すずめの戸締まりのレビュー・感想・評価
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「天」と対を成す「地」の話
冒頭のシーンで即ピンとくると思いますが、
地震がテーマです。
お、前回は天気で今回は地震か。
その前は時空❓今回で一旦まとめかな❓
ロードムービーだと予想してなかったけど、
神戸、東京、仙台と、地震あった所ばかりだ‼️
アレ❓宮崎と愛媛って地震あったっけ❓
すずめは「ミミズ」が見えるから、
「閉じ師」の才能もあり、
それ故に草太と会ったのかもしれない。
草太の生い立ちも、
すずめと似てるのかもしれない。
今回恋愛要素は薄かったですね。
胸キュンな所は少なかったかな。
新海作品て、結構SFなんだけど、
誰一人欠けずに終わる所が良いですよね。
深く考えない
批判者は被災経験者を一括りにするな。
※被災経験者ではない人間が『被災経験した人は辛いかも…』とか『見ない方がいい』とか『PTSDになるよ』と想像で言っていることが多く見受けられる。それなら被災経験者も今回の作品について肯定的に受け止めている人も多いことを併せて想像、理解すべきだ。※被災経験者がどう感じるかなんてそれ以外の人と同じで人それぞれなんだから一括りにするな。勝手に決めるつけるな。迷惑だ。腫れ物扱いするな。私達も君らと変わんない人間で、同じ時間軸に生きていて、あれから10年以上前向いて生きてんだ。※(もちろん、今もトラウマを抱えている人は見ることが辛いかも的な意見は理解できます。PTSDなど。でも被災経験者でもそれは人それぞれだよ。)
配慮とか批判とか言うなら今の宮城福島を見に来てお金を落としていけ馬鹿野郎。
荒ぶった前置きはさておき。実際に起きた出来事(事件、事故や自然災害や戦争)で何年経ったら時効にしてアニメーションや実写ドラマ、小説等という娯楽にしてよいのか。何年経ったら題材にして良いのか、それは一体誰が決めるのでしょうね?10年経ったら時効?20年?半世紀?それとも100年くらい経って世代が完全に入れ代わりその出来事を経験したことのない人ばかりで溢れ、その時代に生きている人々が絵空事のように感じられるようになったら良いのでしょうか?でもそれだとその事柄を経験した生の声は作り手は聞けず、残っている史実からしかまとめることができない。
私には正解は判断できかねますが、このタイミングで良かったと思います。監督自身も今やらないと遅くなってしまうと言っている。
アニメは10代の子たちのものだ。そりゃそれ以上の大人が見ても良いが、新海監督は東日本大震災を経験したことない今の小さな若い子どもたちのためにこの映画を作ったそうだ。震災経験のない子どもたちは震災の話をしてもピンとこないことがあったそう。どうやったらその様を伝えられるか、新海監督が表現出来るアニメーションという手法を使い、それでいて子供たちが飽きることなく最後まで見やすいエンタメの中に落とし込むか、どうしたらその子らに伝えられるかを必死に考え生み出した作品だ。
批判殺到などど殺到してもいないのに大々的に書いてこき下ろしている『大人』が多い。その人たちは現実に起きたことを、『その当時が記憶に残っている人たちが多い経過11年で、現実を題材にし、現実には起こりえないファンタジーを組み込ませ、新海誠のリアルな表現で描写をした』ことが気に入らなかったのだろう。でもこの映画を監督が見せたい最大のお客さんは大人ではない。東日本大震災を知らない若き子供たちなのだ。新海監督は東日本大震災を風化させないためにこの映画を作ったのだ。あのくらい描かねばアニメ上では何も知らない子供たちには何も伝わらない。(そりゃ、メディアで散々報道されてきた映像を見ている、もしくは生でたことがある大人たちはフラッシュバックとしてアニメで描かれた以上の物を思い出し勝手に受け取っていると思うが…)
何も知らぬ子どもたちのため、その意図を鑑みればむしろよく、あれくらいの描写で済んだなと思う。
まぁ見る側にそんなとこまで作品だけで伝わるかというと伝わんないですよね。スクリーン以外の情報で汲み取れっていうのが無理だから仕方ないけど、あれこれない批判をあたかも殺到してるように書いてるのが気に入らない。(すずめの戸締まり 最悪 ありえない 等のワードで検索を掛けてもその中の批判の意見は少数派で目立つことはない。どこで批判されているのか?)
