「伊藤健太郎を人間臭く活かした、阪本順治監督の巧妙。」冬薔薇(ふゆそうび) 甘酒さんの映画レビュー(感想・評価)
伊藤健太郎を人間臭く活かした、阪本順治監督の巧妙。
人間の弱さを赤裸々に剥き出しにした人間ドラマの今作。
様々な向かい合うべき事を避けて、いい加減にここまで生きてきた 渡口淳(伊藤健太郎)
彼は生きる希望も目的も特にない。何もない。
そんな彼が本当は欲しかったもの。感じていたこととは何だったのか。
人から逃げ続け、人に逃げられ続けた彼が、最後に自ら選び手にするものは∙∙∙。
ろとても阪本順治監督らしい作品どぁり、
ご自身でも投げっぱなしのような作品で申し訳ないと仰られていたが、
それこそが今作品の真意だと思う。
この作品を 伊藤健太郎 さんで撮ろうと思った。と、
以前のインタビューで仰られてたのが
「なるほど、この感じか」と観てみてピタッとハマった。
それは彼自身の内省というだけでなく、良い意味も悪い意味も含めた
内から滲み出る”どうしようもなさ”や”流動的な佇まい”が
とても人間臭い説得力を携えていた。
監督自身が仰られていたように〔答えはない〕作品。
それぞれ個々が何を感じ、何を思うか。
誰もが陥る、そんなつもりじゃなかった普遍的なループ。
もういいや。と、手放す事の容易さに慣れてしまう日常。
別に不真面目なつもりはない。
苦しさも悲しさも心に抱えて、それなりに自分なりに一生懸命に生きている。
自分を取り巻く友情と家族と∙∙∙。いつのまにか暗黙のうちに出来上がっている関係性。
そして自分ならどうだろう∙∙∙。その関係性に甘んじているだろうか。
当たり前にある日々のちょっとした躓きを考えてみる。
良いことも悪いことも。でも生活して生きていくしかないのだから。
脇を固める俳優陣の個性がとてつもなく濃いのだが、
それがなんとも自然に馴染む土や海の匂いがするような作品だった。
その個性派の中で 坂東龍汰が素晴らしかった。
あんな演技もできるんだなぁと驚かされました。