すずめの戸締まりのレビュー・感想・評価
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新海誠の本気
2023年の初めに鑑賞。
集大成ということもあって、新海誠の本気が伝わってきた作品でした。
これまでは背景と挿入歌を強調したものが多かったですが、今作はストーリーに力が入っている印象を受けました。扉から災いが広がっていく光景はコロナ禍を連想させ、そこに過去に起きたあらゆる大震災を「これでもか!」と思うぐらい詰め込まれていました。そのため、今まで以上にスケールが大きくなっていました。
このときは驚きや恐怖など、自身の感情がジェットコースターのように激しく変化しました。それと同時に穏やかな日常は長く続かず、後戻りできない現実を乗り越える必要があるように捉えました。ここから、何事もない日常を過ごすことがどれだけ幸せなのかを改めて実感しました。
今回の登場人物も個性的でした。主人公の鈴芽は表情がとても豊かで、彼女の仕草を眺めているだけでも楽しめました。また、椅子に姿を変えられた草太も、彼の言葉やコミカルな行動につい笑ってしまいました。そんな二人が九州から東京までの旅を通して様々な人と出会い、それぞれの現実と向き合いながら成長する姿に感情移入できました。
気になった点としては、繰り返しや急展開が多かったことです。前半は日本各地にある災いの扉を閉めることが主なので、その展開が何度もあったため単調に進んでいるように見えました。
また、全体的にテンポが速いように感じました。これは長く視聴するのが困難な人でも見やすいようにしているかもしれませんが、個人的には後半から急激に変化する登場人物の心情に納得することができず、「あれ?」と思うような違和感を覚えました。
それでも、一つの物語として綺麗に成り立っており、必ず明るい未来が待っているメッセージ性が伝わってきた映画でした。新海誠が好きな人なら間違いなく楽しめるので、この機会に観に行くことをおすすめします。
みんな、いってらっしゃい
「戸締まり」という言葉に後ろ向きのイメージを感じていましたが、実はそうではなかったと判りました。扉の中は過去の自分。扉の外は明日への旅立ち。過去にどんなことがあったとしても、明日はちゃんとやってくる。嫌なことも、辛いことも、人生色々あるけれど、過去は大切にしっかり戸締まりをして、明日の自分にいってらっしゃい――。
私の捉えた映画の主旨はこんなところでしょうか。沢山の「いってきます」が伝えたかったのはそういうことでしょうか。そして、いくら何百万の命がかかっていようと、あなたの命を犠牲にすることは許さない。誰かがあなたを大切に思ってくれている。
そして、流石は新海誠監督の映像美。美しい日本旅情の満載でしたが、無計画な一人旅がこうも上手くいくなどと、それは既にファンタジーの世界。危険なことは多々あると思うので、つられて旅をしてみたいと思った方、お出かけは計画的に。
それにしても、「ルージュの伝言」を流すとは恐れ入りました。あまりにイメージが定着したこの曲の使い所があるなんて思ってなかった。そして久々に聞いた河合奈保子さんの歌声、「けんかをやめて」はやっぱり美しい。帰りにCD買って帰ろうかな。
忘却への危機感に動かされた攻めの震災描写、だからこそ賛否あって自然
新海監督は、10代20代の世代と東日本大震災の記憶が共有できなくなってゆくことを恐れて、今回あえて直接的な表現に踏み込んで本作を作ったという。
震災のインパクトは当時日本にいた人間にはみな刻まれているが、その時の個人的経験や心に受けた影響はひとりひとり違っているはずだ。現実の事象に触れる作品を見る時、そういった個別の記憶の作用から逃れることは難しい。その感想が作品の出来を超えてさまざまになるのも当然のことだと思う。
映画レビュー全般に言えることでもあるが、このような性質を持つ本作は特に、他のレビュアーの自分と違う評価を安易に貶めるということはあってほしくない。
当時幼な過ぎて、大人が受けたほどのインパクトを心に留めきれなかった年齢層に訴求する作品を見て、今も強烈な記憶を抱えた客層の反応が敏感になるのは十分あり得ること。もしそこから批判が生じても、監督は甘んじて受ける覚悟を持って本作を作ったはずだ。