でもこういったデマ記事含めてSNSでは様々な話題にされ東日本大震災について311以外の時期に話されることこそがもしかしたら大人に向けた監督の狙いでもあるのかもしれない。今や東日本大震災の話題は311その1日、またはその日を含んだ一週間などテレビ局も期間を決めて特集するしかされない。それは当たり前のことであり、人々にも慣れがあるので、311以外の時期にこうして話題にされること事態が意味のあることだと思う。
自然災害は常に私達と共にある。いつ、どこで起こるかなんてわからない。大きな地震だって3月のあの時期だけに来るわけではない。他の天災同様私達の都合なんて考えもしてくれない。
作中で10(11?)年後の被災地を見たときの被災経験者と非被災経験者のそれぞれの感じ方の描写がある。たった1言2言である。その描写まで作中に入れるのが新海誠なのだ。そこまで被災地と被災経験者とその他とすべてのリスペクトしているのだ。
私はこの11年という時期に、これ以上遅くなる前に、東日本大震災と真摯に向き合い、監督生命を掛けて全力で作品を生み出してくれた新海誠に最大の感謝をしたい。
監督はこの作品が世界に受け入れられなかったら50代で無職になるかもしれない(若干正確な言葉ではないがそういう意味の言葉)と言っている。監督生命を掛けてこの作品を生み出したのだ。東日本大震災をファンタジーと織り合わせアニメで表現されることがどういうことか、一部の人達がものすごく怒ることも想定済みでそれでもこの作品を生み出した。批判的でない人間だって、被災経験者が見たらどう感じるだろう?辛く感じるのではないかと批判というよりはそういった声が多い。私も1回目視聴した際にはそのように感じた。
ただ、思い返してみてほしい。その作品についての他人の意見が気になるようになったのはいつからだろう。他人への配慮があったほうがいいんじゃないかと心配するようになったのはいつからだろう。きっと、監督がこの作品を見せたい10代の若者たちは(特に小学生、中学生の年代)そんなことを一切考えもせず、素直に受け止め、自分自身の感想を見つけるだろう。
私もそんな若い頃にすずめの戸締まりを見たかったなぁと思うのである。
私の幼子はようやっと一言二言話し始めた時期でまだ幼いが彼がアニメに興味を持ち始めた頃にはこの作品を見せたいと思っている。新海監督がこの作品の観客に選んだ彼らが、この作品を見てどんな感想を述べるのだろうと今から気になってしょうがない。この作品を生み出してくれた新海誠監督に感謝をしたい。
星を追う子どもの精神的続編
率直に言って期待を軽く下回ってしまった。
物語は、震災や災害をテーマにしたファンタジーで、もっと練れば面白くなる要素は沢山あったのに、それを上手く使いこなせず、振り回された感じがした。
震災で親を失くした少女すずめと災いを封じる閉じ師の青年草太の成長物語、らしいのだが、彼らは状況にその都度対応するだけで、特に成長した様子が全くわからない。
そもそも物語初めの段階で、震災の喪失感、未熟さや挫折、コンプレックスみたいなものが、観ている人に感じられず、物語後に何かを得たとも思えず、これを成長物語だというのは無理がある。つまり、物語の前後でキャラクターに何も変化が見えない。(草太に関しては、全く過去が描かれないので成長も何もなく。。。)
これは、完全にキャラクターの描きかたに失敗しており、この映画では致命的である。
また、映画の構造的にも無理がある。ストーリーを至極簡単に言えば、幼いすずめを成長した今のすずめが救いに行くお話、であり、主人公はすでに震災後を生き抜いてきて試練を克服しているように見えてしまうのだ。
やるのであれば、震災のトラウマがある少女が青年や旅先の人々とと出会って、性格が少しずつ変わったりトラウマを克服して、過去の自分も救いつつ成長してこれからを前向きに生きていく、というプロットにすべきだ。
つまり挫折→試練→克服→成長という一連の構造は崩すべきではないのだ。
また細かいところで、よく分からない設定や出来事が出てきたりして、疑問符とストレスを感じた。
