「新海誠監督の目指す所が確かに感じられる作品。子供にも向いていると感じます。」すずめの戸締まり こうさんの映画レビュー(感想・評価)
新海誠監督の目指す所が確かに感じられる作品。子供にも向いていると感じます。
ストーリー、映像、音楽ともに最高でした。
映画館で配布された『新海誠本』に、この映画の3つの柱が記されています。
端的には、下記の通りです。
①ヒロインの成長
②ラブストーリー
③日本を『戸締まり』しながら巡る旅
こうした要素が、2時間余りの中で展開されるので、他の方のレビューにもあるように人によっては作品の目的意識などがぼんやりしたものに感じられるかもしれません。また、3.11の震災を取り上げることへの是非もあるかもしれません。
ただ、同じ本の中の新海監督のコメントとして、『観客の感想だけは作り手にはコントロール出来ない』とおっしゃっているように、こうした受け手による賛否があるのは覚悟の上で、それでも観客の誰かにはメッセージが伝わるだろう、そうした想いで作品を創り上げたのだと思います。そして私は、その試みは成功したと感じました。
今回、私は妻と小学生の子供達と観ました。妻は、3.11の事が思い出された、と言いました。一方で、子供達は『ミミズが怖かった。でも、面白かった。』という感想でした。まさに、大人にとっては忘れかけていた震災のことを思い出す機会になるとともに、震災を知らない子供たちにも、震災が過去にあったことを話す機会になるとともに、コミカルなストーリーを楽しむという、両方の側面があったように思います。震災を取り上げるのは、時間が経っているとはいえ、やはりデリケートなテーマですし、その点ではある程度のコミカルさや、荒唐無稽とも思えるプロットも必要だったのだと思います。もう一つ、妻はテンポが良かった、と言っていましたが、私も同感で、”余白の美”的な、無言の状況で何かを察しろ的な場面はほとんどなく、終始バタバタと、キャラクターが動いているのも、出来るだけストーリーをシンプルにしようという工夫が感じられました。
なお、新海監督は、こうもおっしゃっています。『ターゲットとする観客を想定するのだとしたら、ラブストーリーを求める十代に向けるのはもちろんだが、同時に家族連れにも退屈させないという大望を抱きたい。』
小学生の子供が2時間強を退屈しないか心配でしたし、とりわけ、かなり飽きっぽいうちの子供達がどう反応するかと思っていましたが、最後までワクワク集中して観ていました。この事からも、私は監督のメッセージがいかに力強く伝わるものだったかを実感しました。『君の名は』や『天気の子』は、どちらかというと高校生以上に向いてると感じましたが、今作は万人向けだと思いました。