「自分に投影しやすい作品」百花 ようへんさんの映画レビュー(感想・評価)
自分に投影しやすい作品
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回想シーンが半分くらい占めるのでは。
不思議な映画でした。
しかしそこがこの映画の鍵。
母が認知症になった苦悩も描かれる。
しかし、それは現実でも目にする光景で多くの人にも容易に理解できる。
この映画では認知症になった母の頭の中が多く描かれる。
スーパーで同じことを何度も繰り返す母の頭。
ああ、そうか。認知症の人にはこのような感覚になるのか。
そして、それ以上に多く描かれるのは、過去。
認知症になった母はその多くの時間を過去で過ごしている。
その過去はおそらく母が一番戻りたい過去。
奇しくも息子にとって忘れてほしくない辛い過去と同じ時期。
息子は母に置き去りされ、母は愛する人と共に生きたその時期。
母が認知症になったことでその辛い時期を忘れてしまったように感じ憤る息子だが母は実は多くの時間をその時期で過ごした。
なぜなら母にとってその時期は幸せな時だったから。
我々が現実で認知症に接する際、家族も辛いが本人だって幸せではない、と決めつけてしまっているかもしれない。
だから、私は認知症にかかりたくない。と。
でも、考えてみれば、認知症の人の表情ってすごく柔らかい。
この話はおとぎ話ではなく、現実でも認知症の方はその人が一番戻りたい人生のある時期を生きているのかもしれない。
そんなことを考えさせてくれる素敵な映画でした。
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