生きる LIVINGのレビュー・感想・評価
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時代を超えて残っていく様な素晴らしい映画だった。この映画の原作が日本映画というのも誇らしい。大きく感動させられた
オリバー・ハーマナス 監督による2022年製作(103分)のイギリス映画。
原題:Living、配給:東宝
黒澤明監督作は、残念ながら未視聴。
物語の語り口がとても素晴らしくて、随分と感動してしまった。
この原作が、黒澤明 、橋本忍 、小国英雄共同脚本というのも、嬉しいところ。調べてみると、物語の半ばで公務員の主人公の葬式が登場し彼の情熱的な行動を思い出すという展開、更に彼の死後も役所的仕事は変わらなかったとのオチも、原作と同様であった様だ。
役所の市民課課長を演じたビル・ナイも、無気力で部下にゾンビと言われた無気力な姿と、余命を知ってからの他部署と粘り強く交渉する理想的公務員を演じ分けて、凄く良かった。
部下課員で転職したエイミー・ルー・ウッドも、初々しくて主人公が元気を貰う若い女性をナチュラルに演じていて、好感を覚えた。
妻に操縦されて冷たい対応も本質的には父親思いの長男の設定などは原作とは異なるらしく、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本も、心に染みた。そしてやはり最後、公園で雪の中、故郷の歌を唄いながらブランコを漕いでいたという主人公のエピソードと映像、それを公園で聞かされるのが市民課の新入りだったアレックス・シャープという構成が、志しの引き継ぎの希望も見えて、とても胸を打った。
時代を超えて残っていく様な素晴らしい映画だ。こういうリメイクなら大歓迎。黒澤作品も是非とも見てみたい。
監督オリバー・ハーマナス、製作スティーブン・ウーリー、 エリザベス・カールセン、製作総指揮ノーマン・メリー 、ピーター・ハンプデン、 ショーン・ウィーラン 、トーステン・シューマッハー、 エマ・バーコフスキー、 オリー・マッデン、 ダニエル・バトセック、 カズオ・イシグロ 、ニック・パウエル。原作黒澤明 、橋本忍 、小国英雄。脚本カズオ・イシグロ、撮影ジェイミー・D・ラムジー、美術ヘレン・スコット、衣装サンディ・パウエル、編集クリス・ワイアット、音楽エミリー・レビネイズ=ファルーシュ。
出演
ビル・ナイウィリアムズ、エイミー・ルー・ウッドマーガレット、アレックス・シャープピーター、トム・バークサザーランドトム・バーク。
心に澄み渡り、響く演技
悲しくて美しくて幸せな気持ちになれる映画
悲しいんだけど幸せな気持ちになれる映画です。1950年代のロンドン、青と灰色の街並み、重厚なビルディング、雨に煙る公園、濃紺のスーツ姿の男たち、なんか美しいなあ。
初めて一人で観た映画が黒沢明の「生きる」(高校生のとき、世界のクロサワの映画をやってるって知り意気込んで観に行きました。2本立ての最初の一本目だったなあ)。そして最後に観た映画がこの「生きる LIVING 」(これはすぐに書き換えられるけどね)。
僕にとってメモリアルで悲しくて美しくて幸せな気持ちになれる映画です。
※※※映画を観た翌朝(つまり今)この映画の余韻に浸ってます。高校生のときに観た「生きる」も思い出しつつ。「ゴンドラの歌」と「ナナカマドの木」(スコットランド民謡)を比べたり。お巡りさんとピーターとのやりとりやら、マーガレットとピーターとの心暖まる話もある。原作を壊すことなく、でもオリジナリティもあって。さすがカズオ・イシグロ(僕の大好きな作家です)。それでプラス0.5です。4.5だね。
人生の最後に何ができるか
この映画は人生の残り時間がテーマになっている。先日観た『イニシェリン島の精霊』という映画も趣は違っても同じテーマが扱われていた。登場人物の一人が、人生の残り時間を考えたら余生は作曲に専念したい、話のつまらないやつといつもまでも付き合っているのは時間の無駄だと自分の親友に絶交をつきつけるという出来事から始まる物語だった。人間というのは人生の残り時間が少なくなってくると、生きている間に何かを成し遂げたい、何かを残したいと思うようになる。自分自身も50代となり、会社での残り時間を意識するようになってきた。こういった映画を観ると明日からの生き方を見直そうと決意するのだが、組織の中では、結局、ルーティンワークに慣らされているためにその保守的な空気に抗うことはできず、高い志はいつのまにか消え去ってしまう。映画でも、ウィリアムズ亡き後、職場の同僚たちはその遺志を継ぐことを一度は誓ったが、いざ職場に戻ると新しい上司の元でまた以前と同じように官僚主義的な業務を繰り返すというシーンが描かれている。
余命半年と告げられたウィリアムズにはほとんど時間がない。定年までに何かを成し遂げたいというならまだ計画の立てようもあるが、残された時間が数ヶ月では一体何ができるのか。書類の山の中から今までたらい回しにされていた公園整備の陳情書を探し、決意した。「市民課が先頭に立って取りまとめるべき事案だ」部下たちを連れて現場調査に出かける。
この後は、葬儀のシーンが映し出され、ウィリアムズを偲ぶ証言が次々に展開されていく。ウィリアムズの粘り強い交渉の末、公園建設は成し遂げられた背景が描かれる。最後は仕事で結果を残すというのはなにか日本人的な感じがするが、英国人にも通じるものなのか。人生の最後に何をするのかというのは人間にとって究極の問いになるが、いつ何が起こるかわからない人生、日頃から自分には何ができるのか考えておきたいものである。
