「ピザを作る映画でも何でもないので要注意。とにかく理解難易度は高い…」リコリス・ピザ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
ピザを作る映画でも何でもないので要注意。とにかく理解難易度は高い…
今年194本目(合計470本目/今月(2022年7月度)6本目)。
他の方も触れられていますが、「リコリス・ピザ」というレコード店は実際に存在し、リコリス(ハーブの一種)を使った「リコリス菓子」がレコードを連想させるようなイメージであるため(およそ「グミ」のあたるようなお菓子だが、独特なにおいが日本では好まれない事情もあり、専門店などでないと見つからないです)、「リコリス・ピザ」それ自体が「レコード」または「レコード文化」をさすスラング用語で、ここから転じて「1970年代のアメリカのサブカルチャー」を意味するようになりました。
ただ、このことってジーニアス大英和のような大英和クラスでものってなく、英英辞典等を多数あさって何とか数点言及があるくらいです(参考:大阪市立中央図書館)。この点がわからないと「ピザがまったくでてこない」とか「入るシアター番号を間違えた?」とかという混乱が生じるのは仕方がないように思えます。
このような事情があることも理解した上で、「1970年代のアメリカの文化」をいろいろ入れているのですが、正直なところ、かなりこの点に詳しくないと実に多数の話をどんどんあれこれしてくるので(この点では、1月か2月だったかの「フレンチ・ディスパッチ」に近い)、最悪「理解のハマリ」が生じます。
・ (ストーリー序盤の)年の離れた男女がすきだの嫌いだの言う話
・ 市長選挙がどうこうという話
・ ゲームセンターにピンボールを置くことがどうこう(当時は禁止されていた模様)という話
…など、脈略もない話を突如あれこれしてくるので、正直なところ「リアル年齢でしぼりをかけている」状態で、10~20代の方では「みても意味が分からないのでは…」という印象です。
…というより、そもそも「日本で公開されることを想定していない」か、「想定されているとすれば、恐ろしいほどの超急ピッチで進んだ」のではないか(だから、日本では常識扱いされないこのタイトルが何を指すかも相当調べないとわからない)という印象です。
採点は下記のようにしています。
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(減点0.3) 上記に述べたように、結局のところこの映画は「アメリカでは」懐かしい1970年代の文化をなつかしむ映画、ということは言えても、日本ではまず「リコリス・ピザ」の指す意味が不明で、仮にわかっても、さらにいろいろ多分野の話を突如混ぜてくるので、とにかく理解難易度が恐ろしく高いです(大阪市には、こういう「理解難易度が高い」といえる、いわゆる「哲学系」の映画を扱う映画館がありますが(テアトル梅田)、趣旨内容的にそういうミニシアター向けに配給されるべきだったのでは…と思えます)。
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▼ (参考/映画内のセリフ) 「おいこら、ピンボールの台をそんなに揺らすな」
・ まず、日本ではゲームセンターでも「ピンボール」を見ることはかなり少なくなったように思えます(一方で、例えば大阪市にはピンボール専門店があったり、一部に偏って保存、公開されているような状況)。
ピンボールのゲームの性質上、ピンボールというゲームは無限に続けることはできません。フリッパーを動かす左右2つのボタン(レバー等)をいかにうまく使うか、という点程度に「普通のプレーの仕方」では、それ以上のテクニックは存在しえないし、ありません。
ただ、ピンボールはこのような「シンプルなゲーム」故に、球の位置を無理やり移動させたり、軌道を変えたりという「揺らし行為」が「初期のころ」はある程度公認されていた時代も確かにあります。これはこれで常識的な範囲では当時は合法でありゲームセンターも何も言わなかったのです。
とはいえ、これらの行為も度が過ぎると機器を壊してしまうし、ピンボールというゲームはゲームの性質上、扱うゲーム機器メーカーが極めて少なかったため、極端な揺らしで機械ごと壊すような行為はゲームセンターにとっても迷惑だったのです。
そのため、ピンボールの設置当時から、「ある程度の揺らしは許容するが」、「度を越えた揺らしは許さない」というルールができました(この「度を越した揺らし」のことを「ティルト」といい、(当時の技術の)角度センサー等でチェックがかかっていました)。この「ティルト」がとられるとボールを1つ失う(フリッパーが操作不能になる、という扱い)ほか、あまりにも極端な「ぶっ壊し行為」(これは当時「スラムティルト」と呼ばれた)は「全球没収、スコアにも残らない、ボーナスゲームがあればそれも没収」というように規制されていったのです。
※ 日本では、アメリカから輸入されたピンボールゲームがわずかに大阪市など限られたマニアックなゲームセンターで「今動く範囲でだけ」展示されプレーできるのであり、日本においてもはそもそも「修理先すら存在しない」ため、ティルトどころか「常識的に許される揺らし」すらできないように、物理的に台を固定していることが多いです(なので、本来のピンボールとはゲーム性が若干異なる)。