なぜSNSでネコがダイジンと名付けられるのかよく分からないし、もう一匹は自分でサダイジンと名乗るし。
(ダイジン=大神という意味が含まれてるらしいが、なら何故狼でなく猫?とも思ってしまう)
なんでダイジンは草太を椅子にしたのか?とか、なんで災厄の出る場所を教えてくれてたの?とか、それなのになんで普通に説明して教えてくれなかったの?とか。
神様だから考えはわからんって設定はさすがに無理があるし、何かしら背景はあるのだろうが説明がないので何もわからない。
こういう細かいストレスが積み重なり、次第に物語への興味が薄れていってしまった。。。
絵面は、それなりに綺麗だが、あくまでも現状維持にとどまり、見慣れた映像だ。むしろ過去作より少し劣って見える。新海作品を初めてみる人にはどう見えるかわからないが、これまでの作品の所見時と比べて驚きはない。
音楽は、あまり記憶に残らず、この点でも残念ながら及第点とはいかない。前作、全前作が良かったというのはあるのだろう。(挿入歌を入れろと言うわけではない。BGMそのものが悪い意味で無味無臭)
個人的には共作になった影響かな?とも思った。
最後に一番気になる点。
ジブリモチーフが多いな、というところ。
厄災を具現化したミミズは、少しデザインを変えた獅子神様(もののけ姫)だし、ダイジンや挿入歌は魔女の宅急便、草太のビジュアルや、様々なキャラが集まってキャラバンを形成するところ、異空間で過去のキャラと出会いループするシーンはハウルの動く城。
これらが上手く作用してれば良いが、正直そうではなかった。
そして思い出すのが、星を追う子ども。
この映画はその精神を受け継いでしまった、精神的続編と言える。
ゴジラ
君の名はでは隕石衝突を、天気の子では東京を水没させるほどの豪雨を描き、そしてこのすずめの戸締りで描かれたのは地震。これらを災害シリーズといってもよいだろう。前二作では人間ではどうしようもできない天変地異あるいは神の悪戯と読めるような、あくまでフィクションとして楽しめるような描写だったが、本作では一気に現実との距離を詰める。
地震が起き、警報が鳴り、震災の跡が残る被災地へと足を運ぶのだ。
私は、前二作で新海監督が描きたかったのは人間を翻弄する神とそれでも精一杯生きる人間だと思っていたが、監督はきっとゴジラを描きたかったのだ。戦争や災害の象徴であるゴジラ。災害をフィクションにうまく落とし込んでエンタメと両立したかった。そうすることで、災害と、どん底から立ち上がる人間の強かさを、三作通してずっと描きたかった。そのように見えた。本作は落とし込みがストレート過ぎたようにも思うが。
ただ、君の名はでは回避しただけ、天気の子では東京水没よりもヒロインを自らの意思で選択した一方、本作では神が手助けしてくれなければハッピーエンドにはならなかった。どうしようもならないけどどうにかする、どうにもならない中でなんとかあがく、ではなくて、運よくハッピーエンドになった点には小さな矛盾を覚えた。
安直な意図を様々な面で感じた。
[良かった点]
絵が相変わらず凄まじく綺麗で癒される。演出も迫力があった。音楽は懐メロが多数登場しマイブームになりそう。声優も神木くん筆頭に良かったし、コメディ要素も面白おかしく楽しめた。廃墟が栄えていた昔に想いを馳せる場面が好きだった。
[良くなかった点]
猫ちゃん可愛いだろ、キーパーソンがいきなり椅子に変わっちゃうなんて驚きだろ、地震怖いだろ、とどれも安直な意図を予告映像の時点で感じていたが、本編を見終わった後も深みのある意図を捉えることができなかった。
メチャクチャ感動した。
結論は、すごく良かった。「言の葉の庭」「君の名は。」「天気の子」と見て、今までで一番好き。以下三点について感想。
