「30年後に観たら号泣する」すずめの戸締まり SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
30年後に観たら号泣する
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変な感想だけど、30年後にこの映画を観たら号泣するんじゃないかと思う。「今」の日本がタイムカプセルみたいに凝縮して記録されてる。
衰退しつつある地方都市、中核都市、そして首都東京の美しい風景、人の生活の生々しさを丹念に克明に描き出していく。
経年劣化により時間を積み重ねた跡のリアルさ。音楽も昔流行った曲を順に流していき、この国の歩んできた時代を思い起こさせる。
寂れた都市と、侵食していく自然と、空の美しさ、雲の美しさ。よくもこんなに今の日本の美しさを表現してくれたと感動する。
今の日本の美しさとは、太陽が照り盛る元気な若者だった高度経済成長の時期を過ぎ、懐かしく若者だった時代を振り返る夕暮れのような時代の美しさ。
藤子F不二雄の短編に「老年期の終わり」(幼年期の終わりのオマージュ)という作品があるけど、まさにそれを思わせる。
ぼくは廃墟が好きなのだけど、そこがかつてはにぎやかでしあわせな空間であったと感じさせるものであればあるほど、胸がしめつけられるような思いにとらわれる。
この映画の「常世」とは、単に死後の世界を意味するのではなく、多くの暗喩を含めていると思う。
それは、過去の日本の記憶。良いことばかりではなく、苦難苦闘や大災害の記憶でもある。われわれはつい過去への感謝と思いを忘れがちであるが、それを忘れてしまってはいけない、ということだろう。
スズメ、扉、戸締り、要石、天の岩戸、三番足のイスなど、神話、昔話、民間伝承のモチーフを使って、くどくならない程度に世界観を作ってるのもうまい。
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