「期待を裏切らない完成度!」すずめの戸締まり おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
期待を裏切らない完成度!
新海誠監督の新作で期待していた本作。その期待を裏切らないすばらしい作品でした。公開初日に鑑賞してきましたが、行きつけの劇場はいつもの倍ぐらいの客入りで、改めて新海監督の絶大な人気を感じました。
ストーリーは、扉を探しているという青年・宗像草太に興味をもった高校生・岩戸鈴芽(すずめ)が、たまたま廃墟で見つけた、災いをもたらすミミズが吹き出す「後ろ戸」を開けてしまい、草太と協力してなんとか戸締まりをするものの、封印の要石は猫に姿を変えて逃げたため、猫によってイスに変えられてしまった草太とともに、猫を追いながら各地の廃墟にある後ろ戸を戸締まりしていくというもの。
とにかくテンポがよく、冒頭から美しさや迫力を感じさせる映像で魅せ、舞台設定を観客にすんなりと理解させるとともに、すずめの行動にある程度の必然性を持たせる導入はお見事です。その後もスムーズな展開で一気に作品世界に引き込まれます。物語の魅力もさることながら、すずめたちに絡む人々の誰もが確かな息を感じさせる描き方がされているのもすばらしかったです。それを圧倒的な映像美で魅せるのだから、没入感が半端ないです。
前半は、すずめが自らしでかした不始末の償いでもあり、自分でも気づかぬ草太への想いからの行動で物語が展開します。それがロードムービー的でもあり、ほのぼのとした雰囲気を醸します。同時に、それと対照的なミミズを抑えるための戸締まりが、緊迫感をもって描かれます。この緩急をつけながらの展開がテンポのよさを生んでいると感じました。
そんな前半から、大きく舵を切る後半への切り替えがまた上手いと感じました。最後の目的地は、すずめの故郷の東北。ここで初めて本作のテーマに東日本大震災があることを知り、スクリーンに映し出される映像からあの日の忌まわしい記憶が蘇りました。自分は直接的な被害は何一つ受けていませんが、観る人によっては今だに受け入れられないシーンかもしれません。そして、それはすずめも同じ…というより、そんな人たちの象徴として描かれているのが、すずめなのだと思います。
震災孤児となったすずめが、自分の中でくすぶり続ける亡き母への思い、自分を育ててくれた叔母への遠慮やわだかまり等と向き合い、受け入れ、乗り越え、前を向いていく姿が、観る者の共感を誘います。そんなすずめの成長譚は、震災で亡くなった方への追悼であり、残された者への未来に向けたエールなのだと感じました。
キャストは、すずめ役に原菜乃花華さん、草太役に松村北斗くんで、他のキャストも深津絵里さん、染谷将太くん、伊藤沙莉さん、神木隆之介くんと軒並み俳優さんが占め、十分に及第点ではあるものの、やはり多少の物足りなさは残ります。それでも作品としてのクオリティは抜群なので、とにかく見て損はないと思います。
じきょうさん、共感&コメントありがとうございます。
レビューを上げておられないようなので、こちらに返信いたします。
確かに「楽しくも恐ろしい映画」でした。最近では、南海トラフ地震がとても気になります。過去の地震を教訓にして、少しでも減災に努めたいものです。