも「権利は保障されています。でも反対する人たちがいるのを忘れないで」と釘を刺されたりも。何がこの状況に突破口を開くのか。小さな、しかしたくましい一歩が、ラスト5分で鮮明に刻まれていて、非常に引き込まれるものがあった。
ブラジルのそのまんま・・・なのでしょうね。
ブラジルはジェンダー関連の法の整備は先進的だがLGBTQの市民レベルの理解は追いついていないそうで、トランスジェンダーの82%が中途退学そして70%だったかな?は35歳までに亡くなるのだそうです。亡くなられる理由は自死の割合も多いのでは?と思えてしまうほど、本作で描かれるトランスジェンダーの「生きにくさ」は半端ないです。
主演の方は演技未経験と思えないリアリティある演技でした。インタビュー記事を後で読んだら自身がトランスジェンダーで現実と重なる部分が多かったからだそうですね。いやそれにしても、彼女を見続けるのが辛くなるほどの演技であり物語でした。きっと母親への気持ちとか仲間への親愛の感情などはすごく重なるんでしょうね(ご本人の実母はお亡くなりになっているそうですが)
なぜこれほど寛容になれないのかなぁ?同じ人間なのに。宗教的な理由もあるのかなぁ?とすら思ってしまうほどに彼女に向けられる感情は「嫌悪」なんですよね。差別というよりも憎しみにも似た感情をぶつける世間。本当に何がそんなに許せないのか?が僕自身もわからないです。でも、それがブラジルって国なんでしょうね(地域差はあるにせよ)もちろん、日本を含めて至る所にあるんでしょうね、僕自身が知らないだけで。
でもね、そんな世界を作っている方々は気づくべきなんですよ。自分の知っている範囲や世界を頑なに守り、その中だけで力を誇示することの滑稽さを。自分の知っている世界でしか生きられない弱さは客観的にすごく格好悪いってことを。
大事なことは「男らしさ」「女らしさ」ではなく「自分らしく生きる」ってこととそれが叶う「環境をつくる」ってことなんだと思うんですよね。
ラストの彼女の表情はきっと「願い」なんだろうな。
とても見るのが辛いですが、多くの方に見ていただきた作品です。
難しい問題ですね…
アメリカに接しているメキシコでも、LGBTについてはこんなもんなんだ…。島国の日本なんてもっと凄いと思う。人間誰しも歳をとると、新しい価値観を受け入れ難くなる。全て受け入れることはないが、受け入れていくことに前向きになれた気がした作品でした‼️
ラストシーンが素晴らしい
ラストのヴァレンティナに号泣。
やっとのことで勝ち取ったその名前を呼ばれた瞬間はまだ少し戸惑いがある表情。しかし返事をした瞬間から込み上げてくる喜びの表情に、こちらも感情が抑えられなくて泣いてしまう。複雑な感情のなかに確かな喜びが溢れてくる、表情の演技が素晴らしい。
これほど揺さぶられるシーンはなかなかない。
考えてみれば、ヴァレンティナという名前で学校に通いたい、というたったそれだけの希望を叶えるのにこんなにも多くの困難が立ちはだかるのか。
生徒や若い世代の先生たちの偏見のない姿勢に希望を感じた。
学校に通いたい、そんなことも許されないブラジル内陸部の陰湿な閉塞感がリアルな青春譚
エンドロールで語られるトランスジェンダー達が囚われている現実にゲンナリしますが、映画で描かれるのは個性豊かな普通の高校生達の物語。同じような町で長年暮らしていた身としてはそこにあるシャビーな街並みや閉塞感がリアルで激しい郷愁に駆られました。
ジェンダーレスになったとは言え…
まだまだ偏見に差別は存在するんだな、と。そんな中で必死に生きる姿は厳しすぎる。まだ未成年なのに抱える悩みが重すぎる…。描かれる展開が大袈裟でなく抑えた内容が更にささる。希望を持てるラストは救いか…。
油断大敵
引っ越しだ田舎の町で通り名の「ヴァレンティナ」として生活し学校に通うことを望む17歳のトランスジェンダーの少女の話。
両親は別居し父親は行方不明。性別と名前の変更届を役所には出しておらず、通り名で入学手続きをするには両親のサインが必要という状況下、外部からの聴講という形で学校の補習授業に参加して友人が出来てと展開していくストーリー。
どんなに仲良くなったって、全てを曝け出す必要はないし、可能であれば立ち向かわず逃げ続けたって構わないと思う。
そもそもがそういう強さがあったなら、この町に来る必要だってなかった訳だし。
それでも最終的には自分の道は自分で決めなければならない訳で、周りの人間との関係や環境はとても大切ですね。
そんなことを強く感じさせてくれる物語で、最後は胸が熱くなった。
LGBTQ+の生きづらさと未来への希望の物語!
試写会にて鑑賞
トランス女性の少女の物語。
LGBTQ+の生きづらさと切なさとこれからの未来への希望を込めたストーリーでした。
社会派映画なのはもちろん、恋愛、友情、家族…色んな側面から楽しめる映画です!
生きづらさと切なさだけの映画ではなくヴァレンティも友人達もとってもキュートで可愛い映画でした💕
全ての人が自分の気持ちに正直に生きられる世界はきっともうすぐと信じて🏳️🌈🕊
ブラジルのトランスジェンダー
ブラジルの映画も初めて観るし、ブラジルのトランスジェンダーの映画も初めてだったので、全てが新鮮だった。
ブラジルでトランスジェンダーとして生きるという事がこんなに大変だとは全く知らなかった。
主演女優もトランスジェンダーとの事でリアリティーと説得力があった。
差別的な大人も居れば理解してくれる家族や友人もいる。
生きづらい中にも希望がある内容で良かった。
性的マイノリティの人々が自分らしく生きやすい世界になる事を祈る。
危うさを凌駕する希望
トランスジェンダーの少女ヴァレンティナが、シンプルな学校生活を送りたいという願望が実現する事の難しさ。LGBTQがテーマの映画は数限りなくあるが、本作ではヴァレンティナ役を本当のトランスジェンダーが演じ、監督もプロデューサーもLGBTQというのがポイント。また、ヴァレンティナに災いをもたらす男子高生役の俳優もトランスジェンダーで、元々は脚本執筆のリサーチャーとして参加していたというのも見逃せない。従って、俗に言うマイノリティに降りかかる社会問題にリアリティがある。
とにかくヴァレンティナに待ち受けるトラブルの連鎖がいたたまれない。ただ、失意の底にいた彼女を支えるのが同年代のゲイ男子やシングルマザーという同じマイノリティ、そして実の母親。特に母親の強い愛に救われる。
同性婚が認められているとはいえ、ブラジルのトランスジェンダーの中途退学率が82%。そして平均寿命が35歳という低さ。ラストに至るまでの展開も、問題が完全に解決しきれていない危うさを残しているのは、そうした現実を反映しているのかも。
それでも支えてくれる親や友人も少なくないからこそ、生きていく希望となる。
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