「世界観構築力」ゴーストブック おばけずかん よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
世界観構築力
原作未読。
原作はその名の通り“図鑑”だそうで物語も何もあるわけではないそうだ。
これを知ったのは鑑賞した後の事で、これを知ってこの映画に対する見方がかなり変わった。
そんな“図鑑”原作を冒険譚として再構成した手腕はさることながら、世界観の構築が凄まじい。
主人公が異世界に迷い込んだ後、一見表の世界と同じ風景に主人公達はある時点まで異世界と気づかない・・・のだが、その主人公達の背景で少しずつ“変”で“歪”な建物があるのだ。
その変で歪なところを探すのがさながら間違い探しのようで楽しい。
この変で歪な世界観は、見ている時は原作にあるものだと思っていたが先述したように原作が図鑑である事を知り、山崎監督の世界観構築の手腕の見事さに舌を巻いた。
ストーリーもポケ○ンみたいではあるが、さまざまな妖怪達をいろいろ知恵を使って収集していく様は観ていて楽しい。
一反木綿を“釣る”場面なんかはなるほどと思ったと同時に笑ってしまった。
こんな感じで子供が好きなもののオマージュやお化け物からのオマージュも随所に盛り込まれてあってそういうのを探すだけでも楽しい。(最後に着るお揃いのTシャツはあれゴースト○スターズですよね?)
個人的には古本屋に入った後に、カメラが後ろに振られると未来の世界からさまざまな冒険を経た先生達が出てくるのが、「あ!これドラ○もんでよくあるやつだ!!」って感じで面白かった。
という事で、子供向けとしては楽しくて良質な作品に仕上がっている・・・
ーーーーー以下大人のつまらない感想ーーーーー
が、1人の大人としてこの作品を見た時、主人公って子供達よりむしろ先生じゃない?と思ってしまった。
このての冒険譚の鉄則としては主人公達は冒険を通して今まで悩んでた事等に答えを見つけて成長するというのがあると思う。
が、この映画だと主人公の子供達より先生の成長の方が印象的。
最初はなりゆきでついてきたのに、冒険を経てやがて子供達を守る大人としての自覚を感じるようになり、本格的に先生という職業になる事を決意する。
対して子供達、特に主人公とされてる坂本君は、途中「みんなの役に立ってるのか」と悩むシーンがあるが、これがなんかふわっと解決されてしまうように見えた。
これが、そもそもの脚本の問題なのか新垣結衣さんの演技が上手すぎてくわれてしまっただけなのかわからないし、作品を楽しむ分には正直先生が主人公でも全然良いのだが、制作側はこれで良かったのだろうかと思ってしまった。
そういう意味でいうと主人公の子供達の演技もthe子役演技という感じで、世界観がすごければすごいほど、新垣結衣さんの演技が中盤ぐらいからフルスロットルになればなるほど落差が激しくなって所々中弛みした。
もちろん天才子役が4人揃えるなんて出来るわけないし、かといって冒険メンバーを大人達にしてしまうと子供達のウケがどうなんだと怖くなる気持ちもわかるし・・・
結局は監督の演技指導力?の問題なんだろうか。
ただもし続編を作るなら思い切って主人公を大人にしてみても良いのではないだろうか。
というか続編を作らないとせっかく作り上げたこの世界観が勿体ない気がする。