劇場公開日 2023年3月31日

「映画は万国共通である」生きる LIVING penさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映画は万国共通である

2023年4月5日
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鑑賞方法:映画館

黒沢明監督の「生きる」は若い頃、名画座で拝見し、その後テレビでも鑑賞しました。何度か放映されていたテレビの黒沢監督作品特集でも、確か「七人の侍」と一位二位を争うほどの名作として取り上げられていたような記憶があります。ただ、現代劇である「生きる」が、海外でリメークされた事実には少し驚きを禁じ得ませんでした。

で、WIKIで調べたところ、海外でもオールタイムベスト100などに選ばれることもあるようで割と受け入れられているのだなぁということを今回初めて知り、なるほどと納得した次第です。最近は「男はつらいよ」がフランスで人気との記事も読んだりして、やはり人間の感情を描く映画は万国共通なのかなと思ったりします。

前置きが長くなりましたが、感想を要約すると、①黒沢作品の物語を忠実になぞっているが時間がかなり短縮化されコンパクトにまとまっている。②作品としては良い意味でも悪い意味でも別物である。③古き良き英国の英国紳士の美しさが、彩度を落とした美しい映像でよく再現されている。でしょうか。

②に関して言うと、例えば、志村喬の前半の少し情けない様子は、ビル・ナイにはありませんし、余命いくばくもない初老の志村喬が、ただでさえ大きな目を剥き出しにして、「生きる」とは一体何なのか?と娘に問い詰める迫力は、紳士としてのビル・ナイの魅力的な礼儀正しさに中和され、減殺されていました。最後旧弊を打破すると誓った同僚達がたどる道を描くシーンにおいては、黒沢作品にあったユーモアは、本作品では、ビル・ナイの英雄的行動を明確にする事実としてのみ機能しているように思えました。

しかしながら、本作には、③があります。そう。この作品は、どにかく美しい。
黒沢作品にあったぎらぎらした対照の妙は、古きよき紳士の国英国の気風の中で中和され、遙か昔の美しい記憶として昇華されているように思いました。

そして、表現や背景や文化は異なりますが、やはり核は同じものだと思います。それは多分「お金や地位や名誉など見返りを求めず、誰かの役に立つなにものかを創りだすこと」それが「生きる」ことの本質的な意味だという主張です。

世の中は新年度。スタートラインに立って見る作品としてはとても良い作品だと思いました。

pen
penさんのコメント
2023年5月17日

Mさんコメントありがとうございます♪私はゴンドラの歌を歌う志村喬が好きですが、こちらもこちらもなかなか捨て難いと思いました^_^

pen
Mさんのコメント
2023年5月17日

この作品と黒澤作品が別物という考え方に賛成です。「ゴンドラの唄」と「ナナカマドの木」との違いは大きいように思いました。

M