「死ぬ前に生きる」生きる LIVING サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
死ぬ前に生きる
原作にあたる、黒澤明監督の「生きる」は未鑑賞。しかしながら、冒頭の哀愁漂うフィルムの映像に心が揺さぶられ、原作を物凄くリスペクトして作られたんだなってのが、すぐに分かりました。映画館で見てよかった〜...。
ストーリーはかなり簡素な作りで、正直物足りない。ビル・ナイが紳士過ぎるがあまり、死を宣告される前と後とで違いがそこまでないのが、残念なところ。これに関しては、恐らくオリジナルの方が優れているんじゃないかな。やはり原作は日本映画ということもあって、物語は日本が舞台の方がしっくりくる感じ。街並みとフィルムの美しさは1級品なんだけどね。
優しく、そっと寄り添ってくれる、そんな映画。
生きることとは?幸せとは?死を目前してようやく考え始めた主人公の男。残りわずかの人生を、生きらずには死ねない。そんな言葉が胸に刺さる。酒に溺れたり、新しい帽子を買ったり。人生って、こんなに面白かったのか、自由で楽しかったのか。この年齢になって気づくのはなんとも悲しいが、生きることを見直した彼は、間違いなく幸せに死ねたであろう。そう考えると、人生のお手本のような存在なのかも。
ストーリーはシンプルだが、とても丁寧で、特にメインとなる3人はすごく愛おしく描かれている。原作をリスペクトして、という理由だけでなく、この映画はフィルムがめちゃくちゃ合う。なんなら、フィルムじゃないと成立しないまである。音楽だって、街並みだって、聞き、見惚れてしまう。新作映画なのに、名画のような安心感。若者にはキツイかもだけど、歳を重ねる度に良さが分かってきそう。
黒澤明作品を見てみようかなと思えた、素晴らしいリメイク作品。主演男優賞ノミネートも納得の演技力。もっと秀逸で見応えのあるストーリーに出来た気はするけど、何も身構えずに見れる映画です。ぜひとも、劇場で。