生きる LIVINGのレビュー・感想・評価
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死にゆくじいさん
背筋が伸びる
質感が懐かしい
自分にはとてもよかったです。
現役を退いて、しみじみほのぼの観るには
ピタリとハマりました。
ビル•ナイさん、とてもいいです。
とても無理だけど、できることならああなりたいです。
顔立ちが綺麗だし、背も高いので絵になります。
時系列に進まない展開もよかったです。
オリジナル版は観ていません。
画面の質感やロゴが1960年代くらいの映画を観ているようで
とても懐かしい、柔らかい感じでよかったです。
全体的に落ち着いたトーンで
その中の光がとても暖かく感じます。
眺めているだけで心地よいです。
主人公の市民課に配属された新人のピーター役の俳優さんが
若い頃のジェームズスチュワートさんに似ているんです。
主人公が劇中で観る映画がケイリーグラントさんの映画だという設定
とかもいいですね。
エンパイアオブライトもそうですが、
昔を懐かしむ作品が最近続いてとても嬉しいです。
可能ならば、若い世代の方にも観ていただきたいですが
還暦過ぎた世代の方には特にお勧めしたい作品です。
自分の母が
オリジナル版の生きるを観ているので
ネタバレなしで、
聞いてから行ったのですが
あ〜、そういうことね。
というエンディングでした。
お気に入りの1作になりました。
チコちゃんに叱られちゃった英国紳士
静かで熱く無駄のない脚本。陰影の効いた渋い映像。
原作の展開におおむね忠実に、しかし丁寧に刷新がなされた一作
イギリス上流階級のドラマからファンタジーまで、ジャンル横断的に優れた作品を発表し続けるカズオ・イシグロが脚本を担当したことが注目ポイントの一つとなっている本作。中盤の大胆な場面転換を含め、原作である黒澤明監督作品『生きる』(1952)の物語構造に基本的には忠実な造りとなっています。それこそ場面によっては、アングルまでそっくり。
一方、役所の形式主義に不満を募らせている若い男女(エイミー・ルー・ウッド、アレックス・シャープ)の存在感が増しているところが、本作の大きな変更点となっています。彼らのおかげで、観客が物語に違和感なく溶け込むことができ、また主人公ウィリアムズ(ビル・ナイ)の心の動きを捉えやすくなっています。
また上映時間は原作よりかなり短くなっていますが、これは原作が粘っこく描写した社会風刺の場面を縮めたことが大きいようです。このように本作は、原作の要点を的確に抽出しつつ、見事にロンドンに生きる人々の物語として移し変えることができています(作中のある設定のため、時間軸はほぼ原作と同じ)。むしろ原作の、執拗な社会批判描写や主人公の時に過剰とも思えるような感情表現といった、黒澤明作品の特徴でもある、アクの強さはやや薄らいでいます。特に映像面では、人やモノが凝集する密度の高い画面ではなく、余白の余韻や陰影を活かした描写となっていて、同じ日本映画としては、黒澤明よりもむしろ小津安二郎あたりを連想させるところも興味深いです。
本作に感銘を受けた方には、機会があればぜひ原作の『生きる』の鑑賞をおすすめします。名作人間ドラマ、という印象を良い意味で裏切るような大胆な物語展開などに、古さよりもむしろ新鮮さを感じると思います(ナレーションが最高)。
人生の目的は?
私たちは、何を目的に生きているのだろう?毎日の忙しさ・ルーティンワークの中に忙殺され、考えることを放棄してしまってはいないだろうか?
奇しくも主人公は、癌にかかり余命宣告をされることで、自分の人生の目的と向き合うことになる。かのスティーブ・ジョブズも癌の宣告を受け、あのスタンフォード大学での有名なスピーチをしたことでも知られる。”Stay hungry, stay foolish”
ゴールが見えることで、今の命の輝きを増すことが出来た主人公。ともすれば、人生は交通事故、突然の病気などで急に終わりを迎える人も少なくない。そういった意味では、幸せな人生だったのではないか。
そんな事を考えていたら、ふと加藤周一先生の次の文章が、思い出されてきた。今でも、私の中でたえず繰り返し、反芻している言葉である。この文章の全文は短いので是非たくさんの人に読んでほしい文章である。
「文学がなぜ必要かといえば、人生または社会の目的を定義するためです。文学は目的を決めるのに役立つというよりも、文学によって目的を決めるのです。そしてその目的を達成するための手段は技術が提供する。
『文学の仕事』-加藤周一『私にとっての二〇世紀』より」
どのように生きるか
映画館にて鑑賞しました。リメイク元の黒澤明監督の「生きる」は未見です。
黒澤監督の「生きる」を見ていないため比較はできないですが、本作はとても見やすかったです。
主人公であるウィリアムズが自身のガンを初めて打ち明ける相手が、見知らぬ街の見知らぬ男というのはなんとなくリアルだな、と思いました。深刻な話だからこそ、身近な人に話しづらい、というのはなんだかよく分かります。打ち明けられたサザーランドはそんなウィリアムズと夜の街に繰り出すわけですが、吐血から戻ってくるウィリアムズを見た瞬間のサザーランドの表情もとても良かったです。この演技を含め、俳優さん達の演技がどれも素晴らしかったです。
余命をどう生きるかを悩むウィリアムズはマーガレットを映画に誘ったりしてマーガレットに寄りかかってしまう部分は、ウィリアムズが少し可愛くも見えました。寄りかかられる側はたまったもんじゃないですが苦笑。
