劇場公開日 2022年6月3日

「オリンピアンの心象風景オムニバス」東京2020オリンピック SIDE:A k2さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0オリンピアンの心象風景オムニバス

2022年7月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 全く馴染みのないオリンピックの公式ムービーとはいかなるものか、確認したくて見に行きました。個人的な先入観では、コロナ禍で行われたオリンピックを客観的に描いたドキュメンタリー映画であるべき、というところでした。
 素人の勝手なイメージですが、河瀨直美監督というのは、監督個人の興味の対象を独自の視点で描くことが得意な(カンヌ映画祭のなんとか部門で賞が取れる芸術家の)監督という印象です。その監督が、公式記録映画なるものをどう仕上げるのか興味がありました。
実際に見た映画は、”コロナ禍で1年延期される”という極めて特殊なオリンピックに関わる、何人かの”特殊な状況の”アスリート達をピックアップして、その境遇や心の動きを極めて個人的な視点で切り取ったオムニバス映画でした。TVシリーズの「○○大陸」や、「○○の流儀」をいくつか繋げたような感じ、というのが一番近いと思います。
 アスリートの内面をインタビューやテクニカルな分析で描くジャーナリズムは嫌いではない(というよりむしろ大好物な)ので、約2時間の映画は退屈しないで楽しめました。
ただ、これが東京2020、あるいはオリンピック大会を客観的に描いた記録映画かというと、全くそうは思えません。また、取り上げられた個々のトピック、アスリートのチョイスは興味深く、ある程度納得もできますが、その掘り下げや論点はとてもありきたりで通り一遍、という印象です。視点は主観的であるが、独特ではない。これが河瀨監督ならでは、というなら今後、河瀨監督の映画を観たいとはあまり思いません。(SideBを除いて。)
 また、個々の映像はさすがに公式映画というだけあって、近い距離から撮られたものも多くリアリティや臨場感を感じさせるもので、かなり迫力はありましたが、オリンピアンのアスリートとしての"凄み"やオリンピックゲームの”素晴らしさ”を感じさせるスポーツジャーナリズムとしての魅力はあまり表現されていなかったように思います。
エピソードの間に時々挟まれる、心象風景のような映像(例えば8ミリ映画風(?)の耽美的(?)カットなど)は、効果的なのか、必要なのか、正直よくわかりません。
監督は、アスリートの境遇や心には興味があるけど、(技術やメンタルマネジメントを含めた)競技の中身そのものにはあまり興味がないのかもしれない、と感じました。
あるいは、オリンピックゲームズは本来こうあるべき、みたいな思想や理想がないのかも。
 さて、SideBは、アスリートではなく大会の運営サイドや裏方を描いた映画ということらしいので、こちらは果たしてドキュメンタリー映画なのか、確認してみましょうか。

k2