「彼の最後の生き様に生命を吹き込んだもの。」生きる LIVING talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
彼の最後の生き様に生命を吹き込んだもの。
実話モノでもない限り、映画の「つくり」としては、脚色ということもあり、必ずしも世の中で行われているありのままを描かなければならないというものでもないと、評論子も思います。
しかし、架空の会社を舞台とするならばいざ知らず、「市役所」という実在の組織を舞台に据えるのであれば、そこでの仕事ぶりや、織りなされる人間関係などが、あまりにも実際と乖離しているというのは、いかがなものかと思ってしまいます。
(A県のさる漁港が舞台のはずで、確かに映像は漁港の風景なのですが、画面に映し出される漁船は、何故かどれもB県知事から登録番号の配付を受けた漁船ばかり…などというのは、製作上のご愛嬌。)
元作は、死期の迫った市民課長自ら(市民課)が、市民から陳情のあった公園を、トップダウンで作ってしまうという、およそ「ありえへん」ストーリーでしたが、本作は、死期の迫った市民課長が、強力に働きかけたり、政治力(市議会議員?)を利用したりして、関係各課に公園を作らせるという、無難なストーリー。
まぁ、公園造成のノウハウも資源も持たない市民課としては、できることは、やはり関係各課に動いてもらうよう働きかけることが、せいぜいだったはずです。
その点では、元作よりも、ずっと現実に即した「観やすい」一本に仕上がっていたように思います。ウイリアムズ課長(ビル・レイ)の生き様を重ね合わせても。
そして、その陰には、市役所職員の実際の働きぶりについて正確な取材が行われたことが窺われます。
「役人の働きぶりは、こんなもの。」という決めつけ(?)で作られたような元作とは違って。
そして、その正確な取材が、本作やウイリアムズ課長の(最後の)生き様に生命を吹き込んだと言えると思います。評論子は。
かつて「マルサの女」が封切られたとき、「自分たちの仕事に、よくぞここまでスポットライトを当ててくれた。」と、日本全国の税務職員がスクリーンの前で涙したと言いますが(真偽の程は不明?)、それも、税務の現場についての徹底した取材がバックボーンとしてあってのことと、評論子は思います。