「青春の蹉跌」たぶん悪魔が 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
青春の蹉跌
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冒頭にある青年の死が報じられ、そこから遡って死へのカウントダウンを追っていく「市民ケーン」風の構造。ロベール・ブレッソンの映画ではおなじみの、無表情な登場人物たちが抑揚のない台詞を語る。ブレッソンやジャン=ピエール・メルヴィルに親しんでしまうと、普通の映画の口跡が白々しく感じるという副作用が生じる。
環境汚染や核などの社会問題についての言及が、ブレッソンにしては珍しい。黒澤明の「生きものの記録」では核の恐怖に耐えられなくなった主人公が狂気へと逃避するが、この映画の青年が破滅に導かれたのも同様の絶望なのだろうか。
青年たちの属性や人間関係が説明されないまま進行するので、置いてきぼりにされたような気分になる。ブレッソンは「創造とは付加よりもむしろ削除である」と言っているように、必要最小限しか描写しない。この唯一無二の高踏的な作風は、遺作「ラルジャン」で完璧に結実する。
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