一つ目は、「震災の話です」って言わずに宣伝しようという結論にどのように至ったのか興味ある。人間は色んなことをそれぞれ抱えてるもんで、例えば子どもに恵まれない夫婦にとっては赤ちゃんが出てくるテレビCMは見るの辛いとか。ファミリーカーのCM辛いとか。人によって様々あると思う。見たくないのに不意打ちで見せられちゃう。でも、映画ってお客さんはお金払ってエンタメとして見に来るから配慮必要なんじゃない?と。そう思う一方で、本屋で本選ぶとき、ほとんどの人は「こういうシーンありますよ」って知らされないまま買う。あらすじが裏にちょっぴり書いてある場合はあるけど。物語の山場で重要なシーン知らせるってネタバレだから、知らせないの当然じゃん、てのも分からなくもない。やっぱり商売だから、より売るためにはあえて言いたくはないだろう。
しかし、新海さんは「見る人に何か影響を与えうるなら、それは美しいことや正しいことに使いたい」(正確な表現は忘れましたが)って言ってて、それは言われなくてもちゃんと分かる。だから震災を描くことも勇気や覚悟を感じるし、そういう意味での信頼感はある。
二つ目は、自分が「ファンタジーけっこう大丈夫タイプ」「商業向け浅型でもメチャクチャ感動できるタイプ」ということ。新海さんの初期の作品はちょっと苦手だけど、新しい作品になるほど見やすくて好きです。
今回はお話の展開に「ん??」と思うところは確かにありましたが「あ、そういう設定って事で進めるのね、了解!」で気にせずフツーに見れてメチャクチャ感動しました。評価を低くつけている方のレビューをたくさん読んでみて初めて分かりました。そのため、最初に自分が書いたレビューを書き直しています。「共感した」を押して下さった方、ありがとうございました。そしてほんとにごめんなさい。違うなと思われたら消して頂いてかまいません。
私は一体、何に一番感動したのかな?
改めて考えてみました。
最も強烈に残り、思い浮かんだのは、小さいスズメが泣きながら母親を探すシーンでした。涙が止まりませんでした。映画館を出て、帰宅してからまた思い出して涙が出てしまい、家族に「311は実際にあったことだからね、きっと同じような子がいたんじゃないかと思うとね、…」と答え、また言葉が詰まってしまいました。「おかえり」のシーンも胸がしめつけられて涙が後から後から…
これらは、この気持ちは感動ではなかった?これは作品への感動だったのか、311を思い出して被災者の方へ感情移入しただけなのか。でも、鑑賞後に物足りないとか退屈だったとか疑問が残って不完全燃焼…のような気分にはなりませんでした。そうなると、私的にはやっぱり「高評価」で「感動した」って事になるのかな。
私はこの作品を見て、みんなのかけがえのない大切な日常があるということ、311でそれは破壊され奪われたこと、もう二度と起きて欲しくないという切実な思いを抱えながら、今後も災害が起きない可能性は無いであろう今をそれでも私たちは生きていくんだということ、震災を忘れてはいけないんだということを、とても強く感じました。
ちなみに、周りの大人たちが家出少女のスズメに温かい対応をすることについては、絶対的に子どもの味方をする大人を描きたいって前から言ってる新海さんの話を思うと、やむ無しというか…それは変わりません。
三つ目は、今まではレンズ遠ざけても細部まで細かくクッキリ見えるな~目疲れるなみたいな感じだった。明度?解像度?高いな~っていうか。「君の名は。」は、キラキラした東京っていう、主人公から見た主観的な東京を表現しているらしいので、ああそうなんですねって思うし美しいし好きなんですけど。今回はそれはあんまり強過ぎなくてバランス良くて、これもいいなって。逆にどっちつかずの中途半端な印象にもなりかねないので、見る人によるかもしれません。質感というか、タッチ難しいですよね、震災というリアルを扱いながらファンタジー要素もあるから。とにかく、上手く言えないけど私は画面の力がいつもすごい、素晴らしく美しいと思いました。
あと、どうでもいいけど新海さんの作品タイトル付けるセンスが壊滅的にひどい。仮タイトル相当ヤバかったですね。ちょっと意外で面白かったです笑
スタッフの皆さんがいてほんとに良かった笑
「震災を描かなきゃいけないんだ」っていう新海さんの強い気持ちや、若い世代に伝えたいメッセージは、私自身はちゃんと受け取ったと思ったし、鑑賞中も退屈さは感じなかったです。また次回作を見られるだろうから、それが楽しみです。