監督の12歳の娘には、震災にまつわる記憶が全くないという(考えたら当然だが)。そういった身近な若い世代から、監督は震災体験が風化する危機を肌で感じた。ダイレクトな映像表現はその危機感の表れとも言える。
ただ、インタビューなどから伝わる監督の覚悟と、東日本大震災の直接的な描写があることにほぼ言及しないプロモーションには何だかズレを感じた。地震描写や緊急地震速報についてあらかじめ注意を促すなら、直接的な描写のことも合わせて言及しておいた方がよかったかも知れない。見る側に抵抗があれば鑑賞を回避するか、あるいは心の準備をするかという対応の余地が出来て、ネガティブな反応の内容もまた違ったものになったのではと思う。
全然別の作品の話で恐縮だが、以前ある飛行機事故の生々しい描写を含んでいるのにプロモーションでは意図的にそのことを隠した舞台を鑑賞したことがあって、我ながら意外なほどショックを受けた経験がある。人にもよるだろうが、受け身を取る準備をさせてもらえるかどうかの違いは結構大きい。
個人的には、今回あらかじめ他の人のレビューなどで震災描写について把握していたこと、作品の外ではあるが監督の意図を知れたこと、エンタメとして映像・音響中心に相当質の高い作品であること(重いテーマだからこそキャッチーな要素があることは大切だと思っている)から、本作を概ね好意的に受け止めている。「君の名は」「天気の子」より若干ジュブナイル感が薄らいだ分むしろ見やすかった。
ただ、本作によってあの苛烈な震災の記憶を、監督の目論見通りに若い世代に伝えていけるかというと、正直よくわからない。私がターゲットから外れた世代だからというのもあるだろうし、そもそも本作はあくまで、過去になりつつある震災の記憶に目を向けさせる呼び水のような位置付けなのかも知れない。
母を亡くした鈴芽の孤独、彼女を引き取った環の秘めていた心情、普遍的に訴求力を持ち続けるのはこの辺りの描写だろうか。
(環がぶちまけた本音(操られてはいたが本人もそれだけではないと言いつつ認めている)は、心理描写としては一番生々しくて重い場面のひとつだったが、さっくり解決したのは少し拍子抜け)
暗がりで燃える街並、ビルに乗り上げた船、こういった風景描写は当時実際の体験や報道映像で耳目に触れ脳裏に刻まれている年代にとっては、記憶通りであるがゆえに異様なほど生々しい。しかし監督の危惧通りこの臨場感もまた、世代の移ろいとともに古びたものになってゆくのだろう。想像よりずっと早く。
揺るぎない普遍性を持った名作の誕生
本当に素晴らしかった。この可愛らしい響きを持つタイトルが、ひとたびスクリーンという扉をくぐり抜けると、途端に深い意味合いへ変わる。冒頭差し込まれる記憶。その全てが荒廃した様子から、本作がやがてどこへ行き着こうとしているのか、我々は自ずと気付くはずーー。しかしそれにしても猫を追いかけ、すずめと椅子が日本各地を転々としていく筆運びには心底唸らされた。所々で宮崎作品の記憶が不思議と蘇ったりも。そこで描かれる人情模様、巻き起こるファンタジー。二人は戸を締める時、かつてそこにいた人々の暮らしを強く思い浮かべる。そういったささやかな日常がいかに掛け替えのないものであったか。この主題はラストに向け大きな響きとなり、我々はすずめの勇気と行動を応援しつつ「決して忘れまい」という思いを新たにする。世界が揺れる今、これは日本だけの物語とは言えなくなった。揺るぎない普遍性を持った作品として深く広がっていくはずだ。
「歌」が全面に出ていた前2作品とは異なり、勢いで物語を展開させるのではなく「3.11」というリアルに向き合う意欲作。
「君の名は。」と「天気の子」の新海誠監督作品に共通する独特な特徴に、月刊オカルト情報誌「ムー」の登場シーンがあります。 確かに、2作品とも超常現象的なものが題材となっています。
そして、本作では、「地震」をオカルト的な捉え方で表現しています。
オカルト情報誌「ムー」のような発想をPOPなアニメーション映画として「エンターテインメント作品」に仕上げる、というのは容易いわけではなく、独自性のあるアプローチだと思います。
