「私たちの人生は一人で絶えず闘志を燃やし続けるには長すぎる」生きる LIVING スクラさんの映画レビュー(感想・評価)
私たちの人生は一人で絶えず闘志を燃やし続けるには長すぎる
観ることができて良かった、出会えて良かった。そんな映画だった。
黒澤明監督の原作を単純にリメイクしたものではなく、カズオ・イシグロが今を生きる人の心にも響く物語として、
ビル・ナイに当て書きして作ったものだからこそ、泣くほどに感動できた。
この映画の魅力はビル・ナイ演じるウィリアムズが私たちの象徴的な人物像を持っていることだと思う。
誰しも大志を抱いたり、闘志を燃やしたり、何かに向かって勤しんでいた時期があると思う。
でも、炎を燃やし続けるには、それが比ゆ的な炎でも、当然、燃料が必要なのだ。
私たちの人生は燃料を絶えず供給するには長すぎる。
いつしか燃料を与えることができなくなり、昔は輝いていた炎はくすぶってしまう。
そんな人間ごまんといる。
誰もがウィリアムズになる可能性を常に秘めながら生きているのだ。
そして、自分で燃料を供給できなくなり、心がくすぶってしまったら、その心にもう一度炎を灯すことができるのは、他人の輝きなのだ。
しかし、他人の素晴らしい言動に感化され、再び炎が燃え上がることはあっても、
はたしてどれだけの人がその炎を燃やし続けることができるのだろうか。
本作はそんな問題提起すらしているように感じられた。
私も誰かの心に火を灯す存在になりたい、自分の中にある炎をくすぶらせずに輝かして生きていきたい。
人生の教訓を与えてくれるような映画だった。
また、恥ずかしながら、黒澤明の原作を未鑑賞である。
70年の時を経て、この作品にインスパイアされてできたのが本作なのだから、
次は原作を鑑賞してみたい。
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