言葉で表すのが難しい
次世代へのエール
総理大臣も、姪の為に一生懸命働いてる人も、漁師さんとして全国に美味い物を届ける事も、様々な事で、それぞれが役割を成してこの世界は回っている。
深海監督が訴えるクリエイターの役割は要石。作る作品によって人々の悲しみや憎しみなどのどうしようもない負のエネルギー(ミミズ)を抑えていると言う事なのだろう。
観客(すずめ)は勝手だ。
自分の都合でかわいいと言ってみたり、あんたなんか観たくもないと言ってきたりする。
だけどその声が、その熱意が猫になって逃げたくもなるクリエイターに再び要石となって次の作品を産む原動力にもなるのである。
作中明言はされていないが、閉じ師は様々な事を経験していきながら最終的には要石になっていくのだろう。
言わば閉じ師は次世代のクリエイター
最後再び大臣が要石になるシーンは
そんな次世代のクリエイター(草太)への深海監督からの
「俺もうちょい頑張るから早く次の奴出てこいよ!」
というエールに感じた。
カナタハルカ
新海誠監督3年ぶりの最新作、常に災害というジャンルに立ち向かってきた新海監督が遂にストレートに災害と対峙する物語という事もあり、今までの繊細な描写とは少し離れてモンスターらしきものもいましたし、どのような作品になるか期待半分、不安半分で鑑賞。仕事終わり直行なので体に鞭を入れながら。特典は新海誠本です。
色々と気になる部分はある…けれどやはり新海監督の作る作品は改めて面白く、それでいて自分や他者と向き合う事を教えてくれる、好きだなと思えるものになっていました。
まず登場人物の表情の豊かさ、新海監督作品に常に備わっていたものは今作でも健在でした。すずめの快活な様子、日本を横断しまくるにも関わらず持ち前のガッツで突き進んでいく姿がとても凛々しかったです。可愛さも備えていて新海監督作品の新たなヒロインにしっかり名を刻んでくれました。草太は基本的に椅子の姿で日本をすずめと共に横断しますが、単独行動しようとするとすずめに捕まってモノ扱いされたり、実際のイスのフリをしたり、助けに入ったり、すずめの手伝いをしたりと、新海監督作品には珍しいマスコット枠がシリアスにしすぎない役割を果たしていてとても良かったです。
アニメーションの美しさは磨きに磨かれており、日本の風景の美しさ、もう一つの世界の幻想的な空間、登場人物たちの行動、さらに今回は災害をモチーフにしたミミズの化け物の存在感も加わって壮大に仕上がっていました。新海監督作品の新感覚を味わえることができました。
日本とは嫌なほどに密接な関係にある災害、今作はそれに焦点を当てた作品という事で、どこまで踏み込んでいくんだろうと思いましたが、想像以上に踏み込んでいた作品でした。ミミズが発生するのは日本の下にあるプレートが動くことによる地震をモチーフにしていて、実際にミミズが倒れたら地震が起こる仕組みになっており、草太とすずめが止めに向かいます。ある種のボランティアとしての役割も果たしつつ、日本の現状を強く訴えかけてもいました。「君の名は。」で復興を描き、「天気の子」で災害後の生き方を描き、そして今作へと繋がり、新海監督の集大成といっても過言ではない出来でした。
「言の葉の庭」で新海監督の独自性が色濃く描写されていて、「君の名は。」ではエンタメ向けに仕上がったので最高に面白いんですが、とても見やすくなっており(口噛み酒は独自性が強かったですが)、「天気の子」で少しその独自性が戻り、今作でかなり戻ってきたなと思いました。そのためエンタメ性は少し弱まっていましたが、感じた事のない感覚に引き込んでくれたのが最高でした。
気になった点として、展開が少し駆け足気味になった後半はロードムービーの良さが薄れてしまったなという印象です。複雑な話ではないのでスッとは飲み込めるんですが、後味は微妙という終わりの方は少しモヤモヤしました。ただ121分に詰め込まれた話とは思えないほどの濃密さを味わえるのは新海監督の手腕が全開で発揮されていたなと思いました。