さらに本作では、前2作品とは違い、「歌」を全面に出すことをせず、主人公の「すずめ」と「草太」が猫を追って旅をすることをアクションシーンなどを織り交ぜながら、会話をベースに物語が進んでいくので本領が試される作品と言えます。
作画や背景のクオリティーは、良い所に落ち着いてきた印象でした。
ただ、リアルに近付こうとするほど、不自然さが同時に見えてしまう難しさも出てきます。
例えば、最初の「すずめ」が登校中に引き返して水の張った扉のところに行くシーンは、宮崎駿監督作品であれば、せめて靴下は脱いでいたと思われます。
また、「すずめ」と「草太」が出会うシーンも印象的で良いとは思うものの、急な坂を自転車で下る「すずめ」が「草太」の姿を見て、顔を赤らめ「綺麗」とつぶやきます。ただ、その直後の映像は、「草太」と「すずめ」の位置は、かなり距離があり、容姿どころか性別も判別できないような状況になっています。
物語の展開として「1匹の猫を追いかけて旅をする」というのがあり、ここは「#」が付くことでSNSで追うことができるとなっていますが、論理的にリアルに徹し切れていない面が見えてきます。
それは、世の中の人にとっては「ただの1匹の猫」であって、「話す特別な猫」ではないからです。
もし後者として物語を進めれば、「話す猫」は注目に値するので、誰もが気になります。
ところが物語は前者で進めているため、仮に誰かがSNSで写真をアップしようと、世の中は無関心で、ましてや、それを瞬時に「すずめ」がスマホで見つけることには繋がらないからです。
このような脚本や物理的な考察の部分は、気になる点が散見されます。
とは言え、雰囲気で見るようにすれば、エンターテインメント作品としては成立していると思います。
そういう視点では、「君の名は。」のようにリアルさからは遠い作品の方が、面白く感じる面があると言えそうです。
タイトルなし(ネタバレ)
君の名は以来の新海作品をみた。「3.11」をテーマにした作品だというのは途中で分かったが、美しい瀬戸内海の風景など、映像美は素晴らしかったが、物語としては惹きつけられるものが少し不足しているように感じてしまった。
映像美は流石。だけれど...
新海誠監督の作品はある程度見たことがあり、この映画の存在は知っていたが見る機会がなく、かなり出遅れて、Amazonプライム・ビデオにて視聴。
やはり映像が美しい。劇中で実際の日本の風景が出てくるが、自分が愛媛出身なのもあって「あ、この場所見たことある!」という場面もあり、見ていて楽しかった。
ただ、ストーリーに関しては詰め込み過ぎ感があったこと、細かな説明を端折っているところも多く、上手く登場人物に感情移入ができなかった。
主人公のすずめが看護師を志している設定は、もう少し深堀りしてもよいのではと感じた。
おそらく母親が看護師だったから、という理由だけでなく3.11の時に何かあったと推測しているが、そこを細かくストーリー内で描写されていないが故に忘れてはいけないあの日を軽んじているように見えてしまっているのが残念だった。
旅を通して、地方の人達との交流を深めていく描写は良かったように思う。
がっかりのその先があった
映画館でお金払って鑑賞。
結論から言うと、"がっかりのその先"を初めて味わいました。
ご都合主義万歳。ファンタジー万歳。無理やりなドンデン返し万歳。そしてそこに今回はなんと!魔法と恋愛エッセンスもぶち込んでおきました!的な
カオス映画です。
辟易とする映画の典型という印象でした。
ここまでなら『がっかり』で済んだのですが、問題は3.11のリアルを中枢のテーマとして盛り込んじゃっていた事。感情は『製作陣に対しての絶望』まで達しました。この作品に対して期待をし過ぎたのだと思います。
少なくともこんな内容と知っていたら絶対に自分は観に行きませんでした。
ご都合主義ファンタジー恋愛魔法どんでん返しパクリ詰め込みアニメと、あの悪夢のような現実を一緒くたにして描くとは...。
今も震災によるPTSD等に悩んでる方々を、更に苦しめる事、リスク分かっててこの映画作ったってことですよね?