なかなか息子夫婦に余命宣告について言い出せないウィリアズムと、奥さんの不満を父に言い出せないマイケルのシーンは2人は親子だなぁ、と感じさせられました。
時折リメイク元の映画を意識しているんだろうな、と思うカメラワークがあったりしました。(もし違っていたら恥ずかしいですが笑)
状況や心情の描写が丁寧に描かれているのに冗長になっていないですし、舞台設定が1950年代のイギリスなのにも関わらず違和感もほとんどなく、とても見やすかったです。普遍的な要素で作られているんだろうな、と感じました。
「ただ生きる」のではなく、「どのように生きるか」という意味を考えさせられる作品でした。黒澤監督の「生きる」も見たいと思います。
ソンビのような生き方から抜け出した男の物語
ストーリーはおなじみなので技術的な側面から
2022年に作られていながら、1950年代前半のロンドンのお話という設定のためか、いかにも1950年代に作られた古い映画のような色合いで作られているところが凄い。オープニングはおそらく当時のニュースフィルムを使っているのかもしれぬが、まったく切れ目なく自然に本編に入っていくのが斬新。ちょうど、NHKの「タローマン」が1970年代に放送されたという設定で映像化されているのと同じ手法だ。
主人公の課長は、70代後半に見えたが、1950年代のロンドンの定年っていったいいくつだったんだろうか。あんなに老けてはいないとは思うが。
素晴らしい作品。本家も観たくなりました
小役人から英国紳士へ
泣ける映画を1本を選べと言われたら黒澤明のこれを選ぶ。「いーのちみじぃかしぃ」とブランコに揺られながら口ずさむ志村喬の哀愁漂う姿を思い浮かべるだけで落涙できる自信がある。とは言え、レンタルのVHSで最後に観たのが30年ぐらい前だから展開やディテールはそれなりにうろ覚えだったのだが、今回の英国版リメイクを観て記憶が蘇りつつ、案外原作に沿った話運びをしているのだと思った。
舞台を1950年代の英国に置き替え、カズオ・イシグロが得意とするノスタルジックな雰囲気が映像や音効でしっかり表現されており、安心して観られた。まあ、日本人なんで当時のホントのロンドンはわからんのだけど…。
背中を丸めた志村喬の小役人・小市民風情は、ビル・ナイだとシュッとしすぎだろと想像していたが、実際元々しょぼい人物とは設定されていない印象。志村が夜遊び・女遊びとは無縁で退屈で無難なだけの人生を送ってきたのとは違い、ビル・ナイの場合は死期が迫っていなければ、こう見えて私も若い頃はねえとか、リスのような前歯でおちゃめ感あるよいキャラだった部下女子をマジに口説き出しそう。スコットランド民謡のナナカマドの木もゴンドラの唄に比べて曲調にハリがあり、ビル・ナイの背筋がより伸びそうである。
急にやる気出て公園作りに邁進しちゃう転換点が曖昧に思えたし、部下男子への手紙とかも立派すぎる気もしたのだが、それでも真っ当すぎる助言に今作でもつい落涙してしまった。
生き始めた人生に
モノクロの日々を淡々と生きる男が余命宣告をうけ、残りの人生のしっかり生きようとする物語。
無愛想で周囲からも煙たい目で見られ、この上ないお役所仕事な主人公ウィリアムズ。余命僅かと知り、仕事をサボって飲み呆けてみても心は埋まらず。。
そんな中、新しい職場で頑張る元部下と再会し、何かを感じた彼が選んだ生き方とは…
ウィリアムズの選択に心を打たれると共に、自分自身の生き方についても見直しさせられるドラマ作品。
自分自身が同じ立場だったら…
最後の努力をするどころか、開き直って遊び呆けたり、引きこもったり…多分それすら出来ずに淡々と出勤しちゃって終わりかな(苦笑)
それに加え、ただただキレイに描くだけではなく、言うなれば白々しさすら感じさせる程のリアルを描いている点がグッド。
誓いを立てよう!…って言ったってね、同僚の皆の姿…あれが現実ですよね。
そしてウィリアムズの言う通り、これは後世に永劫刻まれるモノでもないというのもまた現実でしょう。
それでもモノじゃなく、たった一人でもピーターのような人が出てくれたのなら…それこそが彼の残したものなんじゃないかな〜と思ったり。
またそれだけでなく、粉雪の舞うなか幸せそうにブランコに揺られる画や雰囲気の美しさも特筆モノ。
そんなこんなでも、明朝目が覚めればきっと嫌々出勤するであろうワタクシ…
まだ時間がある今だからこそ、チャンスを逃さず生きないといけませんね!
シンプルにも心を打たれる名作だった。
LIVING DEAD
美しい映画
生きる喜び、生きる醍醐味って意外と小さいことで得られるのかもしれない。そんな思いになった映画でした。
喜びは人によって違う。
刹那的な快楽で幸せを感じる人もいれば、
人のために役立ったというたったひとつの思い出だけで、それまでの人生が悔いだらけであっても満足できるのかもしれない。
夜の遊び方を教えてくれた見知らぬ彼も、生きることの意味を考えただろうし、
生き生きとした姿で魅了した彼女もまた、一人ひとりが生きる人生のあり方を学んだのでしょう。
また最後の同僚たちの姿も、またすごくリアル。
皆、一時自省をしながらも人生はそうやって続いていく。
見た私も、自分や自分の家族、大切な人が最後大切な思い出を胸にできればいいなと涙を流して思いつつ、きっとすぐに日常に戻っていくのだな、と思う。
刹那、素敵な、美しい映画でした。
満足して逝く事こそ望ましい死に様
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