初見でもかなり面白いなと思っていたんですが、時間が経って作品の事をぼんやりと考えていると色々と思いを馳せる場面が多く、2度目を見てより一層作品内で描かれた新海監督の想いがじんわり沁みてきました。何度もリピートしてしまいそうです。今年ベスト級になりそうな予感がしています。今年は大混戦です。
鑑賞日 11/11
鑑賞時間 24:00〜26:05
座席 O-15
とはいえ結局好き
あまりに過酷な運命過ぎて乗れない
さすが期待の作品だけあってお金もかかっているんでしょう、圧倒的に観るに耐えうるというかその上をいく作画と写実再現で何にでも視覚に耐えうる。ただやっぱり君の名は。以降のメガヒットの新海誠作品に特別な面白さを感じない。細田守にも感じない。大掛かりなファンタジー括りでもあるのだろうか、秒速や時かけ程度がもっとも面白かった。
で、本作、まさか震災ネタとは思わなかった。徐々に徐々にアラームと共に呼び起こされる記憶。濱口監督「寝ても覚めても」と同様のロケーションがある。ただこちらはど真ん中、震災の子、の話だった。何もかも奪われて遠くの町で暮らすあの時取り残された子は今は女子高生。彼女が運命的な出会い(再会と恋心)と共に壮大なカルトファンタジーの世界の伴走者になる。いや伴走かと思ったらそれを背負い、自分の閉じれなかった扉を閉じる。壮大だ。ただ何でだろう、そんなに乗れない。やっぱりメガヒット要請ともなれば壮大なファンタジーにしなきゃいけないんだろうか。
壮大な運命を背負った少女と廃墟と椅子(!)と猫と巨大ミミズと地方都市と東京。ファンタジーとして戦ってる相手がミミズなのだけど、それをミスると「あの」大地震が来るというのがやっぱり乗れない。というか、この子はアラームが鳴ったりしてフラッシュバックしないのだろうか、とか、果ては地震を止めるような運命を背負っちゃって生きていけるのだろうか、とか、大量の死を見てきた子にそんな運命背負わせるなよ、とか何で乗れないのかを考えるとそういうことなんだろうな。
あとさすがに椅子はないな、と。しゃべるものに口がないのはテレパシーでしかない。
過去を想い、未来を生きていくということ
人々の記憶から忘れさられようしている存在、時を経て過去の存在となろうとしているものがあるということを改めて感じることが出来たと思います。
しかし、そんな存在を忘れずに過去を想いつつ、今を生きる者は未来を歩んでいく、未来を生きて行かねばらないということも同時に感じることが出来ました。
3.11の描写に関しては、少し話題となっていましたが茶化した表現は一切なく、個人的にはきちんとした描写がされておりとても良い印象を感じています。
誰にも触れられず、本当にただの歴史の一部になってしまうことこそ、忘れ去られ風化してしまうということだと思います。
だからこそ、今題材として取り上げていただけたことは、とても良い機会であったのだと思います。
ただ、災害で周りに犠牲となった方がいる場合には鑑賞の際にご注意ください。
終盤の心理描写が少しリアルなものとなっています。
秒殺バレンタイン・キッス
見事な調和がとれた作品
心に響かない…
まったく心に響かなかったです…
悲しくなるくらいに、話に乗れなかった。ものすごい絵があってものすごいことが起こっているのに、途中から退屈で退屈で仕方なかった。
いちばんは、すずめと草太の関係性に気持ちが乗れなかったこと。すずめは過去の出来事があって、震災を止めたいというのはわかるけど、草太への思いがあるから、あそこまでの危険に飛び込むわけですよね。だからすずめにとっては、草太はかけがえのない存在でないといけない。この2人の関係性が、物語上で描ききれてないのは大きな問題で、関係性が積み上がっているようには感じない。だから、終盤に向けてのすずめの草太を助けたいと思う展開が、そこまで切実に感じられない。
すずめと草太が一目惚れなのはいい(実は出会っていたというのもいい)。さすがに椅子になるのが早すぎるように思うんです。人間パートが少なすぎないか。
もっと草太の人となりがわかるくらいには描いて、椅子になってしまうのが寂しいと思えるくらいには、2人の関係をじっくり描いてもよかったのではないか?