興行収入や名声に目が眩むと、こんな鬼畜の所業を成す人もいるんだなぁと、悲しい気持ちになり、ある意味勉強になりました。
新海誠作品バイアスがかかりすぎて、絶賛しまくっている人に対しても少し怖さを感じます。
『君の名は。』は確かにレベル高いと思えた作品だったので、新海誠ファンの考えが全く理解できない訳では無いですが...。
☆0.5は映像作った人たちとラッドウィンプスに対しての分。
素晴らしい映画をありがとう。
Amazonプライムにて視聴。
素直に感動した。このレビューでストーリー構成やらアニメーション周りの事に言及するつもりはない。
この映画を観て感じた事を残しておきたいという気持ちだけでレビューをする。
他のレビューでチラホラ見るエンタメだ〜とか、監督の覚悟が〜メッセージ性が〜とかどうでもいい。
十分あっただろメッセージ性は!寝てたんか。
ラスト、すずめが幼少期のすずめに言ってたろ!今はどんなに悲しくて辛いかもしれないが、あなたには未来があるのだから安心して生きろと!
それがこの映画の1番のメッセージだろうが!
こんなにもシンプルで根源的な分かりやすい、そして生きていく上で最も重要なメッセージなのに、他にどんなメッセージならば満足出来るのか逆に聞いてみたい。
確かに3.11が元となっているストーリーなので、観る人を選ぶのは仕方ないし、当事者の方々からすれば軽く扱われたと感じる事はあるかもしれない。
けれども、世の中は当事者だけではないし、体験された方々も減って行くのが自然の常であり、3.11の事を忘れさせないようにと、こういった作品でもアプローチした事に何の不満があるのだろうか。何年かをこの作品製作に、そして震災に向き合った人に何故覚悟が足りないなどと言う事が出来るのだろうか。
アニメーションだからどうとか、新海誠作品だからどうとか、くだらない事ばかりで本当にしょーもない。
ストーリーに説明が足りない事も、ご都合な所があるのも、ツッコミどころはあるのも分かるが、それらを踏まえて尚この作品は素晴らしい。
人は自然に対してもっと感謝や敬意の意識をしないといけないのだと思えたし、それは決してスピリチュアルの話ではない。
どこに原発を作るのかもっと慎重になれただろうし、居住地をどこにするのかももっと慎重になれたかもしれない。なす術なく押し寄せる自然の脅威に対して、劇中のように抗う術はないのだから。
ダイジンに敬意や感謝、好意が必要だったのはそのメタファーだろうと勝手に解釈してる。異論はもちろん認める。
忘れていた様々な感情を、この映画のお陰で思い出す事が出来ました。歳のせいか泣き過ぎてしまいました。
とても良い映画をありがとう新海さん。
ザ・オールスター感謝祭
ザ・オールスター感謝祭と言うべきか様々な要素がてんこ盛り。
君の名はの時間跳躍、天気の子の人柱、3.11、Qべえ、鬼滅の刃っぽいロードムービーなど。
そのせいもあってか開幕からすぐに摩訶不思議アドベンチャーが続き、スピード感があって良い。毎度おなじみだが脇役たちが縁の下の力持ち的に主人公たちを支えて大団円。最後は閉じるのではなく開けることが重要なファクターになっていたのもよくできている。瞬時にエンドロールに入る流れも気持ちいい。
新海作品は、主人公が直面する事象は手を変え品を変え頑張っているが、筋となる話は毎回一緒なんで別のアプローチをしてみても良いのではないか、と次回作でも同じことを言ってそうだなー。
今回は、忍び込ませた切なさ
最近新海誠監督に興味が出てきたので、この作品をもう一度見返した。
やっぱり胸が熱くなる作品だった。
この作品の根幹的なテーマは「人の想い」だと思うが、それが物質化するとどうなるのかを想像した物語なのだろう。
この人の想いというものを群像化することに挑戦したのがこの作品なのかなと思った。
ただ、現世と常世とうしろ戸の設定に微妙な疑問は残ってしまった。
また、主人公の名前がスズメ 漢字では鈴芽と書くようで、母の名前がツバメ?
