「言葉は魂。I love you. だけを繰り返すのはNGです。」シラノ kumiko21さんの映画レビュー(感想・評価)
言葉は魂。I love you. だけを繰り返すのはNGです。
この時代ならではなのかしらね、言葉に宿る重み。印刷物の普及も、ましてや音声や映像メディアのなかった時代。平安時代の貴族は和歌の一つも詠めないとまともな恋愛が出来なかったということですし。やはり人は自分だけに向けられた豊穣な言葉に一番弱いのだ。
そもそも、毎日届く(ある意味とても重いよね。普通なら引きそう!)手紙に心酔する受容能力がロクサーヌに備わっていたのだから、シラノとは相性バッチリだったはずである。そんなロクサーヌのリベラルさを見抜けず、自分など相手にされないと思い込み影に回ることをシラノが決意してしまったことが展開を大きくこじらせた。もちろん彼女のクリスチャンに対する一目惚れも嘘ではなかったでしょう。若さゆえ。でも、そのことをシラノに告白することで、ロクサーヌも無意識ながらシラノを刺激したかったのではないのかなあ。
落ちぶれたりといえども貴族のお屋敷や劇場のしつらえは大変見応えあり、ロクサーヌのふわっとした雰囲気と相まって、ロマン派の西洋絵画の世界が再現されていた。 ロクサーヌが、嫌ってる公爵に言い寄られてその場限りの生返事をする時の、言葉と裏腹の一瞬の目の演技(No way!みたいな)がとてもチャーミングだった。
それにしてもあの戦場は17世紀の三十年戦争なのでしょうか。なんだか昨今のウクライナの景色とダブって悲しかった。21世紀だというのに。自分の明日の死を覚悟する戦争集団って悲しい。
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