だからバディものとしても物足りない。
基本的にはミミズが出てきて、2人が戸締まりをする。このとき、2人だからこそできたという共同作業な感覚もない。ダイジンもつかまらない。つかまえても戻る術がよくわからないんですね。
日常が危うい、日常を守らなければならないという感覚も弱い。
すずめの日常を描く時間をもっと増やしてもよかったのではないか。旅をしているなかで、出会った人たちを守るというマインドももっと強くなっていかないといけない。不特定多数の人を守る、というのはさすがに命をかける理由がうすぼんやりとしてしまう。
すずめが命を賭けて守るものはなにか。それがよくわからないのだ。
さらにすずめは生命の大事さをわかっているのか。簡単に差し出すというが、それはどうなんだ。もちろんラストに生きるんだという強い意思にはつながるのだけど。終盤までチープな動機が続くので、かなりツラい。ダイジンが要石に戻るのでいいなら、最初からそれでいいじゃん…とも思ってしまった。
『天気の子』で、自己犠牲のその先を描いたのに、どういうことだ。世界を救うために誰かが犠牲にならないといけない、そのときにどう選択するのかという強烈な問いや設定がない。
4度の地震の危機があるが、同じようなパターンで、どんどん緊張感が失われていく。インフレさせるか、パターン変えるか、日常をもっと描くかしないと。なんならミミズが落ちてからの世界を描いてほしかった…。問題はそのあとだからだ。震災はすべて止められるものではない。じゃあそのさきの世界をぼくらはどう生きていくのか。現実に生きている人たちにどう接していけばいいのか。平和だと思っている人なんてもうどこにもいないよ。不安が蔓延しているこの時代に、それでも前に進まないといけない時代に、そんな表層的な自己犠牲の話をやられても響かない。
新海誠を信頼しているのは、時代を描ける人だと思った点。『君の名は。』で震災と向き合った。『天気の子』では、終わりのない狂った日常を、それでも好きな人と生きていくと宣言させた。反社会的といえるかもしれないけど、これこそが今の時代を描いたと思わせる強烈な作品を突きつけてきた。あのラストから世界はどうなっていくのか、考えざるをえない。それは震災後の僕らでもあるし、コロナ禍の僕らであるし、経済が衰退していき不安が覆っている状態だと読み替えることもできる。『天気の子』は2019年の作品でコロナ前でありながら、的確に今の時代を描いていたのだと思う。
だからこそ、新海誠が今なにを描くのかに興味があった。
しかしそもそもハードルを上げすぎかもしれない。その先を見たいなんて、こちらの願望でしかなくて、作家はしつこいくらい同じテーマを描くのが作家性ともいえるわけで、時代と寄り添わなくてもいい。震災に誠実に向き合った作品と見れば、また違うのかもしれない。
あと、「かえるくん、東京を救う」という村上春樹短編のなかで自分が最も好きな作品があって、かなりリンクしている部分がある。それで鑑賞中に期待値が勝手に上がっていたのもある。
散々、指摘されていた歌パートが今回はまったくない。これは物足りなさにつながっているのは明らか。失って初めて気づく、俺歌パート好きだったんだよーという気持ち。
だって否応なくエモーション。新海誠の絵と、RADWIMPSの歌が流れてたら、感情が揺さぶられるわけで。おかげで、RADWIMPSの歌もまったく印象に残っていない。ミュージックビデオ要素でいいじゃないか、ごめんね新海誠。
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