「愛しさと切なさと心強さと」チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい ちぇりこぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
愛しさと切なさと心強さと
原作未読でドラマからどっぷりはまってしまい今回待ちに待ち望んでいた映画化!ドキドキしながら視聴。 もう、こんなに心を持っていかれた映画は初めてです。 多少の足早感と、ドラマとのテイストの違いはあるけれど、それを差し引いてもあまり余るほど魅力にあふれた映画でした。
赤楚君と町田さんが演じると切なさが余計に引き立って胸を締め付けられる。
そんな数々のシーンに心揺さぶられ、何度も涙が出ました。
特に心に残ったのは、まず安達が事故に遭ったと聞いて黒沢が長崎に駆けつけてからのシーン。
ここは本当に美しく、それでいてエロティックでもある。 安達の家で雨に濡れた髪をふきながらうなだれ、自分の弱音を吐露する黒沢。 ほどなく安達の視点に切り替わり(ここが肝!)・・”この愛おしさをどうすれば伝えられるだろう” と、自然と彼の肩に手を添えて口づけようとする。 黒沢は少し驚きつつも受け入れ、お互いの手が絡まる・・このシークエンス。 直接的な描写ではなかったけれど、だからこそその余白に互いの感情が乗せら、掻き立てられる。 会えない時間ずっと抱えていた思いがこの瞬間に解放され、心の底から目の前の人を愛おしいと、自分の全部をあげたいと思う。 もちろんドラマ版の可愛い朝チュンも好きですが、映画のこの流れでのロストバージンってより深い結びつきでのことだから、二人の気持ちを想像したら、、ヤバくないですか? 私はすごく好き。
そして、もうひとつは同棲中のアパートの台所でのシーン。 安達が大切な人には2人の関係をちゃんと知ってもらおうって伝えた時の黒沢のハグ。 今までドラマで見たどのハグとも違う。 安達の決意を知って、愛おしさと、この人を本当に大切にしたいって思いがこもった包み込むようなハグ。 黒沢の腕にすっぽり収まった安達の健気さとひたむきさが際立ってハッとしました。
最後に。 あの結婚式は現実だったのだろうか? 安達が移動図書館で手に取って読んでいたお伽話に自分たちをなぞらえて見ていた夢物語ではなかったのか? とふと思いました。
そしてパンフレットがその絵本の装丁だったのが意味深で。 この映画はお伽話。 でもその中に散りばめられた愛しい想い、切なさ、優しさ、心強さ。 私はこの映画で受け取りました。
ラスト、地に足をつけ手を繋いで歩いて行く2人の姿に涙が止まりませんでした。 彼らが紡ぎだすこの物語をずっと見ていたい。それはもう私の祈りです。
2人の想いに寄り添ったエンディングの心音が心に染みました。