この名前の設定の意味も謎だが、もしかしたら巣立ちを象徴しているのかもしれない。
このあたりの細かな想いの散りばめも彼の作品らしいところ。
さて、
人の心という謎
タマキのように本心というか、腹の奥にある想い、ネガティブな感情
時にそれは決して言ってはならないと封印されていて、おそらく誰もがその封印した想いを持っている。
巨大な黒猫の左大臣はタマキのそれを解き放った。
それが、時には解き放たれるべきなのかどうかについては、私にはわからない。
タマキのように直接本人に向かって言うのが正しいかどうかの答えも出そうとは思わない。
おそらく一般的にそうだと思うが、この物語のように時と場合によっては本人に言うべきケースもあるのかもしれない。
この作品は東日本大震災をモチーフにして、日常というものがどれほど大切な宝物なのかを再確認させてくれる。
幼いスズメが母を探し回る光景は、あの場所で生き残ったすべての人がしていたことだ。
亡くなった方々の想いは、要石になったソウタによって代弁されていた。
「もっと生きたい」
廃墟に佇む「うしろ戸」
かつて賑わっていたいた場所のいま
忘れ去られて取り残されてしまった場所に残る人々の想い
物質はすべて形成された直後から崩壊に向かって進むが、人の想いは崩壊することはないのかもしれない。
エントロピーの法則
遊園地のうしろ戸もまた、当時の人々の思いが詰まった場所
楽しさや喜びというエネルギーとネガティブな感情のエネルギー
この物質世界では見ることはできなくても、それは確実に存在するというのがこの物語の設定だが、それを現世と常世で表現している。
魂 人の想いが行きつく先 常世
3本足のイス
スズメの母がこさえたイス
「いつまでだったかな、ずっと大事にしてたのって」
この言葉にこの物語の核心が隠されているように感じた。
消えるはずのない思いが、いつの間にか忘れてしまうこの世界。
捨てられる「想い」
忘れられる「想い」
当時感じた感情は、本当に失われてしまうのだろうか?
これが監督が彼自身に問いかけた言葉だったのかもしれない。
閉じて封印する本心
誰もが日常的にするこの行為
しかしそれは消えることなくずっと封印された場所で燻り続けているのだろう。
そして何かの時に、それは一気に爆発的に噴出する。
それが人で、それをタマキに代弁させた。
束ねられたその封印されたネガティブな想いが、常世の中にあるというこの物語。
閉じ師
陰陽師的存在によって、人間の心の秘密を暴き、現世と常世を隔てるうしろ戸を封印する仕事。
さて、、
要石にも「想い」があるのだろう。
この作品の原動力
ソウタのセリフ「気まぐれは神の本質」の一言で、ダイジンの不可思議な行動を説明してしまっている。
左大臣は、ダイジンが引き抜いたから出現したのだろうか?
左大臣が大人の猫であることと彼が「人の手で元に戻す」と言っていたので、小さなダイジンは子供で、この騒動は子供の神のいたずらということなのだろうか?
神であるが故、すべてがお見通しというふうに考えることもできそうだ。
封印された世界とこの世界は違う。
その均衡を守るための要石
では、
うしろ戸とはいったい何だろう?
現世と常世 この世と死者たちの世界をつなぐ扉
災いを現世に引き込む場所という設定
もしそうであれば、3.11との因果関係を描く必要があり、それがないのでこれがファンタジーの域を超えない。
さて、、、
物語はスズメが母を探し続けた夢と、そこで出会った未来の私も忘れてしまったことに起因するのだろう。
これはすべての人がすることで、それに正邪はないはずだ。
正邪はないが、常世とうしろ戸の存在を明らかにする。
ダイジンによってイスの中に入れられてしまったソウタを見たことが、否応ない状況を作った。
二人を追いかけフェリーの中に入ってしまったこと。
冒険物語の鉄板の型
しかし、
スズメが踏切でUターンしたのは、友人に赤くなった顔を指摘されたこと。
それが彼女の初恋となったのだろうか。
この行為が全ての始まりだが、、、
例えば線路にあのカギが落ちていて、それはきっと彼のものに違いないとスズメが思って行動したというのでもよかったかなあと思った。
