劇場公開日 2022年12月16日

「人間としての器量」ケイコ 目を澄ませて ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0人間としての器量

2023年3月16日
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鑑賞方法:映画館

昭和の面影が色濃く残るボクシングジム。
会長は、ケイコについてこう語る。
「彼女には人間としての器量があるんですよ。素直で率直で。凄くいい子なんですよ」
才能とか素質はないと言う。
器量という言葉の意味に従えば、ボクシングにふさわしい能力や人徳があるということか。

耳が聞こえないというハンディ。それを克服して不屈のボクサーになったという話ではない。
さして強くもならないしさして弱くもならない。
勝った負けたではなく、楽しい苦しいではなく、笑いも涙もない。
素直で率直なケイコ、会長、トレーナーの三者の信頼関係を、カメラはただひたすら追う。
居場所を与え合う、彼らの心の鼓動だけが、ずっと波打っている。

「私映画が好きなんです。まだ上映されてるのでぜひ観てください」
ケイコ(岸井ゆきの)は、日本アカデミー賞の授賞式で、のらりくらり語った。
そこに、素直で率直なケイコの意気地がよぎった。

ジョー