劇場公開日 2022年11月11日

「貫かれたメッセージ」すずめの戸締まり k kさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0貫かれたメッセージ

2022年12月23日
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怖い

過去作品の話から入りますが、「君の名は」を見た時に新海監督は長野県出身と知り、多感な時期を美しい自然を身近に感じながら過ごされたと想像しました。
「君の名は」以前の作品での美しい星空や静かに降り積もる雪、風に舞う桜の花びらなどに自然への憧れやインスピレーションを感じて作品を作ってこられたのだと感じました。
人間は不完全で過ちを犯すけれど、自然はそんな人間をを癒してくれる優しい存在である。
そんな思いと少年の心を持った大人が作った作品群だったと思います。

しかし、あの3.11を経験し、そうした思いは打ち砕かれたのではないでしょうか。
自然は決して優しくはない。
そこに人がいようがいまいが関係なく、津波は大地を襲い、人々の営みを容赦なく奪い去っていきました。
自然には遠慮なんかありません。私たちに配慮なんてしてくれません。
その事実を思い知らされた後に作られた「君の名は」を見た時に感じたことは

「今ある風景は永遠ではない。今この瞬間を大切に。」
「先人達からの警告を忘れるな!」でした。

大昔の人達は子々孫々に警告するために岩に彗星を掘りました。火事で失われてしまったけど、文書に残したり、組紐の模様に、神楽の舞にメッセージを残しました。現在はスマホがあり、防災無線があり、宮水神社と防災放送のスピーカーとのツーショットには今度こそみんなを助けられるという神様の喜びを表しているのではと思ったほどです。

東日本大震災は言葉では表せない、つらく苦しい悲しいものではありましたが過去からの警告を活かしてなんとか生き延びて欲しいというメッセージを感じました。
監督には可愛い娘さんがいます。我が子も含めて未来ある若い人たちへのメッセージです。

「天気の子」でも、気候変動がテーマでした。水に浸る東京の描写も決して絵空事ではありません。「僕たちは大丈夫だ!」の言葉はこれから先を生きる人達にどんなことが起きても力強く生きて欲しい!というメッセージです。

そして、今回の「すずめの戸締り」です。前2作よりストーリーはシンプルでわかりやすかったです。声優さん達の演技が素晴らしく、伊藤沙莉さんのセリフなど、思わず吹いてしまう場面もいくつかあり重たいテーマに癒しをもらいました。

「君の名は」よりもさらに東日本大震災の見覚えのある景色に踏み込んでいて、既視感のある映像が随所にありトラウマのある方達にはつらいかもと思いました。

クライマックス、すずめの過去が明らかになっていく所は、涙がでてしまいました。
あんな思いをした人がたくさんいた、これは現実に起こったことだ。あの時も雪が降っていたな、さぞ寒かったろう。

地獄火のようなこの光景は気仙沼を思い出すな。などと。

隣にいた娘も泣いていました。
「泣くとは思わなかったのに泣いちゃった。」と言っていました。

すずめが幼い自分自身にかけた言葉は新海監督が一貫して伝えたかったこれからを生きる人達への「希望」「応援」のメッセージだと思います。
私は親の立場なのですが、同じ思いを我が子や同年代の方達に送りたいと思います。

k k
k kさんのコメント
2024年5月31日

humさん、ありがとうございます。
コメントを書く時は映画を見て感動した時、心から溢れるものを言葉にして書きたいと思っています。
専門的なことはわからないけど、感じたことをそのまま伝えられる言葉を探すのは大変だけど、共感していただけるとすごく嬉しいです。

k k
humさんのコメント
2024年5月27日

素敵なレビュー、繰り返して読みました。
他作への共感もありがとうございました😊

hum
Mさんのコメント
2023年3月16日

心に残るレビューでした。
私は「君の名は。」が好きで、その後の2作品は今一つと思っていましたが、このレビューを読んで、いつか、もう一度、見直してみたいと思いました。

M
みかずきさんのコメント
2022年12月30日

フォローありがとうございます。
私、10年位前から、キネマ旬報、kinenote、yahoo映画レビューなnに映画レビューを投稿しています。現在の目標は、2回目のキネマ旬報掲載です。
こちらのサイトには今年2月に登録しました。
宜しくお願いします。

ー以上ー

みかずき