「ロックダウン下で錯綜するドラマを短い尺でタイトに活写した野心作」ソングバード よねさんの映画レビュー(感想・評価)
ロックダウン下で錯綜するドラマを短い尺でタイトに活写した野心作
2024年のLA。致死率が56%を超えたCOVID-23が蔓延、ウィルスに免疫を持ちIDパスを持つ者以外は外出を禁じられ街は荒廃していた。毎日の検温が義務付けられ、発熱が発覚すると問答無用でQゾーンと呼ばれる隔離地域に強制収容されてしまう。免疫者で配送ライダーのニコには祖母リタと二人暮らしのサラという恋人がいるがドアホン越しにしか会うことが出来ずいつか二人で旅をすることを夢見ていた。そんなある日リタが発熱、サラともどもQゾーンに収容される危険が迫っていることを知ったニコはサラを救うべく奔走する。
コロナ禍だからこそ出来た映画というと、『ズーム/見えない参加者』、『ザ・バブル』、『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』、『哭悲 THE SADNESS』辺りがすぐに連想されますが、本作もその系列でロックダウンで人影が消えた街をディストピアに見立てた低予算作品。マイケル・ベイ製作総指揮という売りですが派手さは微塵もなく、リタのために奔走するドラマを軸に免疫不全の娘がいる富豪夫婦が手を染めた闇商売、モーテルの一室で弾き語りを配信している歌手志望の女の子と彼女を応援する元軍人といったサイドストーリーが並走する凝った構成を84分というタイトな尺に纏め切った結構な力作。主演陣は無名ですが、脇を固めているのがデミ・ムーア、ピーター・ストーメアといったベテランなのでどっしりとした安定感があります。個人的には歌手志望の女の子メイを演じているアレクサンドラ・ダダーリオに胸を掻きむしられました。
コメントする