劇場公開日 2022年11月11日

「批判者は被災経験者を一括りにするな。」すずめの戸締まり もみさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0批判者は被災経験者を一括りにするな。

2022年11月14日
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※被災経験者ではない人間が『被災経験した人は辛いかも…』とか『見ない方がいい』とか『PTSDになるよ』と想像で言っていることが多く見受けられる。それなら被災経験者も今回の作品について肯定的に受け止めている人も多いことを併せて想像、理解すべきだ。※被災経験者がどう感じるかなんてそれ以外の人と同じで人それぞれなんだから一括りにするな。勝手に決めるつけるな。迷惑だ。腫れ物扱いするな。私達も君らと変わんない人間で、同じ時間軸に生きていて、あれから10年以上前向いて生きてんだ。※(もちろん、今もトラウマを抱えている人は見ることが辛いかも的な意見は理解できます。PTSDなど。でも被災経験者でもそれは人それぞれだよ。)
配慮とか批判とか言うなら今の宮城福島を見に来てお金を落としていけ馬鹿野郎。

荒ぶった前置きはさておき。実際に起きた出来事(事件、事故や自然災害や戦争)で何年経ったら時効にしてアニメーションや実写ドラマ、小説等という娯楽にしてよいのか。何年経ったら題材にして良いのか、それは一体誰が決めるのでしょうね?10年経ったら時効?20年?半世紀?それとも100年くらい経って世代が完全に入れ代わりその出来事を経験したことのない人ばかりで溢れ、その時代に生きている人々が絵空事のように感じられるようになったら良いのでしょうか?でもそれだとその事柄を経験した生の声は作り手は聞けず、残っている史実からしかまとめることができない。

私には正解は判断できかねますが、このタイミングで良かったと思います。監督自身も今やらないと遅くなってしまうと言っている。
アニメは10代の子たちのものだ。そりゃそれ以上の大人が見ても良いが、新海監督は東日本大震災を経験したことない今の小さな若い子どもたちのためにこの映画を作ったそうだ。震災経験のない子どもたちは震災の話をしてもピンとこないことがあったそう。どうやったらその様を伝えられるか、新海監督が表現出来るアニメーションという手法を使い、それでいて子供たちが飽きることなく最後まで見やすいエンタメの中に落とし込むか、どうしたらその子らに伝えられるかを必死に考え生み出した作品だ。
批判殺到などど殺到してもいないのに大々的に書いてこき下ろしている『大人』が多い。その人たちは現実に起きたことを、『その当時が記憶に残っている人たちが多い経過11年で、現実を題材にし、現実には起こりえないファンタジーを組み込ませ、新海誠のリアルな表現で描写をした』ことが気に入らなかったのだろう。でもこの映画を監督が見せたい最大のお客さんは大人ではない。東日本大震災を知らない若き子供たちなのだ。新海監督は東日本大震災を風化させないためにこの映画を作ったのだ。あのくらい描かねばアニメ上では何も知らない子供たちには何も伝わらない。(そりゃ、メディアで散々報道されてきた映像を見ている、もしくは生でたことがある大人たちはフラッシュバックとしてアニメで描かれた以上の物を思い出し勝手に受け取っていると思うが…)
何も知らぬ子どもたちのため、その意図を鑑みればむしろよく、あれくらいの描写で済んだなと思う。

まぁ見る側にそんなとこまで作品だけで伝わるかというと伝わんないですよね。スクリーン以外の情報で汲み取れっていうのが無理だから仕方ないけど、あれこれない批判をあたかも殺到してるように書いてるのが気に入らない。(すずめの戸締まり 最悪 ありえない 等のワードで検索を掛けてもその中の批判の意見は少数派で目立つことはない。どこで批判されているのか?)
でもこういったデマ記事含めてSNSでは様々な話題にされ東日本大震災について311以外の時期に話されることこそがもしかしたら大人に向けた監督の狙いでもあるのかもしれない。今や東日本大震災の話題は311その1日、またはその日を含んだ一週間などテレビ局も期間を決めて特集するしかされない。それは当たり前のことであり、人々にも慣れがあるので、311以外の時期にこうして話題にされること事態が意味のあることだと思う。
自然災害は常に私達と共にある。いつ、どこで起こるかなんてわからない。大きな地震だって3月のあの時期だけに来るわけではない。他の天災同様私達の都合なんて考えもしてくれない。

作中で10(11?)年後の被災地を見たときの被災経験者と非被災経験者のそれぞれの感じ方の描写がある。たった1言2言である。その描写まで作中に入れるのが新海誠なのだ。そこまで被災地と被災経験者とその他とすべてのリスペクトしているのだ。

私はこの11年という時期に、これ以上遅くなる前に、東日本大震災と真摯に向き合い、監督生命を掛けて全力で作品を生み出してくれた新海誠に最大の感謝をしたい。

監督はこの作品が世界に受け入れられなかったら50代で無職になるかもしれない(若干正確な言葉ではないがそういう意味の言葉)と言っている。監督生命を掛けてこの作品を生み出したのだ。東日本大震災をファンタジーと織り合わせアニメで表現されることがどういうことか、一部の人達がものすごく怒ることも想定済みでそれでもこの作品を生み出した。批判的でない人間だって、被災経験者が見たらどう感じるだろう?辛く感じるのではないかと批判というよりはそういった声が多い。私も1回目視聴した際にはそのように感じた。

ただ、思い返してみてほしい。その作品についての他人の意見が気になるようになったのはいつからだろう。他人への配慮があったほうがいいんじゃないかと心配するようになったのはいつからだろう。きっと、監督がこの作品を見せたい10代の若者たちは(特に小学生、中学生の年代)そんなことを一切考えもせず、素直に受け止め、自分自身の感想を見つけるだろう。
私もそんな若い頃にすずめの戸締まりを見たかったなぁと思うのである。

私の幼子はようやっと一言二言話し始めた時期でまだ幼いが彼がアニメに興味を持ち始めた頃にはこの作品を見せたいと思っている。新海監督がこの作品の観客に選んだ彼らが、この作品を見てどんな感想を述べるのだろうと今から気になってしょうがない。この作品を生み出してくれた新海誠監督に感謝をしたい。

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もみ