彼に対する描写 速度を緩めた自転車 すれ違う瞬間に感じた彼の雰囲気 そしてその彼が持っていたであろうカギ それらの展開があった方が自然だと思う。
また、廃墟でソウタを探すスズメ セリザワ そして学校の友人たちの雰囲気は「君の名は」「天気の子」とまったく同じというところが少々気になったが、これが彼の作品だと匂わせているのだろう。
更にセリザワが車で登場したシーン
そこにタマキとダイジン
その後の展開は良かったが、、、セリザワがソウタのアパートから出たスズメを見かけたシーンだけでも挿入してほしかった。
また、
スズメが「死ぬのは怖くない」と何度か語るシーンがある。
彼女は幼い頃に東日本大震災で母親を失い、自身も生死の境をさまよった経験がある。
この経験が彼女の死生観に大きな影響を与えたのだろう。
彼女にとって、死は突然訪れるものであり、避けられない運命の一部と感じ、そのため、死を恐れるよりも、受け入れる姿勢を持っているのかもしれない。
ただ、「私が要石になる」と言ったのは少し共感しにくい箇所だった。
幼い頃からの彼女の心境から、誰かのためにという思いは多分にあっただろう。
閉じ師の片鱗とも思えるあの行動で、小さな神様は「仕方ないなあ」と思ったのだろう。
彼女のあの言葉がなくても、おそらくダイジンは元に収まったと思う。
猫 愛し、愛されるのが彼らの使命
神が肉体を持った猫に化けたのは、愛し、愛されたかったのだろう。
少々憎たらしい猫の本質
スズメがソウタへ向けた愛をほんの少しだけ分けてほしかったのが、彼の本心だったのかもしれない。
少しやり過ぎたことで、ダイジンは目的の愛を受取れなくなってしまった。
この部分に新海監督の真骨頂である「切なさ」が忍ばせてあった。
仙台の地で、幼い時にくぐってしまったうしろ戸の中に入る。
全ての記憶が蘇った。
「行ってきます」扉の鍵を閉めながらスズメの言った言葉。
もしかしたらスズメは、ずっとあの場所にいたのかもしれない。
拭えない思い 忘れられない出来事 刹那的になること
彼女は「大事なものはもうずっと前にもらっていたんだ」ということを思い出した。
だから彼女は、過去を収め未来に向かって旅立ったのだろう。
月日が経ち、やがてソウタが戻ってきた。
「おかえりなさい」
この言葉は、彼女がさらに新しい未来を迎え入れる準備が整ったことを指し示した言葉かもしれない。
冒険の旅と成長の物語
そしてそこに忍ばせた切なさ
切なさは監督にとっての重要なアイテムなんだなと再確認した。
最高でした。
地震ネタを軽く流した感じ
ストーリー的にはさわやかな初恋という感じ見ていて心地良い。ダイジンが次に地震が起こる場所に案内していたというのも痛快。
なんか、松任谷由実の歌が多く出ていたのが気になった。
地震はトラウマになっている人にはつらいと思う。
でも、まぁ、良くできた作品だと思う。
あらためて見直してみた。
古傷がえぐられるような強い感情の揺さぶりがくる映画だった……
3.11が扱われてるというのは事前に聞いていて、トラウマがあるとかではないがなんとなく見ていなかったのだけど、アマプラに来ていたので初視聴。
自分は直接被災した人間ではないのだけど、この映画を見てものすごく強く感情を揺さぶられた。普段映画を見て感動で涙がウルっとするくらいのことはあるのだけど、今回は古傷の奥のまだジュクジュクした部分に指を突っ込まれて掻きまわされるような、軽い吐き気を伴う強い感情の揺さぶりだった。被災から復興していない・まだ復興途中の街の風景、がれきだらけで被災直後の街の風景、おばさんとすずめの喧嘩、4歳のすずめのセリフ、その他諸々。直接被災したわけではないのにここまで強く感情を揺さぶられてしまうのが自分でも意味不明だし、これを被災者が見たらどんな気分になるんだろうと思ってしまった。
でもレビューを見てるとみんな普通にエンタメとして受け取ってて自分のような感想は50件に1件くらいしかなく……、
・主人公の動機・恋心の描写が足りない&よくわからない→落ち着いて考えると確かにそうなんだけど…見てる間は全然気にならなかった
・ダイジンの考えがわからない、結局ダイジンってなんだったの→まあ確かによくわかんないんだけどそんな重要か……?
