「嘘だと言ってよ監督」すずめの戸締まり B Bさんの映画レビュー(感想・評価)
嘘だと言ってよ監督
私は細田守監督作品は初期から観ているし、ファンである自覚はある。
それでも今作は悲しくも擁護のしようがない。
はっきりと駄作と思います。
下記にその理由を記載します。
①主人公の言動に対する一般人の反応が不自然すぎる
今作では、地震の原因が主人公と相棒には可視化される設定で話が進んでいる。
周囲はその地震の原因が見えていないのだから、主人公の言動を訝しむ事になる。
だが、この周囲の反応があまりに軽すぎる。
それ故没入感を持てない。
子供椅子を持ち歩いて家出をする高校2年生が血相を変えて九州から東京へ向かう中で、「そうはならんやろ」と思う事だらけだ。
目撃者多数の中で、東京上空に女子高生を身一つで滑空させないでください。
最後は見ず知らずの大学生と女子高生とその叔母で東北旅行とはこれいかに。
展開を詰め込みすぎていて、少ないセリフで状況を説明しようとするシーンが多いのも気になった。
②猫。
序盤は気まぐれで根源的邪悪として働いていた猫が、終盤は寝返って主人公に感謝されるのは意味不明すぎる。
猫のせいで男は囚われてしまった訳であり、最終的にその解放を猫が手伝ったとて、無罪放免とは言えないでしょう。
しかもその過程で100万単位の人命を危機に晒している相手に「ありがとう」は正直ありえねぇです。
この点が納得感無さすぎて本筋に集中できない。
猫が主人公の直向きな思いに感化されたのはわかります。
それでも私はこれが動機として十分とは思えない。
③大学四年生と高校2年生の恋愛話は無い。
せめてもう少し近い年齢には出来なかったですか。
18と20歳ならまだ納得して見れました。
せめて人間愛として帰着させてもらえたらその方がいくらよかったか。
上記3点が主な感想です。
新海誠監督らしく、田舎も都会もその情景は非常に美しいアートワークでした。
それに免じて星を一つ半つけました。
個人的には非常にガッカリです。
設定は必ずしもファンタジーでなくて良いのです。
新海監督の描く、人物同士の精神の触れ合いからくる静かな美しさを私は観たい。
次回作が同じライン上にいない事を祈ります。
どうか。