天上の花のレビュー・感想・評価
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文学者の戦争協力と女性の暴力への抵抗
三好達治氏の詩は、学校の国語教科書でみたくらいで、作者本人の生き様は全く知らなかった。いくつか知っている詩が出てきて親しみ易かった。萩原朔太郎氏や佐藤春夫氏との交友関係が出てきて、女性との愛憎関係に進んでいく。文学者の戦争協力問題にも踏み込んでいた。三好氏の慶子氏へのモラハラや経済的、身体的暴力がエスカレートしていき、恃みにした友人夫婦からも窘められるのは心痛かったが、それでも慶子氏はめげず、三好氏にとって不利な条件を勝ち取っていた。
終了後のプロデューサーの寺脇研氏による舞台挨拶で、ロケ地の説明と、暴力場面が実際には当たっていないこと、戦争責任の問題を描きたかったことを述べられ、質疑応答の時間があったので、盲人役の杖の突き方と"SUNTORY WHISKY"のラベルの時代考証と玉音放送の中身の省略について尋ね、概ね納得できる回答を得ることができて満足した。
昭和初期の東京・馬込。 詩壇で評価の高い萩原朔太郎(吹越満)に師事...
昭和初期の東京・馬込。
詩壇で評価の高い萩原朔太郎(吹越満)に師事する詩人・三好達治(東出昌大)は、朔太郎の末妹・慶子(入山法子)を初対面で見初めてしまった。
すでこのとき離婚歴2回の慶子。
金満家の萩原家では貧乏書生の達治との結婚は許されず、結果、慶子は売れっ子詩人と再婚。
が、太平洋戦争突入後、慶子の夫は頓死し、越前三国で暮らす達治は念願叶って慶子と結婚し暮らすことになるのだが・・・
といったところからはじまる物語で、「天上の花」ならば美しい話かと思っていたが、そんなことはなく、とにかくヒドイ話である。
東出演じる三好達治は、叙情派詩人として知られており、詳細は知らなかったけれども、名前だけは知っていました。
が、ええええ、な人。
とにかく、ヒドイ。
DV夫である。
が、まぁ、当時は、そんなものかしらん、とも思えるように書いている脚本が上手い。
達治にすれば、慶子は「見初めた」わけで、初見で惚れたわけです。
まぁ、見た目だけです。
綺麗なので、惚れた。
なので、内面なんてわかりゃしない。
朔太郎は「あれは、さもしい女です」と結婚前の達治に忠告するけれど、そんなことを聞く耳は持たない。
結婚すると、くちゃくちゃと音を立てて飯は食うは、無防備な寝顔は涎(よだれ)は垂らすはで、きれいでないことはこの上ない。
その上、金満家のお嬢様そだちなので、炊事をはじめ家事はおざなり。
まぁ、昭和の男児たる三好達治にとっては、あれま、ありゃりゃ、なんじゃこりゃ、なわけです。
が、達治も現代の視点でみればダメダメで、「妻は、こうあるべき」「美しいひとは、こうあるべき」から逃れられない。
「こうあるべき」から外れた慶子には、鉄槌(ってゲンコツです)をくだす。
うーむ、時代が時代なのだから、こうなのだよねぇ、と思うしかない。
で、「時代が時代」というだけで括らないのが脚本の上手さで、ただの男尊女卑ではなく、太平洋戦争へ突入していく時代と重ね合わせ、時代の閉塞感を描いているあたりに関心します。
東出昌大は鬼気迫る演技ですが、それ以上に入山法子の受けの演技が上手いと思いました。
鬼気迫る男女、危機迫る時期の男女、それが普遍性を持つあたり、秀逸な作品だと評価します。
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