・映像がきれいだった、音楽が良かった→確かに良かった、良かったからこそ地震の記憶が強く思い出されて感情がヤバいことになった
ってな感じで全然ほかの人のレビューが別の映画の話してるみたいで、自分がおかしいのか?と思ってしまう。
監督は3.11の風化や知らない世代へのメッセージという意味を込めてこの映画を作ったようだけど、予想以上にエンタメとして受容されてて、思ってる以上に風化してるのかなと感じたり。
自分は直接被災はしていないけど復興支援業務や観光でちょこちょこ関わってて被災3県もあちこち行ったから、東北なんて一切行ったこともないという人よりは被災者寄りの立場で見てしまうのかもしれない。一方でここのレビューには実際に被災された方もいるが私より穏やかに映画を受け止めてる方もいて受け止め方は人それぞれなのかなあと感じた。
とりあえず2回目見るにはもうちょっと時間おいてからでないときつい……。
感情の盛り上がりを計算して組み立てただけの作品
お行儀のいい大味なエンタメコンテンツ。
震災という、批判しにくいトピックを取り上げたのが戦略的。
音楽と感情に訴えかける演出で、感動と笑いの波を作り、壮大な救済の物語を構築している。
今の日本人はこういうスマホ画面で早送りで観ても理解できるような動画が受けるのだろう。
すずめが要石の猫を引っこ抜いたから、日本各地でミミズが出てきてしまって、大変なことになったのに、なぜかすずめが命がけで日本を救おうとする、という物語になっている。自分が日本をめちゃくちゃにしてしまう、という話にならないのはなぜか。
東京の上空でミミズが巨大化した時、とび上がっていく草太に捕まって上空に達するすずめ。手を離すと落下してしまい、「みみずは安定しないからひとりでは無理だ」と言われるが、そのあとはひとりで立てた。なぜなのか説明がない。
東北に向かう道中、すずめを心配していた環が感情を爆発させる。背後に「サダイジン」という黒猫が立っている。この猫の影響で環が毒を吐いたのかと思ったが、「サダイジン」はミミズを封じるために人間の助けが必要だと語る。
「サダイジン」はいい猫なのか?
そうだとして「サダイジン」の影響でないなら、環はなぜ突然罵詈雑言をわめきちらして倒れたのか。
「サダイジン」という名前はすずめが解放した要石「ダイジン」に対応するのだと思うがネットでいつのまにかついていた名前のはず。それなのに「サダイジン」は最初からそういう名前で出てきている。すずめたちが「こっちがダイジンだから、あんたはサダイジンだね」みたいな話はない。なぜサダイジンなのか。ウダイジンもいるのか。
また、サダイジンを解放したのは誰か。
このように矛盾だらけなのだが、それでも大ヒットするところに一抹の不安を感じた。
強いパワーのある作品が好き
秀逸な作品は演出やストーリーなどすべて素晴らしいものと,
ストーリーがおざなりだけどそれを超える”何か”が択一したものが素晴らしい作品だと思ってる.今回の作品は間違いなく後者だと考える.
序~中盤は構成上キャラクターへの感情移入が難しく,並な印象を受けたが
最後が素晴らしかった.
実直なメッセージ性,伏線が回収される開放感,映像美,演技,演出にただただ失語.
天気の子は混沌とした"先の見えない世界でも光は差す"を
一つのメッセージにしたかったとインタビューで述べていた記憶がある.
おそらく今回も同じであろう.テーマ性に違わない強い作品だった.
こういうパワーでそれまでの評価を塗り替える作品...私は大好物です.
新海監督のスタジオジブリ最新作
全編を通して、自然描写や神話的なエッセンス、ヒロインの身軽さ(?)など、本家のジブリより良い意味でジブリに近づきつつある作品だと感じた
題材的に物議を醸しそうな地震災害をテーマに、人との出会いや助け合い、未来への希望のメッセージが詰め込まれていて、最後は純粋に感動してしまった
なんとなく説明不足なところもあるが、昨今のアニメ映画ではよくあることなのと、本家ジブリ映画がの方がよっぽと説明していないので、そこまで気にならない
最後のRADWIMPSの主題歌が流れるタイミングが完璧
自分はファンだからというのもあるけど、これはズルい、本当にズルい
二度目で!
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