「めっちゃ複雑。でも、めっちゃ格好良い!」オペレーション・ミンスミート ナチを欺いた死体 きのこさんの映画レビュー(感想・評価)
めっちゃ複雑。でも、めっちゃ格好良い!
「機密文書を持たせた死体を流して、ナチスを騙す作戦」の映画。
なんて、ぶっ飛んだ作戦なんや!
007とまでは行かなくても、それなりにドキドキワクワクできる映画なんだろな。
と思って、映画館に行きましたが、観ても観ても派手なシーンは無く、粛々と仕事をこなす登場人物達と、その人間模様が描かれた映画でした。
期待してたのと違ったけど、面白かった!
とにかく、面白かった!
映画は、ユーエン・モンタギュー少佐(コリン・ファース)が、妻子をアメリカに送り出す為のパーティから始まります。
ユーエンは、元弁護士の英国諜報部員(MI5)ですが、仕事に没頭するあまり、妻との間には深い溝か生まれ、旅立つ妻とは二度と会えないかもしれないと考えています。
また、ミンスミート作戦を共に遂行する、チャールズ・チャムリー大尉(マシュー・マクファディン)は、戦死して英雄と称えられている兄を持ち、兄の死から立ち直れないでいる母親と同居しています。
そして、機密文書を持って流される死体の偽のプロフィールとして創作された人物、ウィリアム・マーティン少佐の創作上の恋人として作戦に関わることとなったジーン(ケリー・マクドナルド)。
ジーンはユーエンに惹かれ、チャールズはジーンに惹かれており、チャールズは上司のジョン・ゴドフリー(007のMのモデル!演じるのはジェイソン・アイザックス)から、ユーエンの弟は共産主義者で、ソ連のスパイかもしれないからユーエンを監視しろという指令を受けています。
既に人間関係が複雑です…。
さらに、引き取り手の無い適切な死体を見つけて来て、ウィリアム・マーティン少佐の偽のプロフィールを創作して、偽の機密文書と偽のラブレターを持たせて海に流して、その偽情報をヒットラーまで伝えてナチス軍を撹乱させなければならないという作戦が、観る前に想像してたよりめちゃくちゃ複雑…。
想像以上に複雑でしたが、007ネタでクスッと笑わせてくれたり、ロングコートを来て、作戦について話しながらロンドンの街を歩くコリン・ファースとマシュー・マクファディンの格好良さだったり、派手では無いけれどストーリー以外の場面も良くて、観てる者を飽きさせない程よいバランスが素晴らしかったです。
また、死体流すという突拍子も無い作戦ながら、全線で戦っている兵士達の犠牲を少しでも減らして、ナチスに打撃を与えなければならないという、正義感は全ての登場人物達に共通で、「前線で大砲打ったりしてるだけが戦争じゃない。自分達は自分達の戦い方で敵を倒すんだ。」という、静かだけど熱い情熱を持って仕事をする彼らの諜報部員魂(?)みたいなのには、格好良い…と思わずにはいられませんでした。
ストーリーは複雑で、しかも淡々と進みますが、それが諜報戦争をリアルに見せ、彼らの静かな闘志をより浮き彫りにして見せることに繋がっていると思いました。
全てが終わった後の場面、多くを語らず最後もやっぱり静かに映画は終わります。
諜報員は多くを語る必要は無いんです。
当時、表には出てないであろう、イギリス本国からナチスと戦った影の存在達の格好良さを知れる良い映画でした。
何度も言いますが、確かに複雑なストーリーなので、映画館など映画に没頭できる環境でじっくり観ることをオススメする映画です。