ウィリアムズは何故ゾンビ化してしまったのか
単調な日常に知らず知らずのうちに飲み込まれてしまったというようなセリフがあったが、日々のささやかな変化、ウィリアムズにとってはリスクを避けコピペのような生活を送ってきたのは彼自信である。心に湧き上がる欲求、欲望に蓋をし無視し続けた結果、人生の最期になって焦って何かしようと思っても肝心の心が何にも反応せず、ただ空虚な時間のみ過ぎていく。医師から余命を宣告されても大したことじゃないんだと正面から向き合わない、自身の心と向き合えない始末。反対にマーガレットは天真爛漫で、パフェをおいしいと喜んだり、同僚に妙なニックネームをつけたり、折角の仕事をあっさり辞め畑違いの仕事に転職するなど人生の一瞬一瞬を自分の気持ちに忠実に生きており、ウィリアムズにはとても眩しく映る。
人生を如何に生きるべきか。人生は決して生まれてから死ぬまでのラインではなく毎日の集合であり、毎日は更に細かい時間の集合である。パフェが美味しい幸せだな、と感じない人が充実した人生を送れるはずがない。
最後にウィリアムズが公園のブランコで幸せそうだったのは、プランが成功したからではなく、きっと失敗もあったろうが毎日自分の思いを無視せず、自分の心に忠実に生きたせいだと思った。
死にゆくじいさん
背筋が伸びる
質感が懐かしい
自分にはとてもよかったです。
現役を退いて、しみじみほのぼの観るには
ピタリとハマりました。
ビル•ナイさん、とてもいいです。
とても無理だけど、できることならああなりたいです。
顔立ちが綺麗だし、背も高いので絵になります。
時系列に進まない展開もよかったです。
オリジナル版は観ていません。
画面の質感やロゴが1960年代くらいの映画を観ているようで
とても懐かしい、柔らかい感じでよかったです。
全体的に落ち着いたトーンで
その中の光がとても暖かく感じます。
眺めているだけで心地よいです。
主人公の市民課に配属された新人のピーター役の俳優さんが
若い頃のジェームズスチュワートさんに似ているんです。
主人公が劇中で観る映画がケイリーグラントさんの映画だという設定
とかもいいですね。
エンパイアオブライトもそうですが、
昔を懐かしむ作品が最近続いてとても嬉しいです。
可能ならば、若い世代の方にも観ていただきたいですが
還暦過ぎた世代の方には特にお勧めしたい作品です。
自分の母が
オリジナル版の生きるを観ているので
ネタバレなしで、
聞いてから行ったのですが
あ〜、そういうことね。
というエンディングでした。
お気に入りの1作になりました。
チコちゃんに叱られちゃった英国紳士
生きるとは
名作が続くから最近は泣いてばかりです😂
生きるとは、ただただ生活をしていればいい訳じゃない。
余命宣告される前後でウィリアムズの表情が180度変化していく。
表情だけではなく、行動にも現れ
いままで空虚感でしかなかった"生きるゾンビ"でしかなかったウィリアムズ。
人生を見つめ直す。
人生を生き直す。
誰かのために何かをすること。に気が付き
自分だけじゃなく周りも変えていく。
あぁ、名作ですね。
日本の名作をイギリスがリメイクしたこの作品。
ぜひ劇場で…😊
.
静かで熱く無駄のない脚本。陰影の効いた渋い映像。
原作の展開におおむね忠実に、しかし丁寧に刷新がなされた一作
イギリス上流階級のドラマからファンタジーまで、ジャンル横断的に優れた作品を発表し続けるカズオ・イシグロが脚本を担当したことが注目ポイントの一つとなっている本作。中盤の大胆な場面転換を含め、原作である黒澤明監督作品『生きる』(1952)の物語構造に基本的には忠実な造りとなっています。それこそ場面によっては、アングルまでそっくり。
一方、役所の形式主義に不満を募らせている若い男女(エイミー・ルー・ウッド、アレックス・シャープ)の存在感が増しているところが、本作の大きな変更点となっています。彼らのおかげで、観客が物語に違和感なく溶け込むことができ、また主人公ウィリアムズ(ビル・ナイ)の心の動きを捉えやすくなっています。
また上映時間は原作よりかなり短くなっていますが、これは原作が粘っこく描写した社会風刺の場面を縮めたことが大きいようです。このように本作は、原作の要点を的確に抽出しつつ、見事にロンドンに生きる人々の物語として移し変えることができています(作中のある設定のため、時間軸はほぼ原作と同じ)。むしろ原作の、執拗な社会批判描写や主人公の時に過剰とも思えるような感情表現といった、黒澤明作品の特徴でもある、アクの強さはやや薄らいでいます。特に映像面では、人やモノが凝集する密度の高い画面ではなく、余白の余韻や陰影を活かした描写となっていて、同じ日本映画としては、黒澤明よりもむしろ小津安二郎あたりを連想させるところも興味深いです。
本作に感銘を受けた方には、機会があればぜひ原作の『生きる』の鑑賞をおすすめします。名作人間ドラマ、という印象を良い意味で裏切るような大胆な物語展開などに、古さよりもむしろ新鮮さを感じると思います(ナレーションが最高)。
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