「サバカンとは?エンドロール後も含めて完成する映画です。」サバカン SABAKAN masako_tsuchiyaさんの映画レビュー(感想・評価)
サバカンとは?エンドロール後も含めて完成する映画です。
1986年のある夏の日から今に至る二人の少年の物語。いじめられていて貧乏な家だけど母親と4人姉妹の長男として家族楽しく暮らしている友達。亡き父が作ってくれたサバ缶をネタに握った寿司を美味いからと主人公の少年に食べさすのだが、後に大人になり、板前となったその友達に語られるように、大人になった客に出しても決してうまいものではない。しかし主人公もこの寿司を「うまい、うまい」と言って頬張る
「尊敬していた父親が作ってくれたから、、、。」このことから分かるのが、サバカンは親子の関係性、外から見ていると分からない、本人同士だけ理解し合える関係の象徴なのかなぁと。だからこれは他の世界では分からない味がするのだ。そこで思い出されるのが、主人公が冒頭で読まれる父への作文、何かと叩き合う家族、そこからもこちらも形は違えど本音を言いあえるいい親に育てられているのは理解できる。ちゃんと愛されて育った子供たち。
こういう思いを共有しているひとたちのお話。
その比較対象、理解できない人たちとして
主人公と友達の価値観が分からないいじめっこ達。
子供というだけで、ピンクだから女の子という判断をする不良の若者。人を見ると全て万引き犯と決めつける駄菓子屋の夫婦。が登場しなさますが、それくらいであとは基本みんないい人ばかりが数多く登場する。
地元の不良を一蹴し、友達にだけ「負けるなよ」と帽子をくれた地元で一目置かれるお兄ちゃん。「サザエを焼いてくれる、ちょっと色っぽいその彼女」「みかん畑の天敵ジジイ、スーパーの半額店員、お土産をくれる、家族の姪っ子、褒める先生、抱きしめてくれる主人公の両親。カップケーキを買って帰り、友達の行動をずっとからの立場になって考える友達の母。いざとなると引き取りに来る親戚。そして「トムソーヤの冒険」のハックみたいな友達。
そしてその友達からパワーワードが連発する。
「お前だけ俺の家を見て笑わなかったから」「走ると決めろ!」「文を書く人になれ」「お前はすぐ諦めるからな」そんな印象的な言葉が見ているこちらの心に突き刺さり、主人公の背中を押す。子供の頃のこういう友達や他人のひと言って何十年経った今でも残っているもの。そんな風に友達は主人公よりちょっとだけ大人だから、まだまだ子供の主人公は、友達の「自分はトモダチだと思ってるけど、、、」という相手を気遣っている発言についての考えが理解できない。
そして、物語はひと夏の想い出がその後もらずっと続いていく。
大人になった主人公は
「そういえば、幼馴染で友達いたなぁ。」って水族館のイルカを見て思い出す。
困難はあるけれど周りには必ず優しい大人がいた。
そのことを思い出すことで大人になった主人公も家族について見つめ直してゆく。
とても好きな作品で落涙しましたが、
子供同士の会話や
もうひとつくらい旅での大きなエピソードがあってもよかったかなぁと。例えば旅から帰れなくなったとかして、主人公が警察とか大きな社会にぶち当たるとか。そういったことはないのでお話しに今ひとつ起伏がないのです。その点で言うと友達の母の死が山場と言えるのですが、ここ、もっとじっくり友達と主人公の会話が聞きたかったなぁ。
でも、そうすると「またなぁ」の活かし方が難しくなるのか、、、。(ちなみに「またなぁ」のいかにもな、伏線の貼り方は分かりやすすぎて、、、回数減らしても良いかと)
エンドロール後まで見て完成する映画ですので席は立たずに。
みかんの不器用な愛情もいいけど手間暇かけた愛が詰まったサバ缶もね!
そういえば、
サバからのイルカ?そして寿司、気づいたら海洋生物だらけだ!